作品タイトル不明
75「聖剣さんと聖剣さんじゃね?」④
「こ、この呪いの剣……可憐な乙女の鼻の穴に指を突っ込んで持ち上げるとか……非常識にもほどがありますわ!」
鼻フックから解放された火輪の剣が、鼻を抑えてしゃがんでいた。
隣では一登が背中を撫でて慰めている。
「なによ。鼻フックは基本じゃない」
「基本じゃのう」
「基本っすね」
聖剣さんに続き、小梅と銀子も当たり前だと頷いている。
小梅に至っては、実際に、安倍きららに鼻フックをしたことがある。
「屈辱を味合わせるには、鼻フックはいい手段だな。私もやろう」
ソーニャは、鼻フックの可能性を感じ、取り入れる決意をしていた。
魔族で鼻フックが流行るかもしれないが、夏樹は聞こえないふりをした。
「ねえ、夏樹」
「どうしたの、聖剣さん?」
聖剣さんは、どこか不安そうな顔をして夏樹の顔を見た。
「……あの、あたしの過去っていうか、昔のことって」
「大丈夫だよ、聖剣さん。聖剣さんが邪剣さんであった過去があっても、俺たちは相棒なんだからさ!」
「――とぅくん」
夏樹の本心を聞き、聖剣さんを胸を押さえてよろめいた。
すると、火輪の剣が信じられないものを見たとばかりに叫ぶ。
「呪いの剣が雌の顔をしていますわー! 天変地異の前触れですわー!」
「うっさい! ときめいた余韻がどっかいっちゃったじゃない! また鼻フックされたいの!?」
「ぴぃ!」
聖剣さんに睨まれて、火輪の剣が悲鳴をあげて、一登の背中に隠れた。
「さてと」
とりあえず火輪の剣が一登の相棒となってくれるのであれば心強い。
一登の潜在能力は高いが、まだ開花していない。
手数が増えてくれることはいいことだ。
「澪さんと都さんも武器を手に入れたみたいだね」
水無月姉妹もそれぞれ武器を持っていた。
都は待っていました、とばかりに胸を張る。
「よくぞ聞いてくれました。なんと、姉妹刀があったんです!」
「へぇ。刀があったんだ?」
「火輪の剣さんほどではありませんが、素晴らしい刀ですよ!」
「これほどの刀をもらえるなんて……異世界にきてよかった」
興奮気味の都と、静かにも喜んでいる澪。
ふたりの持つ刀は、闇色の鞘に収められた刀だった。
刀身を抜かずとも、強い力を持っているのがわかる。
かつて、夏樹が都と出会ったときに持っていた刀など比べられないほどの力が宿っている。
「私たち姉妹が、異世界で姉妹刀に出会うなんて運命!」
「都さん絶好調だね。刀の名前ってあるの?」
「――お姉ちゃんラブラブソードです!」
「――っ、都さん……ネーミングセンス良すぎね!?」
「ふふふ。以前から思っていましたが、夏樹くんもかなりのネーミングセンスですね」
「いえいえ、そんな都さんこそ」
「いえいえ」
「いえいえ」
お互いを褒め合う夏樹と都に、小梅が呆れた顔をした。
「こやつらネーミングセンスくそじゃぞ!」