作品タイトル不明
73「聖剣さんと聖剣さんじゃね?」②
「……あんた……まさかあたしのこと忘れたって言うの!?」
聖剣さんが顔を真っ赤にして叫んだ。
対し、火輪の剣は、不思議そうな顔をしている。
「あら、わたくし……優雅にずっと寝ていましたので、野蛮な方とお知り合いになることはなくてよ」
「このっ……ふー、ふー。すぅー、はー」
聖剣さんは怒りを浮かべたが、深呼吸をして、冷静さを取り戻す。
「えっと、火輪ちゃん。本当に聖剣さんのこと知らないの?」
「もちろんですわ、ご主人様。そもそも聖剣とは笑ってしまいますわ。この世界において、聖剣はわたくしのみ! どうせ、三流の剣がわたくしに憧れて聖剣を名乗っているのでしょう。おーっほっほっほっほっほっほっほっほ、ごほっ、げほっ」
全力で高笑いしすぎた火輪の剣は、思い切り咳き込んでしまう。
一登が慌てて、火輪の剣の背中をさする。
「えー、むせるんだ」
お嬢様っぽい外見に反して、むせ方は豪快だった。
しばらく咳き込んでいた火輪の剣は、なにもなかったように立ち上がると、扇子を広げすまし顔だ。
(なんというか、扱いにくそうな聖剣だなぁ)
自分なら苦労するだろうが、一登なら「あははは」と笑ってなんとかしてしまうだろう。
夏樹は一登の器の大きさを知っているので、たとえ聖剣を手にしても問題ないと信頼していた。
(……問題は)
ちらり、と聖剣さんを見る。
「――ひえっ」
夏樹の口から小さな悲鳴が出た。
聖剣さんは無表情だった。
しかし、怒っているのがわかる。
(せ、聖剣さんがこれだけ怒っているのも懐かしいな。……魔族の拠点を襲撃したとき、魔族とは名ばかりで俺の召喚国の敵国の拠点だった時、騎士が生き残った敵兵を凌辱したときも、こう無表情だったなぁ)
ちなみに、外道な騎士は敵国の兵と一緒に夏樹と聖剣さんによって切り刻まれて殺されている。
「ちょっと、おほほほ女」
「なんですの? 品のなさそうなピンク色の派手な頭のお嬢さん」
「……あんたも、ファンタジーの中のファンタジーみたいな髪型して。おほほほ、って恥ずかしくないの?」
「喧嘩売っていらっしゃるの?」
「売っているのはそっちでしょう?」
「あらあら、実力がわからない子はかわいそうですわね」
「それはあんたのことでしょ。三回もへし折られたのに、あたしのこと忘れるなんて、頭の中お花畑じゃない?」
夏樹を含め、全員が「ふえ?」と変な声を出した。
「あたしに折られて身動きができないところを魔族に回収された雑魚剣が、なにが聖剣よ! なにが優雅に寝ていたよ! あたしのこと忘れるなんていい度胸ね、もう一度へし折ってやるわ!」