軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

70「運命の出会いってマジであるんじゃね?」④

――聖剣火輪の 剣(せいけんかりんのつるぎ) 。

炎を司る、この世界唯一の聖剣だ。

炎の化身とされる刀身は、すべての者を焼き斬ってきた。

魔族を、人間を、精霊を、ドラゴンを。

斬って、斬って、斬り尽くしてきたのだ。

気づけば、彼女は『太陽を司る聖剣』として崇められ、多くの者が欲した。

時の権力者から、復讐の騎士、富と名声を求める者まで、誰もが欲した。

権力者の象徴として飾られたこともある。

復讐者の剣として、数多の命を奪ったこともある。

富と名声を求める俗物によって、他者を追い落とすために使われたこともある。

火輪の剣は、いつだって誰かの命を奪い、血に濡れていた。

――わたくしは、なぜここにいるの?

自我を持つ剣でありながら、なぜ自分が聖剣であるのか、命を奪い続ける剣なのかわからなかった。

他の武器、武具が正当な契約者を得ながら、火輪の剣は誰ひとりとして、契約者を選ばない。

だが、自分は剣だ。

そのあり方のため、使用者は選んだ。

とはいえ、使用者など適当だ。

正当な契約者ではないため、火輪の剣を使いこなす者はおらず、ただ強いだけの人生を過ごし、満足して死んだ者、復讐を果たして死んだ者、富と名声を得て死んだ者、なにも得ずに死んだ者が数え切れぬほどいた。

正当な契約者ではなく、使える使用者しか選ばないゆえに、使い手は多くいた。

人間と魔族の戦いの最中、多くの魔族を焼き、斬り殺した所有者が「太陽の勇者」と呼ばれるようになった。

実に笑わせてくれる。

ただの火遊びが、太陽を名乗るとは烏滸がましい。

事実として、火輪の剣は契約者に太陽の恩恵を与える。

だが、今までひとりとして与えたことはない。

どいつもこいつも、欲深く、穢らわしい。

そんな人間に、力を、恩恵を貸すわけがなかった。

そうこうしている内に、最後の使用者が殺され、火輪の剣は魔族に渡った。

魔族の誰もが、人間と同じように力を欲して手を伸ばした。

だが、もう戦いには飽きていたので分不相応な者はすべて焼き殺してきた。

結果として、死蔵された。

後悔はしていない。

しかし、使うだけ使って、使えなくなれば捨てるように封じられたことに腹立った。

とはいえ、火輪の剣はもう人間にも魔族にも関わりたくないと決め、不貞寝をきめた。

どのくらいの時間が経っただろう。

ダークエルフの少女が、火輪の剣の前に現れた。

珍しく欲を持たない子だった。

また、契約者になるべく素質があった。

火輪の剣は、ようやく出会えた自分に相応しい者を見つけ、喜び契約を求めたが、ダークエルフの少女は断った。

力などいらない、と言ったのだ。

火輪の剣を求めてきた誰もが力を欲していたというのに、ダークエルフの少女は力を欲していなかった。

だからこそ、契約したかった。

命を奪う道具ではなく、契約者の相棒として隣に立ち、世界を見たかった。

だが、少女は火輪の剣と契約することで、要らぬ混乱を招くと拒絶した。

火輪の剣は少女に様々な恩恵を提示したが、すべて誰かを傷つけるものでしかなかった。

火輪の剣は絶望した。

結局、自分は命を奪うだけの道具だったと理解してしまったのだ。

そこからまた月日が流れる。

現れたのは、人間の少年だった。

魔族の国の宝物庫に人間があらわれることは珍しい。

少しの興味から、少年を見て、雷に打たれたような衝撃を受けた。

――彼こそ、正当な契約者になるべく素質を持っている。

しかし、火輪の剣は素直に喜べなかった。

どうせ、彼も力を欲し、力を得たら命を奪うだろう。

自分の力が、そうさせてしまうのだ。

――だが、それでいいと思った。

――自分の存在は、命を奪うただの剣でしかない。

――ならば、欲するといい。

――殺戮を手伝おう。

半ば自棄になって、少年を誘惑した。

彼はまだ幼く、力を欲していた。

自分を求めるように仕向けるのは簡単なことだった。

――そして、彼はわたくしを手に取る。

いつかの殺戮の日々に戻るのだ。

そう思っていた、火輪の剣の中に、契約者の心が流れ込んできた。

今までの使用者の誰とも違う、――愛に溢れた心の声だった。

力を求めているが、それは大切な友のため、仲間のため、家族のため。

彼がどれだけ優しい、すぐにわかった。

こんな純真な少年を、殺戮の世界に誘おうとしたことを恥じた。

火輪の剣は、初めて誰かの役に立ちたいと願った。

彼の、弱くも気高い心を守りたいと思った。

――三原一登という、契約者を心から大事にしたいと願った。

長い時間、孤独だったのは、すべて彼と出会うためだったのだと理解した。

暖かな彼の手を取り、涙を流しそうになるが、必死に堪えて笑顔を浮かべる。

「――末長くよろしくお願いいたしますわ。愛しいご主人様」

かつて自分の誘いを蹴ったダークエルフが変な顔をしていたが、気にしないことにした。