作品タイトル不明
68「運命の出会いってマジであるんじゃね?」②
はるか昔のことだ。
まだ魔王こそ存在しないが、魔族が大陸の半分以上を支配していた時代があった。
当時の人間は、魔族と戦っていたが、魔族からすると弱い生き物が無謀にもちょっかいを出してくる程度の認識でしかなかった。
そんな人間たちの中に、十人の強者が現れた。
それぞれ特徴的な武器、武具を持つことで、強大な力を得た者たちだった。
魔族は最初こそ、相手にしなかった。
被害が少なかったこともあり、ときどき現れる「それなりにできる人間」がいるくらいの感覚だった。
だが、被害が拡大していく。
そこでようやく、「強い武器を手に入れた人間がいる」と認識した。
しかし、所詮、武器の恩恵を得ているだけで、実際は弱者である人間であることは変わらないと判断した。
――その判断は間違っていなかった。
人間たちは、特別強いわけではない。
魔族たちが考えたように、あくまでも「強い武器・武具」を得ただけだった。
――想定外だったのは、その武器と武具が魔族たちの想像を超える強さを持っていたことだ。
魔族は苦戦した。
多くの民と、戦士を失い、焦ったころには遅かった。
人間を舐めていたことを後悔した。
魔族たちは、種族を超えて協力することとなる。
複数の種族が集まることで、足りない力を補ったのだ。
結果として、人間の強者たちを全て殺すことに成功した。
その際、人間が使っていた強力な武器・武具も回収したとされている。
――だが、それらの武器・武具はその後、表舞台から出てくることはなかった。
■
一登は、声に誘われるまま宝物庫の奥に進む。
「三原一登?」
「一登さん?」
宝物庫をみてまわっていた、征四郎と義政も、一登の異変に気づき声をかけるが、彼は生返事をするだけで歩みを止めない。
「一登くん?」
「どうしたの、一登くん?」
武器を探していた水無月姉妹も、一登の様子に心配そうな顔をした。
それでも一登は止まらない。
「ああっ、くそ! 魅入られたのか?」
一登は、招く声に誘われ、宝物庫の一番奥にたどり着いた。
ひとつの扉があった。
だが、開かないようにこれでもかと封印がされている。
「――わたくしはここよ」
声が呼ぶ。
一登は封印に手を伸ばした。
「馬鹿野郎! 人間が触ったら――」
ソーニャが忠告するのも聞かず、一登は封印の鎖を握りしめた。
次の瞬間、鎖が熱を発し、一登の手が焼ける。
「三原一登!」
征四郎が一登を扉から引き離そうとしたが、見えない力によって吹き飛ばされた。
「っ、なにが起きている!」
一登は止まらない。
そのような力がないはずなのに、鎖を引きちぎった。
身体強化を覚えた一登であるが、封印は腕力でどうこうできるものではない。
にもかかわらず、彼は次々と鎖を引きちぎっていく。
「一登くん! いい加減に――」
見ていられない、と都が一登に駆け寄るも、やはり見えない壁に弾き飛ばされた。
「都!」
慌てて澪が妹を受け止める。
心優しい一登が、振り返ることもなく、一心不乱に扉の向こうの「なにか」を求めている。
――良くないことがおきていると誰もが理解した。
だが、止めることができず、一登は手から血を流しながら扉を開ける。
「――見つけた」
部屋の中には、台座があった。
台座の上には、鎖に縛られた赤い鞘に入った剣が置いてある。
一登の目には、剣が炎に見えた。
すると、まるで一登を歓迎するように、封印の鎖が断ち切られ、赤い炎が吹き荒れる。
「――はじめまして、ご主人様」
一登を歓迎する少女の声が聞こえた。