作品タイトル不明
66「祐介くんの魂は優秀だったんじゃね?」
グランドルは、レジャーシートの上にあぐらをかく。
息子たちも、一歩後ろに座った。
最初こそ、アウトドアチェアを勧めたのだが、体格が大きいオーガでは、座った瞬間潰れるだろうと諦めた。
「大地の勇者よ」
「祐介と呼んでください!」
「では、祐介殿。俺のこともグランドルと呼んで欲しい」
「はい! グランドルさん!」
グランドルと友好的に話ができることを、芝生の上に正座した祐介は嬉しそうだ。
「ダナーとの戦いはとてもよかった。あの娘の一撃は、オーガの巨体を優に吹き飛ばすゆえ、祐介殿のタフさに興味がある」
「いやぁ、グランドルさんに褒められると祐介くん照れちゃうなぁ」
「ダナーは四天王を超える強さを持つ良い戦士だ。戦い方によっては、俺も負けるだろう。無論、負けるつもりはないがな」
「え? ダナーさんってそんなに強いの?」
夏樹が首を傾げる。
パワーと速さを持つ獣人らしい戦士だとは思うが、祐介の防御力に封殺されている。
雑魚と言うつもりは毛頭ないが、星熊童子と殴り合いができるグランドルのほうが強いと思う。
「あの娘は、自慢の力を使わずに祐介殿に敗北している。勿体ぶったわけではあるまい、祐介殿の強さが想像していたよりもずっと強かったのだろう。星熊童子殿に敗北した俺が偉そうに言えることではないが、ダナーは経験不足だ」
「経験不足って結構、戦場に立ってたでしょう?」
「戦場に立っていたには立っていたが、激戦区には配属させていなかった。まだ幼い少女の未来を考えると、獣人族の族長も配置に悩んだのだろう」
「……おさ」
「……ない?」
夏樹と祐介が声を揃えた。
脳裏に浮かぶのは、二十代前半の筋肉質な女性だ。
長身で、足が長く、白に染められた美しい虎族の女性だった。
「あ、魔族的に幼いってことかな?」
「魔族的にもそうだが、由良殿とさほど変わらぬはずだぞ?」
「ほえ?」
変な声が出てしまった。
「ああ、そうか。外見だけ見ると、大人に見えるな。ダナーは、成長が早いのだ。いや、力がある獣人は早くに大人の姿となる。戦闘において全盛期が長いのだよ」
「えっと、つまり、祐介くんがボコったダナーさんはおいくつですか?」
「――――十五歳だ」
「嘘ぉ!」
「ひょえっ」
ダナーの実年齢は、外見よりも十歳ほど若かった。
夏樹と変わらない。
「――そうか、そういうことだったのか!」
「祐介くん?」
グランドルから、ダナーの年齢を聞いた祐介は合点がいったように、大きく頷き、納得している。
「夏樹くん」
「なによ?」
「僕がダナーさんに、「おいた」をしなかったのは、僕の魂がやってはけないと囁いていたんだ」
「んなこと言ってたね」
すうっ、と祐介が大きく息を吸い込み、叫んだ。
「あっぶねぇええええええええええええええええええ! 下手なことしないでよかったぁあああああああああああああああああああ! 青少年保護育成条例に引っかかるところだったぁあああああああああああああああああ!」
――大地の勇者佐渡祐介。
魂が、青少年保護育成条例を回避しようと、素敵な獣人相手にも理性的に戦えるように頑張ったのだと判明した。