軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

65「あっ、やっぱ本物だったんじゃね?」

夏樹たちは、キャンプ地である中庭に戻っていた。

魔王ギーゼラの予定では、夏樹とオーガ族族長グランドルの戦いの後に、会議をする予定だったが、改めて魔族たちで話し合いをさせてほしいと頼んできた。

魔剣士クラースをはじめ、やはり夏樹たちを快く思わない魔族が一定数いる以上、再び釘を刺す必要があるらしい。

夏樹たちも、まだこの世界にきてから二日目なので、受け入れた。

「それじゃ! ――今から、偽物の正体を暴きまーす!」

「いえぇええええええええええええええええええええ!」

クーラーボックスの上に座らされている、大地の勇者佐渡祐介を、夏樹たちが囲んで手を繋ぎ、ぐるぐる回る。

「俺たちの祐介くんを返してよぉ!」

「あの気のいい祐介を攫うとは許せんのじゃ!」

「お酒ほしいっす!」

「肉食いてえ!」

「ダーリン大好き!」

「べあべあ!」

夏樹、小梅、銀子、星熊童子、虎童子、熊童子が、ぐるぐる回る。

回り続ける。

「このかごめかごめ怖い! あの、僕、ホラーが得意じゃないんですけど。とくに、夏樹くんとのファーストコンタクトがホラーすぎたから、より苦手になったよ! ていうか、夏樹くんと小梅さん以外、僕と関係ない主張しているし! もっと僕を構ってよ!」

夏樹たちの動きが止まる。

じぃ、っと瞬きせず、祐介のことを見つめる。

「ひぃ、怖い怖い! 瞬きして!」

「……皮をかぶっている割にはつなぎめが見えないな」

「中身が入れ替わった説ってまだ続いていたの!?」

「わからんぞ。服の下につなぎめがあるかもしれん」

「ちょ、お日様の下で服を剥かれるなんて! ――ぽっ」

「あ、本物の祐介くんかもしれない!」

「本物の佐渡祐介だよ! みんなの大好きな祐介くんだよ!」

夏樹たちが、つないでいた手を離し、祐介から距離を取る。

聖剣さんを引き抜き、肩をとんとんする。

「……でも、俺たちの大好きな祐介くんなら、ダナーさんにセクハラすると思うんだけど」

「失礼な! この紳士佐渡祐介! 婦女子にセクハラなどしない!」

「……あたいらには思いっきりしやがったんだがな」

「べあ!」

「あれは戦いの中での出来事だもん! 攻撃だもん!」

「精神攻撃だったら、めちゃくちゃ効いたぞ! この変態やろう!」

あくまでも、本物であり、ついでに紳士であると主張する祐介に、「どこが紳士だ!」と虎童子と熊童子が抗議の声を上げた。

「紳士の勇者がそんな女の子にセクハラするわけないじゃない! ――それに」

「それに?」

「ダナーさんに、虎ぴーや熊ぴーにした攻撃をしちゃいけないと思ったんだ」

「……どういうこと?」

「紳士の勇者の勘だよ!」

意味がわからなかった。

「ふざけんな! あたいらにはセクハラしていいって言うのか! このボケ! あと虎ピーっていうんじゃね!」

「べあべあべあべあ!」

虎童子と熊童子が、殴る蹴るするが、祐介は平然としている。

ダナーと戦った大地の勇者の力は、彼をツッコミからも守っていた。

恍惚とした顔をして、虎童子と熊童子の攻撃を受けている祐介を見ると、驚くほどの防御力を与える大地の勇者の力は、彼と相性がいいと思う。

「――なにをしているのだ?」

「あ、グランドルさん。ちーっす!」

「由良夏樹、そして異世界の戦士たちよ。挨拶にきたぞ」

祐介に尋問している夏樹たちを怪訝そうな顔をして見ているのは、オーガ族族長のグランドルだ。

彼の背後には、ゴールンとガイオンの兄弟が控えている。

「会議は終わったの?」

「俺は、お前たちに負けた。オーガ族は約束を違えない。反発する者が多少いる種族と魔王様の話には、いてもいなくてもかわらんので、早々に退出させていただいた。なによりも、会議というのは性に合わん」

「それでいいんだ、族長さん!」

「いいのだ。そもそも、昨晩会議をしているのに、跳ねっ返りどもを抑えられなかった各種族が悪い。魔王様はお優しいゆえ、種族によっては次の魔王になろうと企む馬鹿や、自分たちが魔王様を支えていると勘違いしている馬鹿もいる」

「魔族さんも大変だねぇ」

「大変だ。もともと魔王様は、俺たちをまとめ上げるよりも、おひとりのほうが強いのだろう。だが、あえて、共に歩んでくださる。だからこそ、魔王なのだ」

少なくともオーガ族は、魔王ギーゼラを慕っているようだ。

「ところで、そちらの大地の勇者殿にもご挨拶させてほしい」

祐介は立ち上がり、グランドルに握手を求めた。

彼は嬉しそうに応じる。

「大地の勇者、佐渡祐介です! 魔族大好きです!」

「お、おう。そう言っていただけるのは嬉しい。俺はグランドル。オーガ族の族長だ」

グランドルが驚いた顔をする。

さすがに祐介のように魔族に好意を全力で主張する人間と会ったことはないのだろう。

嬉しそうでもある。

「ところで、お聞きしたいのですが!」

「なにかな?」

「女騎士に、くっ、殺せ! って言われたらどうしますか!?」

「武人として普通に殺すが!?」

「カルチャーショックっ!」

心底びっくりした顔をする祐介を見て、夏樹たちは安心した。

「――あ、ちゃんと本物の祐介くんだ」