作品タイトル不明
55「みんな個性が強いんじゃね?」
ギーゼラの視線を受けた夏樹は、肩をすくめて仲間たちに声をかけた。
「だってさ、ホモサピエンスども」
「いや、お前もホモサピエンスだろ! なに関係ない顔してんだ。それとも、てめえはアウストラロピテクスか、ああ?」
「なんで千手さん、そんなおこなの!?」
「きっちり関係者ぶっ殺してねえからこんな面倒臭え」
「……わーい、千手さんも割とひどーい」
苛立つ千手の言い分もわかる。
確かに魔族一を名乗る剣士と戦った記憶がある。
だが、まさか弟子がいるとは思わなかった。
戦いの場にいたのか、それとも別の場所にいたのか。
遺恨を残さずきっちり殺しておかなかった夏樹のミスだ。
「言っておくが、俺は魔族がどうこうって言いたいわけじゃねえぞ。あの手のやつは、理由をつけて戦いたいだけだ。そんなわがままな野郎に付き合う時間がもったいねえって言ってるんだ」
「そりゃそうだ」
「あの白髪の女はまだマシだが、ったく、仕方がねえ、俺が出る」
「いよ! さすが千手さん! タイガー童子さんの素敵な夫!」
「……主人がお世話になっています」
「おい、やめろ! あんたも勝手なこと言うな!」
千手が首を鳴らして立ち上がるので、夏樹が激励するが、お気に召さなかったようだ。
いつの間にか虎童子が千手の隣に立っているのも気になる。
「……あ、やばい。千手さんがラブコメっているせいでダークサイドに堕ちそう」
「そんな簡単にダークサイドに堕ちられても困るんやけど。しゃーない、地球に帰ったら、晴明先輩と一緒に始める獣耳喫茶にご招待してあげるんから、落ち着いてえなー」
「……ふぅううううううう。獣耳、ありですね」
勝手にダークサイドに堕ちかけていた祐介と、それを阻止する東雲。
「やだもう! 真面目なホモサピエンスって俺と円ちゃんしかいないじゃない!」
夏樹が顔を手で覆って泣きマネをした。
「異世界から帰還したら出会った仲間が個性すぎる件!」
嘆く夏樹に、視線が集まる。
「……いや、おどれが一番個性が強いんじゃが」
「どの口がそんなこと言うっすかねぇ」
小梅と銀子が、口からビールを垂らしてそんなことを言った。
「いや、お前が一番個性的だから」
「さすがに僕たちでも勝てないよ」
「逆立してもあかんね」
千手、祐介、東雲も、「何言ってんだ?」という顔をする。
「あんたより個性が強い奴なんていねえよ」
「さすがにないわ」
「べあぁ」
星熊童子、虎童子、熊童子三姉妹が信じられないものを見る目を夏樹に向けていた。
「あ、あははは、どんまいやで、なっちゃん」
円も擁護ができなかったようで、夏樹の肩をぽんと叩く。
「――みんなひどい!」
夏樹は本気で泣いた。