軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

53「不満を持っているんじゃね?」

決闘が終わると、魔王ギーゼラ・シラーが締めくくる。

「オーガ族族長グランドル! 勇者一行星熊童子殿! 見事な戦いだった!」

ギーゼラの声が闘技場に響く。

「グランドルが代表して戦った! これにて、我が魔王軍は勇者由良夏樹一行と協力関係を結ぶ! そして、人間を倒す!」

――歓声が響いた。

夏樹たちを仲間として認めようとしたのだ。

――一部を除く魔族たちが。

夏樹が戦ったわけではないが、勇者の強さは魔王である自分を倒した実績があるので、いまさらだろう。

勇者の仲間もオーガ族の長グランドルを余裕を持って倒すほど実力があると示した。

これで反発もなくなる、とギーゼラは安堵の息を吐く。

「――待て、魔王よ」

だが、すぐに歓声が止んでしまった。

「……異論があるのか?」

静かに、だが、威圧を込めた魔王の声が響く。

大半の魔族がギーゼラの圧に身をすくませるが、声を上げた魔族と、その近くにいる魔族たちは臆することなく観客席から立つ。

「異論はありますとも」

「ほう」

真っ向から反発したのは、褐色の肌を持つ二十歳ほどの魔族だった。

ぱっと見ると、魔族であることはわかるが、種族がわからない。

おそらく、混血の魔人と呼ばれる一般的な魔族のようだ。

「――魔剣士クラース」

「魔王様にお名前を覚えていただいていること、光栄です」

クラースと呼ばれた魔族の背には、身の丈ほどの大剣が背負われている。

強い魔力を持つ剣だ。

魔剣士というだけあり、業ものを持っているらしい。

「勇者由良夏樹殿は認めましょう。魔剣王と名高い我が師を殺した実力を持つ。不満などあるわけがありません」

「…………」

「グランドル殿と戦った少女も、素晴らしい実力でした。――しかし、人間ではない」

「ほう」

「そちらの観客席で、のんびり決闘を見ていた人間が信用に値するのかどうか私には判断ができないのです!」

ギーゼラが、ちらり、と夏樹たちを見る。

この状況下で、「星熊童子さんの勝利を祝って、かんぱーいっす!」と酒を飲んでいる人間の姿が確かに確認できた。

「クラースよ、なにを望む」

「そちらの人間との決闘を」

「……またか」

「各種族の族長殿は、グランドル殿に見極めを託したようですが、私はそれに同意していない。剣士は剣で語るのです」

「その割には、お前以外にも不満を抱く者がいるようだな」

クラースの背後には、白髪の長身の女性が立っている。

獣人だというのは、彼女の頭に生えている獣耳でわかった。

ショートパンツを穿き、薄手の革鎧を身につけた彼女は、静かに、だが、闘志を燃やしているのがわかる。

靴を履かず裸足の女性は、ざっと二十代半ばに見えた。

鎧から覗く腹筋は割れ、四肢は筋肉質だ。しかし、細身だ。

戦うために鍛えられた身体だと理解できる。

「……そなたもか、虎族の戦士ダナー」

「クラースに同意する。人間は気に食わん。勇者も同じだ」

淡々と言う彼女――虎族のダナーは、獣耳をはじめすべてが白く、瞳だけ赤い。

「……私は勇者と戦っていない。戦えば勝つとは言わないが、四天王よりも強い自負がある。人間も気に入らないが、勇者を見て怯える四天王が気に入らない」

「なるほど」

「力のない獣人たちは、人間の娯楽で狩られた過去がある。人間を倒すのは賛成だが、そのために、この世界の人間ではないとはいえ人間の力を借りるのは納得できない」

「それで決闘か?」

「強ければ受け入れられる。力を示してもらいたい」

「……決闘を許せば、不満を抱く者が次から次に現れては、決闘を申し込むのではないか?」

ギーゼラの問いに、リングに立つ魔人と獣人が首を横に振った。

「魔王様。すでに不満を持つ者たちで話はつけてあります」

「私たちが代表して戦う。負ければ、配下となる」

「さて、どうするものか」

ギーゼラは困ったように夏樹たちに視線を向けた。