軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

50「決闘の時間じゃね?」②

星熊童子とランドルの体格差は倍だ。

腕の太さなど、三倍くらいある。

身体がすべてとは言わないが、肉体差から戦いを見守っていた魔族たちは、誰もがランドルが完膚なきまで叩きのめして戦いが終わると考えていた。

――だが、決闘がはじまると同時に星熊童子に巨体を蹴り飛ばされたランドルを見て、誰もが口を開けて唖然とすることになる。

「おいおい、こんなもんかよ。オーガさんよぉ!」

細く引き締まった足を上げ、にやりと笑う星熊童子。

「きゃぁ! パンツ見えちゃうよ、星熊ちゃんったらエッチ!」

観客席から祐介が悲鳴を上げる。

だが、星熊童子は余裕で返した。

「安心しやがれ、俺はそんなもん履いてねえ!」

「なん、だと」

「ほれ」

足を下ろしてスカートの裾を少しだけ上げる。

「きゃっ……履いている、だと。いや、しかし、その紺色はまさか!」

「ブルマを装備しているから問題ないぜ!」

「……ノーパンブルマだと……アリです!」

夏樹は静かにしていた。

いろいろ口にしたいことはあるが、不用意な発言をしたら自分の扱いが祐介と同じになると理解していたからだ。

千手と東雲も同様で、真一文字に口をつぐんでいる。

だが、円だけが、「ブルマってなんなん?」と存在を知らないようだ。

「ま、円ちゃん、ブルマはあとで教えてあげるから、決闘に集中しようよ」

「なっちゃんがそう言うなら」

「祐介くん、しっ」

「ごめんなさい!」

夏樹が祐介を嗜めていると、倒れていたランドルがゆっくりと起き上がる。

首を鳴らし、肩を回すと、獰猛な笑みを浮かべた。

「まさか、俺の巨体を蹴り飛ばす猛者がいるとは思わなかったぞ」

「軽すぎてびっくりしたぜ」

星熊童子とランドルが同時に地面を蹴る。

両者共に拳を放つ。

鬼とオーガの拳と拳が激突し、音を立てて砕けた。

「やるじゃねえか」

「……膂力は互角か」

右腕を肩までひしゃげた星熊童子に対し、ランドルは指と手のひらが潰れている。

「互角じゃねえぞ、俺の力はまだこんなもんじゃねえ」

星熊童子の腕が再生される。

霊力を消費した回復術だ。

対して、ランドルの腕は治らない。

「おい、早く治しやがれ。喧嘩の続きができねえだろ」

ランドルは目を丸くしていた。

彼だけではない。

観客席の魔族たちも、驚きに包まれている。

「……いや、俺は回復魔法を使えん」

「魔法なんて使ってねえよ。ったく、そういうことは最初に言えよ、こっちだけ腕を治してシラけちまうじゃねえか」

そう言って星熊童子は構えていた右腕を解いた。

代わりに右足を一歩前に出し、左腕を構える。

「安心していいぞ、俺は右腕を使わないでいてやるよ」

「……オーガ族を、このランドルを馬鹿にするのか! 武人としての誇りを持っていないのか!」

「俺は妖怪だ! 武人じゃねえ! 誇りもクソも、姉貴のおっかなさに全部畑の肥やしにしちまったよ!」

「殺しはしないと自制していたが、俺を馬鹿にするのであれば、死を持って償わせよう!」

星熊童子はランドルの顔面に左拳を叩き込んだ。

ランドルは返すように星熊童子の顔に拳を繰り出す。

両者の鼻血が舞った。

「ひひっ、回復しねえから、安心して攻撃してこいや!」

「舐めるな!」

両者は殴り合う。

鈍い音が響く。

鮮血が舞う。

「ひっ、ひひひひっ」

膂力は互角でも、殴り合えばランドルのほうに分があると考えていた魔族は多い。

体格云々ではなく、オーガ族の肉体はひとつの武器なのだ。

岩をも砕く拳、大地を砕く蹴りを喰らい平然としている魔族はいない。

例外なのは魔王だけ。

そう考えられていた。

「ひひひっ、ははっ、あはははははははははははっ!」

しかし、星熊童子は倒れない。

何度殴られようと、息を切らすことなく、楽しそうに、拳を振るい続ける。

その姿に、恐怖を覚えた魔族は少なからずいただろう。

「あはははははははははははははははははははははっ!」

高笑いを続けながら星熊童子の拳の数が増える。

一度殴られると、二度殴る。

二度殴られたら、四度殴る。

星熊童子の攻撃は止まらない。

そして、ランドルの巨体が傾いた。

観客たちがざわめく。

「拳に力が入ってねえぞ!」

鼻血で顔を真っ赤にした星熊童子が渾身の拳を繰り出した。

ランドルの顔面に吸い込まれるように拳が突き刺さった。

鼻を潰したランドルが、片膝を着く。

「おー、おー、ようやく蹴りやすい位置に顔が来やがったな!」

牙を剥き出しにして笑った星熊童子が軽く地面を蹴り、くるりと一回転した。

回転の反動で繰り出したのは、回し蹴り。

ランドルは咄嗟に腕を構えて防御の体制をとるが、彼の腕を砕き、そのまま側頭部を踵で蹴る。

ランドルの巨体が浮き、リングを跳ねる。

そのまま観客席下の壁に激突して、大穴を作った。