作品タイトル不明
49「決闘の時間じゃね?」①
夏樹たちは闘技場に場所を移していた。
リングを囲うように、観客席がある。
「異世界ものではお馴染みのコロッセオのような場所だなぁ」
観客席には、オーガが数名、昨日会ったエルフ族長フェイリスと数名、他にも獣人や、ラミア、人と見た目がかわらない魔族などが多数いる。
人化したドラゴン、ドワーフ、ダークエルフ、リザードマン、アラクネなどもいた。
「……魔族さんの宝石箱だー!」
様々な種族がいる観客席を見て、祐介が瞳をきらきらと輝かせていた。
夏樹でも、様々な種族の魔族がいるのでテンションが上がっているのだ。
祐介の興奮も理解できる。
「さてと、魔族さんたちを眺めているのもいいけど、決闘しないとね」
夏樹たちは、魔族たちとは反対側の観客席にいた。
アイテムボックスを持つ夏樹でなければ、飲料水、食料が出せない。
小梅たちは、観客席に座り、夏樹から受け取った冷えたビールを開けて観戦モードになっている。
「おい、由良夏樹」
「スターベアさん」
「……星熊童子って呼べよ! いや、そうじゃなくてな」
夏樹に声をかけてきたのは、星熊童子だ。
ノリが良くブレザー姿の彼女は、リングの上に立つオーガ族族長のランドルを見た。
「俺にやらせろよ?」
「え?」
「あいつ、異世界の鬼だろ? だったら、日本の鬼の俺が相手しないでどうするんだよ?」
「えー! でもさ、向こうのご指名って俺なんだけど」
「馬鹿野郎! こっちの大将が最初に出ていくとか意味わからん! 向こうだって魔王が出て来ないんだから、いいじゃねえか!」
夏樹が止める暇なく、星熊童子が観客席からリングの上に跳んでいく。
音を立てずに着地すると、グランドルに向かい獰猛な笑みを浮かべた。
「よう! 俺は星熊童子だ! こっちの大将と喧嘩してえようだが、そりゃねえだろ。まずは俺様を倒してからほざけよ」
「――ほう。お主もオーガか?」
「俺は鬼だ!」
ランドルは、興味深そうに目を細めた。
「鬼か、なるほど。世界が変われば名も変わるのであろう。にしても、小柄だ」
「てめえがデカすぎるんだよ!」
「ははははっ、違いない! だが、よいのか?」
「なんだ?」
「お主が俺と戦いたいのは理解した。だが、お主の敗北は勇者の敗北となる。それで、よいのか?」
「はっ、俺が負けるわけがねえだろ!」
星熊童子とランドルが睨み合う。
しばらくして、グランドルが、にぃっと笑う。
「いいだろう。――魔王様! 俺はこの者と戦おう! よろしいか!」
「――そなたの思うようにすればいい」
「感謝する! 由良夏樹よ!」
観客席にいた夏樹にグランドルは声を張り上げる。
「もし、この鬼が負けたら、オーガはお主に味方しないと言っても任せるか!?」
夏樹は腕で丸を作り返事をした。
「どーぞー!」
グランドルは、うんうん、と頷くと、魔力を爆発させた。
「いいだろう! 勇者と戦いたいと思っていたが、別世界のオーガと戦うことも興味深い!」
「ふざけんな、俺はオーガじゃねえ! 鬼だ!」
京都出身の鬼、星熊童子。
異世界のオーガの族長、グランドル。
ふたりの戦いが始まった。