軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「安定のふたりじゃね?」

――青森某所。

「まもん、まもんっ。ままままーもーんー!」

七つの大罪の強欲を司る魔族マモンは、パソコンに向かいカタカタとタイピングをしていた。

「……編集をしてくれているのかと思ったら、なに書いているんだ?」

仕事を終えて風呂上がりのサマエルが、ジャージ姿にタオルを巻いて冷蔵庫から缶ビールを取り出す。

マモンの背後からパソコンを覗くと、

「――ひえ」

画面いっぱいに広がる「まもんまもん」の羅列。

「……まもんまもん……さまたん様……見られてしまったようですね」

「いや、隠したかったら部屋でやれよ」

「まもん。実は、さまたん様が更生させた少年と漫画やアニメの話で盛り上がりまもんまもん」

「……そういや、最近、仲良いな」

サマエルはやんちゃしていた不良少女、不良少年を更生させ、畑でアルバイトさせている。

そのひとり、元暴走族総長の少年がマモンたちと仲がいいことを知っている。

「創作まもんに火がついたので、執筆まもんをしているところでまもんまもん!」

「……いや、画面いっぱいにまもんまもんしか書かれていないんだが」

「異世界からまもんまもんしたら、地球もかなりまもんまもんでした! という、タイトルのローファンタジー小説を書いていまもんまもんですが?」

「いやいやいや! まもんまもんは万能じゃねえよ!」

「――ま、もん?」

マモンは、サマエルの言葉に動きを止めてゆっくり振り返った。

心なしか震えている気がする。

「……そんな信じられないみたいな顔をされたら、こっちが信じられねえから」

「ま、まもん、さまたん様はまもんまもんで通じるではないですかまもんまもん!」

「紀元前からの付き合いだからな! 身振り手振りや、その場の雰囲気、イントネーションで通じているけど、さすがにまもんまもんの羅列読まされてもわかんねえから!」

「――ま、も、ん」

「ていうか、百ページ、全部まもんまもんかよ!」

サマエルが唖然としていると、マモンは静かにパソコンを閉じ、冷蔵庫からビールを手にした。

サマエルが慌てる。

「ま、待て、それは私が買った一本六百円もするクラフトビールだぞ!」

マモンはサマエルの制止を無視して、風呂上がりの牛乳のごとく一気に飲み干す。

「ふう、よいまもんまもんでした」

「……あ、ああ、労働のあとの一杯が。楽しみにとっておいたのに。まーもーんー! 貴様ぁああああああああああああああああああああああああ!」

「まもん!? さ、三本あるうちの一本を飲んだだけでそこまで怒りまもんまもん!?」

「私の小遣いで買ったビールだぞぉおおおおおおおおおおおおおおお!」

サマエルは怒りの形相を浮かべると、冷蔵庫の隣にあるワインセラーから適当にワインを一本引き抜いた。

「まもまもん!? そ、それは、一万円もするワインでまもんまもん! ビールを飲んだだけで、そこまでするんでまもんまもん!?」

マモンに悲鳴が響くが、サマエルは容赦無く手刀で瓶を口を叩き切るとグラスを使うことなくラッパのみを始める。

ごっごっごっ、とサマエルの喉が鳴る。

「まもぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!?」

「っぷはー! そこまでワインは得意じゃないが、なかなかだったぞ!」

「ま、まもん」

「そりゃないぜって、お前な……クラフトビールの恨みはでかいんだぞ」

「まもんまもん……ならば!」

ショックを受けていたマモンがダッシュで茶の間から出ていく。

しばらくして一升瓶を抱えて戻ってきた。

「……待て、話し合おう。それは、それだけはやめてくれ。三年間ずっと待ちづけてようやく抽選に当たった芋焼酎だぞ? 正月に飲もうと思っていたんだ! 頼む! わかった、私が悪かったから!」

サマエルの懇願に、マモンは魔族らしい悪い笑みを浮かべた。

「やめ」

キャップを外し、口につけると一気に飲んでいく。

「いやぁああああああああああああああああああああああああ!」

絹を裂くよう悲鳴が青森に夜空に響いた。

――後日、お互いに謝罪して仲直りしました。