作品タイトル不明
48「宝物庫って物語終盤のイメージがあるんじゃね?」
――夏樹たちがオーガ族族長と会っているころ。
三原一登は、水無月姉妹、神奈征四郎、神奈義政、安倍円、そしてダークエルフのソーニャと一緒に宝物庫にいた。
「娘……じゃなかった、魔王様から友好の印ってことで武器や武具をくれるってよ。好きなのを選んで選んじゃいな!」
メイド服を着こなす、幼い褐色少女はダークエルフであり、魔王の母でもあるソーニャ・シラーだ。
人間の国ブレイバーズ王国に潜入し、ベアトリス・ブレスコット第一王女付きのメイドとして仕えながら、情報収集をしていた。
彼女のおかげで、ひとりブレイバーズ王国に勇者として召喚されてしまった沢渡祐介のことが魔王に伝わり、夏樹の知るところになった。
夏樹たちがソーニャに感謝したのは言うまでもない。
「あの、ソーニャさん、いいんですか?」
「もちろんだぜ! 見たところ、由良夏樹の聖剣みたいな強い武器を持ってないようだしな。……まあ、あんな凶悪な武器を何本も所有されていたら嫌なんだけど」
ソーニャは夏樹の力を身近で見ていたこともあり、彼の実力、聖剣さんの凄まじい力を知っている。
それだけに、聖剣が一振りしかないことを安堵していると同時に、一登たちの装備が不十分と判断した。
「好きに見てくれていいぜ! ただ、宝物庫の武器や武具は使い手を選ぶからな」
「……聖剣さんのように意思があるってことですか?」
「あそこまではっきりした自我はさすがにないよ。ただ、自分に相応しい持ち主を待っているのは間違いない。そういう意味じゃ、意思があるのかもしれないけどな」
「そうですか。少し楽しみです」
「おおっ、やっぱり男の子だな!」
ソーニャ曰く、宝物庫にある武器や武具は誰も扱えない曰く付きも多いようだ。
かつて魔王が振るっていた魔剣「常闇の剣」も、かつてはこの宝物庫にあったらしい。
「あの、私たちもいいんですか?」
「なんだか申し訳ないかな」
都と澪が、ソーニャに遠慮がちに尋ねる。
だが、彼女たちは、宝物庫の逸品に興味があるらしい。
「もちろんだって。一緒に美味しいお酒を飲んで、飯食ったら友達じゃないか! 私は友達が武器が弱かったからなんてつまらない理由で死んじまうのは嫌だね!」
「……ソーニャさん、ありがとうございます」
「ありがとう、ソーニャさん」
「おう!」
ソーニャは、小梅と銀子に酒でもてなされると、鬼姉妹を含めてどんちゃん騒ぎを楽しんだ。
一登たちが朝起きると、小梅と銀子と一緒にテントから足をはみ出させて爆睡していたのを目撃している。
一晩で、かなり打ち解けたようだ。
「……俺もいいのだろうか? すでに武器を持っているんだが」
「記念だ持ってけ!」
「感謝する。正直、異世界の剣に興味がないと言ったら嘘になる」
剣士である征四郎も、水無月姉妹と同じように未知なる武器に心を躍らせていた。
しかし、不意に近くの刀剣に手を伸ばすと、甲高い音を立てて刀剣が砕けてしまう。
「……な」
驚く征四郎の背後では、不機嫌そうな黒づくめの少女が「くけけ」と笑っている。
おそらく、自分以外の剣を持つことはご不満らしい。
「……私は遠慮しておこう。ソーニャ殿、貴重な剣を駄目にして申し訳なかった」
「あ、いや、いいって、いいって。壊れる武器が悪いんだから!」
「すまない」
征四郎も神剣が他の剣を持つことをよしとしていないのを理解したようで、残念そうに肩を落とす。
「そっちのお子さんはどうしようか。子供に武器を持たせるのって好きじゃないんだけど、自衛するのにも必要だし」
「ご心配なく、ソーニャさん」
「うん?」
義政は、上着をめくる。
すると、ホルスターに挿さった宇宙的拳銃があった。
「なんだこれ?」
「不思議な光線が放たれる武器です」
「へえ! 子供の護身用ならちょうどいいな!」
「はい!」
ソーニャは知らないことだが、義政が持つ宇宙的拳銃は出力調節を高くすると、人ひとりくらい簡単に消し飛ばすことができる。
「ちょ、義政くん!? その拳銃って宇宙で使ってたのだよね!? ジャックさんに返さなかったの!?」
一登が慌てて問いかけると、義政はニヒルな笑みを浮かべた。
「ジャックさんにお借りした武器はきちんとお返ししました。この銃はドップニャーニャー海賊団が持っていた銃です。落ちていたので、こっそり」
「いいなー! ずるいよ、俺のも欲しかった!」
宇宙的拳銃を所有している義政に、一登は心底羨ましいと思うのだった。