作品タイトル不明
46「また被害者じゃね?」
「魔王様、そろそろ」
オズワルドが、ギーゼラに声をかける。
「そうだったな。勇者……いや、由良夏樹」
「うっす」
「オーガ族族長と会ってもらいたい」
「もちろんです」
「すでに、オーガ族と顔を合わせているようだが、ゴールンとガイオンほど人間への偏見はないが、わかりやすく戦うことが好きな者だ。おそらくだが、決闘を挑まれるだろう」
「なんとなくそんな気がしていたよ」
「……このようなことを言うのは、心苦しいが、できることならそなたに戦ってほしい」
ギーゼラが夏樹に頭を下げた。
ラーラ、ヒトエ、オズワルドも続いて夏樹に頭を下げる。
「了解です! 任せてください!」
夏樹が快諾する。
小梅たちは、反対しなかった。
「感謝する。実力に重きを置く種族の長の決闘相手が由良夏樹以外だと、不満を抱かれてしまう可能性もある」
「魔王さんも大変だね。そんなに気にしなくていいから」
「……そう言ってもらえて、助かる」
ギーゼラが礼を言うと、オズワルドに目配せをする。
控えるメイドではなく、老執事自身が扉を開けに向かった。
「オーガ族族長グランドル様、四天王ジードル様、お入りになります」
開かれた扉から入ってきたのは、三メートル近い巨漢だった。
ひとりは、赤褐色の肌を持ち、筋骨隆々。
腕など、夏樹の足よりも太い。
伸ばしたくすんだ赤髪も、剛毛だ。
額には太く長い角が二本生えている。
「――オーガ族族長グランドル……参上した」
グランドルと名乗ったオーガは、丁寧に腰を降り魔王に挨拶をする。
続けて、部屋に入ってきたのは、青い肌を持つオーガだった。
体格こそグランドルと変わらないが、細身で引き締まった印象を受ける。
茶色い髪を伸ばし、角は太く短い角が二本生えているが、左側が根本から折れている。
「四天王ジードル、参りました」
ジードルは、その場に片膝をつき、魔王に恭しく礼をする。
そして、夏樹を見て、
「ぴえっ」
と、その体格と強面からは考えられない情けない声を出す。
小刻みに震えるジードルの姿は、先ほどのヒトエを思い出させる。
夏樹はなぜそんなに怯えられているのかわからず不思議そうな顔をしているが、小梅たちは「あー」となにか察したようだ。
「ジードル! 仮にも四天王であるのだ! 魔王様の御前でそのように情けない声を出すな!」
「……ら、グランドル、しかし」
「ええいっ、我が兄ながら情けない! 勇者に角をへし折られたからとなにを怯える!」
「……オーガの角は人間の腕力じゃ絶対に折れないはずなんだが……勇者は小枝でもおるように……う、うぐ、ぐ」
「泣くな!」
夏樹は、青肌のオーガに記憶がないようで困った顔をしている。
角を折ったことだってもちろん覚えていないだろう。
対して、小梅たちは、
――ああ、また被害者か。かわいそうに。
と、小動物のように夏樹に怯えるオーガに同情的な視線を向けた。