作品タイトル不明
45「魔族さんもいろいろ大変じゃね?」
ギーゼラは夏樹に尋ねた。
「……ねっとりするような笑顔を浮かべている青年は本当に勇者なのだろうか? 勇ましい者には見えないが」
「言っておくけど、祐介くんは俺たちの中で誰よりも魔族さんが大好きな人だぜ!」
「……そうか。うん。そうか」
なにかを受け入れるように、魔王は何度か頷いた。
「大地の勇者殿」
「はいっ! ロリババ魔王様万歳!」
「…………」
「魔王さん、負けちゃ駄目だって! 頑張ってお話続けて!」
「……勇者というのは、どこかおかしくなければいけないのか?」
ダークエルフの血を濃く引く外見十歳の魔王ギーゼラ・シラーに祐介は興奮気味だ。
単眼少女を含め、きっと魔王城は裕介にとって宝箱の中のようだろう。
「ははは、やだなぁ。魔王さんの言い方だと、俺までおかしいみたいじゃん!」
「……え?」
「……え?」
自覚ないの、という顔をされた夏樹がショックを受ける。
頑張ってフレンドリーに接した結果、おかしい人扱いだ。
とても悲しい。
「いい加減にしろ、由良、佐渡。魔王に迷惑かけんな。特に佐渡は、口の周りを拭け!」
「……俺、悪くなくね?」
「じゅるり。失礼しました」
じっと黙っていた千手が、怒気を含んだ声を出す。
夏樹はしょんぼりし、祐介はハンカチで口元を拭った。
ギーゼラは救世主を見つけたように、千手を見つめていた。
「まあまあ、千手はん。とりあえず、魔眼族は自分たちに協力してくれることでええんよね?」
「は、はいぃ」
東雲が千手を落ち着かせながら、ヒトエに振る。
彼女は、何度も首を縦に振った。
「素朴な疑問なんやけど、なんで魔眼族なん? 単眼族やないの?」
「そ、それはですね。魔眼族というのは、目に力を持つ種族の総称です。その中に、私のような単眼族もいるんです」
「そうなんやねぇ」
「私は単眼族の中で一番力があるので、族長となりました」
「前族長はんは?」
「……基本的に四天王は族長になりません。前族長は単眼族で私に次ぐ力を持っていました」
ヒトエの話は興味深かった。
四天王は種族の族長にならないというのは、夏樹も初耳だ。
「なんで?」
疑問に答えたのは、ギーゼラだった。
「四天王は我と共に戦場に立つため、危険も多い。族長が死ぬと、後継者争いなどがおきてしまうので、四天王と族長は切り離している」
「ってことは四天王のほうが上ってこと?」
「そう簡単な話ではないのだがな。魔族は実力主義なので、四天王にも族長にも力を求められる。戦いに必要な力だけがすべてではないが、魔族は人間と戦争をしているので、戦場で必要な力を求められることは多い。力的には、四天王のほうが上だが、立場は対等だ」
魔王を含め、四天王や、幹部は力を求められている。
中には固有の能力を持ち、戦闘能力が低い者もいるようだが、基本的に戦場にたっても問題はないくらいの力がある。
実力主義の魔族にとって、弱い者の命令は我慢ならない。
弱者は守る者であり、戦う者ではないというのが魔族の大半の意見だ。
大雑把に説明してしまうと、種族ひとつひとつが一部隊だ。
命令は魔王から四天王はじめ幹部から各族長に下る。
族長が指揮官だ。
族長は一族の中で最も力がある者が選ばれるので、同格かそれ以上の魔族でないと、揉め事も起きるようだ。
ただ、昨今、力だけが全てではないという魔族も現れているので、少し揉めることもあるようだ。
「魔族も大変だね。でも、魔眼族さんが仲間になってくれてよかったよ。そういえば、魔王さんって、いや、ギーゼラさんって呼ばせてもらうけど、ダークエルフも味方でいいんだよね?」
「無論。私はダークエルフの血が濃い混血だが、種族としてはダークエルフだ。娘のラーラ、母ソーニャも同じく。母の姉が族長をしているが、すでに話は通している」
「それはよかった」
すべての種族に族長がいて、相応の地位があるわけではない。
数の少ない種族もいれば、散り散りとなってまとまっていない種族もいる。
また、混血の魔人という種族も多いようだ。
「できれば、我が叔母が族長としてそなたに挨拶をしたいようだ」
「よろこんで」
(……ギーゼラさんのおばさんが、ロリババかどうかめっちゃ気になる)