作品タイトル不明
44「単眼少女って素敵じゃね?」
「……昨晩は賑やかであったようだな」
「もう、知ってるくせにぃ!」
魔王ギーゼラと再び顔を合わせた夏樹たちは、会議室にいた。
魔王の傍には、娘のラーラと執事のオズワルド、そして単眼の少女が控えている。
「さすが勇者だ。見張りに気付いていたか」
「そりゃね」
夏樹側には、小梅、銀子、千手、東雲、祐介がいる。
他の面々は中庭で待機中だ。
「すまなかった。だが、誤解しないでほしいのは、勇者たちに害を与えるつもりはないということだ」
「うん。そこは心配していないよ」
夏樹たちも魔族側に悪意がないことは知っていた。
あくまでも監視であり、それ以上の目的はないとわかっていたので、放置していた。
視線など気にしない鬼姉妹以外は、全員気づいていたのだ。
「……昨日はできなかったが、今日は紹介させてほしい」
魔王の隣に座っている少女が立ち上がり、頭を下げた。
「わ、私は魔眼族のヒトエです! 殺さないでください!」
「……すげー自己紹介された」
黒髪のおかっぱの少女は、夏樹に向かって大きな瞳を潤ませて頭を下げると命乞いをした。
これには、夏樹たちも目を丸くする。
「さすが夏樹じゃのう。なにもせずに命乞いさせるとか……俺様でもびっくりじゃ」
「待って、小梅ちゃん! みんなも、うわぁ、なんて顔しないで! 誤解だよ! 誤解! というか、俺はこの魔族さん知らないから!」
「と、容疑者は言っておるんじゃが?」
小梅が魔王に尋ねると、ギーゼラは苦笑いしながら説明してくれた。
「確かに、勇者はヒトエに直接会ったことはない」
「ほら! ほらぁ!」
「しかし」
「あれ?」
話が続く。
夏樹は首を傾げた。
「魔眼族の族長は勇者の遠距離攻撃で倒されている」
「……記憶にございません」
本当に記憶になかった。
魔眼族を名乗る単眼の魔族を一度でも見れば、記憶に覚えているはずだ。
「族長は……勇者殿を遠距離から攻撃しようとし、私の隣で真っ二つになりました」
「……魔王配下の四天王がトラウマ抱えておるんじゃが!?」
「あー、記憶にはないけど、狙われたのならやり返していたかも? なんか、ごめんね」
「ひぇっ、こ、殺さないでください!」
「……殺さないけどさ」
「魔眼族は勇者殿に全面協力しますので、お命だけは……なにとぞ」
小動物のようにブルブルと震えるヒトエは、夏樹に対し、心底怯えを見せている。
思い返せば昨日もずっと気絶していた。
夏樹は、ここまで怖がらなくてもいいのに、としょんぼりする。
「勇者よ」
「うっす」
「魔眼族の前族長は勇者に敗北して死んだ」
「記憶にないけどね」
「魔眼族の現在の族長はヒトエだ。彼女は、言葉通り、勇者に全面協力すると約束している。勇者も過去を忘れてくれると助かる」
「もちろん。ただ、その前に」
「なんだ?」
「俺を勇者っていうのやめない? もうひとり大地の勇者さんもいるし」
「――ふむ」
ギーゼラは、ちらり、と祐介に視線を向けた。
待っていました、と祐介が立ち上がる。
「こんにちは! 僕、佐渡祐介! 魔族大好きな純情ボーイだよ! 単眼っ子は大好物です!」
「ひぇ」
「ステイステイっす、祐介くん。ヒトエさんにガチで怯えられているから、そのやっべえ顔をなんとかしてほしいっす!」
「すみません、紳士な僕としたことが」
「紳士って意味を辞書で調べてみてほしいっす」
祐介の隣に座る銀子がドン引いている。
本人は自覚がないようだが、爽やかな自己紹介に反して、祐介の顔は邪悪だった。