軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

43「コーヒーは奥が深いんじゃね?」

「おはよ、なっちゃん」

「円ちゃん、おはよー」

千手と義政と一緒にコーヒーを飲んでいると、安倍円が起きてきた。

「千手さん、義政くんもおはよう」

「おう、おはよう」

「おはようございます」

千手と義政は、ブラックコーヒーをおいしそうに飲んでいる。

夏樹はミルクをこれでもかと入れて、千手に「マジか」と苦笑させていた。

「コーヒーを飲むか?」

「おおきに。いただきます」

「砂糖とミルクはどうする?」

「ブラックでええです」

「はいよ」

円はお礼を言ってカップを受け取ると、パイプ椅子に座る。

夏樹たちは簡易テーブルを囲んで、ほっとした時間を過ごす。

「円さん……ところで、さ」

「なんなん?」

「しののんはなにしているの?」

「あー」

中庭の端では、安倍東雲が体格のよい魔族に肩を組まれて困り顔だった。

「……どちら様?」

「えっと、オーガ族の族長の息子の、兄ゴールンはんと弟ガイオンはんや」

「めっちゃ仲良くしている感じがするんだけど?」

「昨日、絡まれたんやけど、兄貴がボコったら仲間になった感じなんかな?」

「……マジかぁ。俺には誰も仲間になってくれなかったんだけど」

「由良の場合はみんな殺したからじゃねえか」

「確かに!」

千手のツッコミに、夏樹は納得してしまった。

「……自分、低血圧やから朝は弱いんよ。もう少しゆっくりさせてほしいんやけど、ゴールンはんもガイオンはんもなんでこんな朝早くから訪ねてきたん?」

「東雲の兄貴に我が父をご紹介したく」

「東雲兄貴なら俺たちの親父も気に入ってくれますぜ」

東雲は随分とオーガに気に入られているようだ。

「なんか舎弟みたいになってる」

「……オーガ族は強さが全て……ってわけやないみたいやけど、人間の兄貴に手も足も出ずに敗北したから懐いたみたいなんよ」

「暑苦しそう」

「せ、せやね」

東雲がまとわりつくオーガ兄弟を引き連れてこちらにやってくる。

「しののん、おはよう」

「……みなさん、おはようさん。自分にもコーヒーもらえるん?」

「もちろんだ。ほら、座れよ。そっちのオーガは……体格的に椅子が」

疲れた顔をする東雲と挨拶を交わすと、彼は折りたたんであったパイプ椅子を開いて腰を下ろす。

千手はオーガたちに椅子を出そうとするが、人間よりも一回り大きいオーガが座れる椅子がなかった。

「気遣いはありがたいが、我らはすぐに家具を壊してしまうのでな」

「地面に座るので十分だ」

がははははは、と快活に笑うと、東雲の左右にオーガが座る。

「……なんだか大変だな、安倍東雲。ほら、コーヒーだ」

「お、おおきに。なんでこんなんになったんか、自分でもわからんわ」

心底不思議そうに首を傾げる東雲は、千手からカップを受け取り口をつける。

「そっちのあんたらも、飲むか?」

「ありがたい、いただこう」

「ありがとう、コーヒーをゆっくり飲む日などいついらいだろうか?」

オーガ兄弟は嬉しそうな顔をした。

この世界にもコーヒーはあるようだ。

夏樹の記憶には薄っすら紅茶を飲んでいた人間がいるが、コーヒーはなかった気がする。

もっとも、この世界のものを飲食するつもりがなかった夏樹にとって、気になるものではなかったということもあるだろう。

「だが、まさか勇者由良夏樹と会えるとは思いもしなかった」

「我がオーガ族を蹂躙した強者の中の強者!」

「あ、どうも」

コーヒーを受け取ったゴールンとガイオンは、夏樹に鋭い目を向けた。

だが、しばらくして、兄弟揃って首を傾げた。

「……私の記憶にはもっと血走った目を見開き、血まみれの禍々しい人間だったと記憶しているが」

「このようにふんにゃりした感じではなかったと、思う」

「ふんにゃりて……勇者だってまったりするさ」

どうやら、ふたりの記憶にある夏樹と、目の前にいる夏樹が一致せず、困惑しているようだ。

「ゴールンはん、ガイオンはん、思うことはあるんやろうけどここで喧嘩はあかんよ」

東雲が釘を差す。

だが、オーガたちは、素直に返事をした。

「無論。誇り高きオーガ族は戦場以外で力を振るわぬ!」

「我々オーガは勇者に敗北している。父が話をしたいと魔王様に申し出ているのだ、我々がここで問題を起こしては叱られる」

「それでなくとも、昨晩東雲の兄貴たちに喧嘩を売ったことがバレて叱られているんだ」

「同じことはしない!」

「なら、ええんやけど」

他のオーガは不明だが、少なくともオーガの兄弟は夏樹に恨みはないように見えた。

割り切って夏樹と戦うことにしたエルフとは少し違うようだ。

「えっと、よくわからないけど、喧嘩する気がないなら朝食でもどう?」

夏樹が尋ねてみると、ゴールンとガイオンはにこりと笑った。

「いただこう!」