作品タイトル不明
36「師匠と再会って強化フラグじゃね?」①
「お会いしたかったです、師匠ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「う、うむ。坊主は元気そうだな」
「再会に感謝ですっ、ふぅうううううううううううううううううううううううう!」
「元気すぎる気がするのは気のせいだろうか?」
テンションの上がった夏樹に困惑気味の老人が、聖剣さんを一瞥する。
「こっち見んな。こいつは元からこんなんよ」
「……ほ? わしと会ったときには……もっとこう、触れたら切れるような鋭利な刃物のような子だったが」
「残念ながら、今の夏樹は触れたらキレて大暴れするようなやべえ奴よ」
「変わったようだのう」
「もともとこんな性格だったのが、この世界のせいでさらに弾けちゃったのよ」
聖剣さんと老人も知己だ。
夏樹は詳細は知らぬが、ふたりはとても古い知り合いであるということは聞いている。
「師匠ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! ところで、なんで急に?」
「坊主のほうが急にどうしたのかってほどの変わりようだが、まあいいだろう」
ごほん、と老人は咳払いをする。
「懐かしい気配がこの世界に戻ってきたので、会いにきたのよ」
「そういえば、ご挨拶もせずに故郷に帰ってしまいすみません」
「よいよい。坊主とは数ヶ月しか共にいなかったが、その後の活躍は聞いておる。――頑張ったのう」
老人の言葉に、夏樹は一度夜空を見上げて鼻を啜ると、頭を下げた。
「ありがとうございます! これも師匠と聖剣さんのおかげです。俺は無事に故郷に戻り、日常に戻れました」
「ほほほ、それはよかった。しかし、そんな坊主がなぜふたたびこちらの世界に戻ってきたのかのう?」
「それは――河童大神様のお導きです」
「……すまぬが、そのような神をわしは知らぬのだが」
「違うでしょ、この河童馬鹿ぁ!」
夏樹に任せていたら話が進まないと、この世界に戻るまでの一連の流れを聖剣さんが老人に説明した。
「ほっほっほ、坊主の言う平穏はわしからすると平穏ではない気がするが、瑣末なことよ。しかし、そなたも大変よのう?」
「本当よ! ま、封じられて身動きできずずっと寝ているだけよりはいいけどね」
「素直ではないのう。さて、坊主――いや、由良夏樹よ」
「はい。お師匠様!」
「……やりづらいのう」
夏樹にとって老人は恩人であるので、キラキラとした瞳を向けているのだが、老人にはなんとも言えないやりづらさがあるようだ。
「ごほん。先ほども言ったが、懐かしい気配に会いたくなったので来た。が、他にも理由がある」
「あ、ご飯でも一緒に」
「そうではなく……お主の勇者の力を解放するために来たのだよ」
「あー、えー?」
「まさか覚えとらんのか?」
「えっと、あー、はいはい! そういえば、海の力は海水浴したくなるから封印しておくって」
「……誰もそんなことは言っておらん。お主が持て余すので、封じたであろう」
「そうでした! というか、聖剣さんが海の勇者の力を使ったら膨れっ面になるから!」
「べ、別に膨れっ面なんかしていないし!」
「……お主らは本当に変わったのう」
老人は、どこか呆れたような、しかし微笑ましいものを見るような優しい目をしていた。
「聖剣を使いこなすことでお主は強くなった。ならば、次は海の勇者としての力を使いこなす番かと思っていたのだが、弱くなってしまっているのう」
「……これでもだいぶ力を取り戻したんですけどね」
言われずとも、弱くなった自覚はある。
自分の力どころか、聖剣さんの力をすべて引き出すことができていない。
「厳しいことを言うようじゃが、お主――このままでは死ぬぞ」