軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34「再会って心にくるものがあるんじゃね?」①

夏樹は、魔王城の屋根の上で異世界の夜空を眺めていた。

異世界に来たときはどうなるかと思ったが、小梅や銀子をはじめ、一登や祐介たちのおかげで賑やかに過ごすことができている。

魔王に対して、少々口悪く対応してしまったが、そこは反省している。

現在は、自分でも驚くほど、心は落ち着いている。

「……夏樹ったら、早く寝なくていいの?」

屋根の上に座る夏樹の背後から、聖剣さんがそっと現れ彼の身体を抱きしめる。

「うん。なんていうか、眠ろうとして目を瞑ると……忘れていたはずのこの世界の嫌な思い出を思い出しちゃってさー」

「たくさん色々なことがあったものねぇ」

「だよねぇ。こっちの世界に召喚されて、何度も日本に帰してくれってお願いしても無視されて、戦え、戦えって……頭おかしくなるかと思ったわー」

夏樹だって、最初から戦いの日々を送ったわけではない。

何度も自分を召喚した王女に「日本に帰してくれ」と懇願した。

だが、王女――夏樹は名を覚えていないが、ベアトリス・ブレスコットは、夏樹の願いを無視して、世界が魔王と魔族によって滅びかけている、とテンプレートを語った。

すぐに夏樹は理解した。

この女は、自分を使い潰すつもりである、と。

自称幼馴染みである三原優斗関連で、人間の嫌な部分をこれでもかと見てきた。

ベアトリスは、今まで出会った人間の誰よりも、私利私欲を抱えており、自分のことしか考えていない嫌な女だった。

夏樹は帰還を諦めず、強くなって王女を脅そうと決めた。

さすがに死にたくないだろうと考えたのだ。

辛い訓練を受けながら、飲食はせず、痩せ細っていった。

だが、この世界の魔力を取り込むことで肉体的に食事をせずとも良い状態を維持できるようになると、聖剣さんと会うことができた。

夏樹は彼女と契約した。

死がふたりをわかつまで、共にあると。

聖剣さんをこの世界から夏樹の世界に連れていく、と。

約束は果たされた。

ベアトリスが夏樹の帰還方法を考えていないのはすぐにわかった。

なんせ夏樹に聞かれていないと思い、勇者の子供を産んでみせる、と従者に豪語しているのだ。

殺してもよかったが、利用することにした。

魔王を倒せば、帰還できる可能性があると言われたので、ならば人間が自分を使い潰そうとするように、自分も同じように使い潰してやろうと考えたのだ。

結果的に、うまくいった。

夏樹が結果を出せば出すほど、王女は立場を強くし、取り巻きが増え、力を得た。

すると、さらに権力を求め、夏樹を次々と戦場に投入する。

これを繰り返すことで、夏樹は魔王にたどり着いた。

言葉にすると簡単ではあるが、敵対する魔族を、時には人間を全て斬り殺してきた。

予想外に魔神と戦うことになったが、結果的に日本に帰ってこられたのでよしとしていた。

――だが、こうやって再び異世界に戻ってくると、復讐したいという気持ちが湧いてくる。

思いっきり「ざまあ」をしたかった。

今回は、ゴッドが必ず迎えにきてくれる。

好き勝手しても日本に帰れるのだ。

アマイモンやガープという敵もいるが、些細な問題だ。

全部殺して、異世界から人間を駆逐するのだ。

そして、人間たちが、自分たちの行いを悔いたところを盛大に笑ってやる。

もっとも、異世界人が悔いるかどうかは不明だが。

「悪いこと、考えているわね」

「くひひひ、異世界人をぐっちゃぐちゃにしてやんよ」

「笑い方が悪党の方なんですけど」

「ギャラクシー河童勇者なっちゃんはダークサイドからお届けしています!」

「……まあいいわ」

なんとも言えない顔をする聖剣さんとしばらく夜空を眺めていると、気配がした。

呼吸も心拍もない、人形のような「なにか」が夏樹のすぐそばにいることに気づいたのだ。

「ほっほっほ。懐かしい坊主が戻ってきているので、つい会いにきてしまった」

「あなたは」

ボロ布を身に纏った、髭を蓄えた老人がいた。

その人物を、夏樹は知っていた。

「久しいのう」

「師匠ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

「――ほ?」

「お久しぶりですぅうううううううううううううううううううう! 師匠ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「……こんな愉快な性格だったかのう? もっと氷のように冷たい坊主だったはずなのだが?」

老人――夏樹の師匠は、ちょっと困惑気味だった。