軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26「第一印象って大事なんじゃね?」②

「由良と佐渡がおっかなくてエルフさんが逃げちまったじゃねえか。どうすんだ、おい?」

「俺のせいなの!? 祐介くんがテンション高すぎたから怖かったんだよ!」

「僕のせいにしないでよ!? 異世界のなまはげの夏樹くんにびっくりしたんだよ!」

「なんだとぅ?」

「なんだよぉ!」

夏樹と祐介は、エルフが逃げた原因を押し付けあった。

千手は呆れて電子煙草を咥えた。

「どっちもどっちだからに決まってんだろ!」

「そういう千手さんだって、エルフさんに鼻の下伸ばしていたじゃん! タイガーさんにチクるからね!」

「ばっ、俺と虎童子はそういう関係じゃねえって言ってるだろ!」

「千手さん……僕のいないところで鬼さんとラブコメってるなんて、僕はもうダークサイドに」

「堕ちんな! 面倒臭え奴らだな!」

千手が突っ込みを入れ、大きく嘆息をする。

夏樹たちのやりとりを、ギーゼラとオズワルドが目を丸くして見ていた。

もしかしたら、夏樹に対し、四天王の千手が気安いことに驚いているのかもしれない。もしくは、祐介のテンションの高さのせいか。

「……勇者と愉快な仲間たちは、しばし静かにしてもらえるだろうか?」

「うっす」

「ごめんなさい」

「悪かった」

「うむ。では、エルフの族長を呼んでくるので、しばし――」

魔王が椅子から立ちあがろうとすると、再び扉が開いた。

とびらの陰から、十代半ばほどの可憐なエルフが顔を出して夏樹たちを伺う。

「――フェイリス殿」

魔王に名を呼ばれ、エルフ――フェイリスはびくり、と身体を震わせた。

「驚かしてしまったようで、すまない。さあ、部屋の中に入ってくれ」

魔王が手招きすると、フェイリスがお辞儀をして会議室の中に入ってきた。

彼女に続き、二十代から三十代ほどに見えるエルフが四人続く。

エルフは長寿なので、見た目通りの年齢ではないことは知っている。

森の戦士と呼ばれながら、森以外で強いエルフは、人間との戦いに積極的に参加している種族だった。

「魔王ギーゼラ・シラー様、失礼いたしました。お部屋に入った途端、珍妙な輩がいましたので驚いてしまい」

「あ、ああ、驚くのは無理はないが、お客人だ。珍妙だという扱いは控えるように」

「――はっ」

フェイリスは魔王の言葉に返事をするが、夏樹や祐介に対してなにかを言うことはなかった。

夏樹たちも、「珍妙な輩って誰だろう?」と首を傾げている始末なので、特に問題にはならない。

魔王は咳払いをすると、フェイリスに座るよう促した。

「さて、そなたが新たなエルフの族長となったフェイリスだな」

「はい。父と兄亡き後、私が新たな族長となりました。若輩者ではございますが、魔王様のお力になれるよう精進していきたいと思います」

「……そうか。お父上、兄上のことはよく知っている。彼らのような誇り高き戦士が亡くなったのは残念だ」

「魔王様にそう言っていただけて、父と兄も喜んでいるでしょう」

この世界では、エルフとダークエルフの仲は悪くない。

人間という倒すべき敵がいるので、手を取り合っている。

それでも、魔法を得意とするダークエルフと、戦いそのものを得意とするエルフが揉め事を起こすことはある。

特に、ギーゼラ・シラー様という魔王が生まれてからは、エルフ族も強い者を育てようと躍起になっている。できることなら、エルフからも魔王を輩出したいのだ。

そんなエルフの中で育ったフェイリスは、エルフの中で最高傑作と呼ばれるほど素質がある。

前族長の父と、兄には及ばないが、その実力は各種族に轟いていた。いずれは、ふたりを超えて族長に、そして魔王に、と期待されている若きエルフだ。

「本日は、新たな族長として魔王様にご挨拶をしにきたのですが……まさか勇者とこうして顔を合わせることができるとは思いませんでした」

「……そなたには面白くないだろうが、これも魔族の未来のためと思い、思うことはあっても堪えてほしい」

「無論です。私たちの目的は、人間に脅かされない国を作ることです。そのためならば、父と兄を奪った勇者とでも共に戦いましょう」

フェイリスの言葉には険が込められていた。

魔王の手前、夏樹に襲いかかるようなことはしないが、尊敬する父と兄の仇を前に理性を総動員しているようだ。

「……まじかぁ、勇者って祐介くんじゃん。まじで酷いなぁ」

「僕も勇者だけど、エルフさんの仇の勇者って夏樹くんのことだと思うよ!?」

「由良ぁ。お前はしばらく口を閉じてろ! 絶対、揉めるぞ! 俺はもう確信したからな!」

フェイリスの鋭い視線など気にもしない夏樹は、やはりエルフと戦ったことは覚えていない様子だった。