作品タイトル不明
23「エルフさんは異世界の王道じゃね?」①
「すでに、エルフ族の代表が勇者に面会を求めている」
「エル――」
「――エルフさんだと!?」
びくんびくん、と震えていた祐介が夏樹の言葉を遮り叫び、起き上がった。
彼の目は血走って、鼻息も荒い。
魔王はちょっと引き気味に頷く。
「あ、ああ、そうだ。エルフの族長が勇者に」
「族長様は女性ですか、男性ですか!?」
「女性だが」
「ふぅううううううううううううううううう! 異世界の王道エルフさん! ダークエルフさんもだいしゅきだけど! やはり王道からせめないといけないですよね!」
祐介は全力でガッツポーズした。
魔王は困惑気味だ。
「……私も長い時間を生きているが、こうも魔族が好きな人間を見たのははじめてだ」
「そりゃよかった」
「この世界の人間も、異世界の人間のようだったらよかったのにな」
「いやいやいや、この世界の人間がみんな祐介くんみたいだったらこわいっ!」
異世界人が「魔族だいしゅき!」と言っている姿を想像し、戦慄した。
ある意味、現在の異世界よりもやばいことになりそうだ。
「にしても、エルフさんかー」
「夏樹くんはやっぱりエルフさんをご存知なんだ?」
「うん。ていうか、祐介くんはご存知ないの?」
「僕は種馬扱いで監禁されていたからね。特攻するときも、魔族さんに気を割く余裕なんてなかったよ」
「……毎回思うけど、過去が辛いんだよ!」
生来、穏やかで優しい祐介だからこそ、異世界人にいいようにされていたのだ。
夏樹は改めて異世界人を滅ぼす理由を確認した。
「でも、エルフさんかー。めっちゃ恨まれているんだろうなぁ」
「……戦争だったので仕方がない。といいたいが、勇者とエルフは全面交戦したからな。あれだけの被害を出しながら、勇者に致命傷を与えることはできなかった」
「いやー、エルフさんも強かったっすよぉ。俺が強すぎたってだけで、なんかごめんね」
「待って、待って、夏樹くん! ま、まさか夏樹くんはエルフさんを」
がくがく、と身体を震わせて尋ねてくる祐介に、夏樹はあっさり返事をした。
「うん。めっちゃ殺したよ!」
「眩しい笑顔! うわぁ、エルフさん殺しちゃったの!?」
「だって、強かったから手加減とかできなかったし。手加減するつもりもなかったし」
「勇者の行動は正しい。戦士であるエルフたちに手加減などすれば、さらに恨まれていただろう。戦士たちは、勇者のことを仲間を倒した相手であるが、強さに畏怖と尊敬を抱いている。ただ、戦士の家族は、その、感情としては別なのは理解してほしい」
「それはしゃーない」
日本で戦うならいざ知らず、かつての異世界の戦いにおいて夏樹に手加減など存在しなかった。
故郷に帰るためならどんなことだってすると決めて戦った。
敵がその道を阻むなら、全力を持って殺す。
その思いを胸に戦ってきたのだ。
エルフの戦士たちに家族や友がいるように、夏樹にも家族や友がいる。
対等に戦い、勝利し、夏樹は目的を果たした。
それだけだ。
恨むことも、憎むことも、エルフの戦士の家族には正当な権利である。
「では、さっそく会ってもらおう」
「はーい」
「待ってほしい、ダークエルフロリっ子魔王様!」
「……ギーゼラ・シラーと呼んでほしい」
「で、では、ギーゼラさん、僕もエルフの族長様にお会いしたく」
「ふむ」
「夏樹くんひとりだと万が一のことがあったら、ね? 僕も勇者だし、大親友夏樹くんの盾になるよ!」
「祐介くん、本音は?」
「夏樹くんだけエルフさんとお会いするなんてじゅるい!」
「……祐介くーん」
「ああっ、つい本音が!」
夏樹と祐介が茶番を繰り広げていると、魔王は顎に手を当てて了承するように頷いた。
「いいだろう。エルフも族長他数名戦士を伴うだろう。勇者殿が共になってくれるのであれば心強い」
「なら、俺も行くぜ」
魔王にそう言ったのは、城の探索に行っていた七森千手だった。
電子煙草を咥えた彼は、サングラスを外し、魔王をまっすぐに見た。
「そこの魔族大好き男もそうだが、俺も由良の盾だ。そっちの種族と会うのなら、俺も連れて行ってもらおうか」
「……よき気迫だ。いいだろう」
「なら、決まりだ。散策に飽きて帰ってきた甲斐があったな」
千手がサングラスを戻し、いつもの笑みを浮かべた。
「そんなこと言って、千手さんも僕と同じようにエルフさんが目当てなんでしょう?」
「お前と一緒にすんな、佐渡ぃ!」