作品タイトル不明
22「恨まれている予感じゃね?」
びくん、びくん、している裕介を放置して、夏樹は魔王に声をかけた。
「話は終わった?」
「ああ。ブレイバーズ王国に、早々に宣戦布告の書簡を送らせてもらった。もっとも、我々はすでに戦争中。いまさら宣戦布告というのもおかしな話だが……受け身であったこちらが全力を持ってお前たちを潰すと告げさせてもらった。返事がくるかどうか不明だが、戦いを止めるつもりはない」
「よい感じっすね!」
民が傷つくことを望んでいないことは変わらないのだろうが、魔王は戦う選択肢をした。
難しい選択肢であっただろう。
夏樹に丸投げすることもできたのに、しなかった。
(魔王さんは人間の王様なんかとは全然違うなぁ。だからこそ、魔族サイドにつこうと思ったんだけどね)
人間の王は、民を犠牲にしてでも自国が発展すればいいと思っている。
無論だが、そんな国は発展しない。
王の言う「発展」も、他の国より自分が贅沢したい程度でしかない。
言うまでもないが、王が戦場に立つことはない。
そう考えると、夏樹を利用しようと企んでいたとはいえ、召喚国の王女はまだ戦場に赴くだけマシだ。
――どんぐりの背比べ程度の違いだが。
「それでだな、勇者よ」
「どったの?」
「各種族の長たちが、勇者に目通りしたいと言っている」
「…………なんで?」
「四天王と各種族の長で意見が少し割れているのだ」
夏樹の記憶が正しければ、四天王はあくまでも魔王軍に所属する魔族の中から選ばれる役職だ。
対し、種族の長は、種族全体のトップだ。
それらのすべての魔族を統べるのが、魔王だ。
「やっぱり、俺とは仲良くできないってことかぁ」
「そうではない」
「そうなの?」
「うむ。力を貸してくれることはありがたいと思っている。しかし、勇者が裏切らない保証がない」
「そりゃ、そうだ。でもさ、俺だって魔族に後ろから攻撃されないって保証がないじゃん?」
「もちろんだ。だからこそ、各種族の長がそなたに会いたいそうだ。構わないか?」
「いいよ」
夏樹はあっさり承諾した。
魔王は少し驚いた顔をしたが、頭を下げた。
「感謝する。ただ……」
「ただ?」
まだなにかあるのか、と魔王の言葉を待った。
「戦争であるが故に仕方がないことだが、勇者は多くの魔族を屠った……協力関係を築けることはありがたいが、敵意を向けられることを……理解してほしい」
「……そうだね」
敵対した者は殺してきた。
そのことに関して、後悔はしていない。
地球に帰るために、戦うと決めたのだから。
それ故に恨まれていることも仕方がない。
夏樹は夏樹のすべきことをした。
結果として、悲しむ者がいることは残念だが、夏樹はその辺りは割り切ることにした。
考えたら憂鬱になりそうだし、もう終わってしまったことなのだから、「ああすればよかった」などと考えても無駄なのだから。