作品タイトル不明
21「祐介くんが元気になったんじゃね?」
ソーニャを仲間に加えて、小梅と銀子、鬼三姉妹がガネーシャとどんちゃん騒ぎをしている。彼女たちの世話をするのは、水無月姉妹と一登だ。面倒見の良い、三人は手際良く酒呑たちの対応をしている。
ソーニャの顔見知りのメイドも数人加わり、夜になったが酒盛りの勢いは止まることを知らなかった。
東雲と千手、征四郎と円は魔王城の中を探索しに行ってしまった。
義政少年は、一足先に大浴場を借りてからテントの中で就寝している。
「……いやぁ、想像以上に盛り上がっちゃったなぁ。ぶっちゃけ、買ったお酒足りるかな?」
楽しんでいる小梅たちを眺めている夏樹は、まさか異世界でこんなにも楽しい気分になれるとは思っておらず、笑みが溢れてしまう。
きっと仲間たちのおかげだろう。
「やあ、夏樹くん」
「祐介くん」
夏樹の隣の椅子に座ったのは、囚われの身であった祐介だ。
彼は辛い思いをしたのか、先ほどまで「魔族さんいぇええええええええええええええい!」と叫んでいたが、今は冷静さを取り戻している。
祐介の傷も夏樹のヒールによって完全回復しているので、心身共に元気だ。
今はきちんと学生服を装備して、ノリもいい。
「祐介くん、調子はどう?」
「夏樹くんのおかげで、絶好調だよ。魔力も三割くらい戻ったし、明日には問題なく戦えるよ」
「……うん。でも、あのさ、戦える?」
「大丈夫。正直、僕はさ……日本で安倍さんたちと対峙して自分の理想だけじゃないと知ったことで戸惑いもあったけど――魔族さんのためならこの命をかけてでも戦える」
「……な、なんて強固な意志を持った瞳!?」
夏樹や一登に負けず潜在能力は高いが、戦いに向いていない性格の祐介のことを心配していた。
一登も心配しているが、戦うことへの覚悟は素戔嗚尊が導いてくれたようで、異世界にきてからの彼は落ち着いている。
なので、再び異世界に召喚され勇者として扱われた祐介を、夏樹は一番心配していた。
「正直なことを言うと、人間と戦うことを考えると怖いって思っていたよ。人を殺すんだからね」
「うん」
「でもね――あいつら人間じゃないから」
「ほえ?」
「勝手に異世界に召喚して、夜這いかけて、失敗したら死刑? 無実の罪の僕に石を投げて……あいつら人間じゃないよ!?」
「う。うん。それは同感かな」
「しかもさ、あいつら魔族さんを奴隷にしたり虐げたりしているんだよ――大地の勇者マジおこ案件ですから」
「う、うっす!」
笑っているが、祐介が本気で怒っていることは理解できた。
ここまで怒りに満ちている祐介を初めて見た夏樹は、戸惑いを隠せない。
「僕にもっと力があれば、人間どもを鏖殺して魔族さんたちを救ったのに!」
悔しげに唇を噛んだ祐介だったが、よほど感情的になっているのだろう。
唇を噛み切り、血を流し始める。
「ゆ、祐介くん、ステイステイ! ヒールヒール!」
(……鏖殺とかいいだしちゃった、こわぁ! いやぁ、俺も人のこと言えないけど、温厚な祐介くんから鏖殺とか出てくると、ちょっと怖くなるからぁ!)
きっと小梅たちに言えば「おどれが言うな!」と突っ込まれただろう。
「その怒りは明日に取っておこうよ。魔王さんたちが話をすり合わせて、明日、人間に宣戦布告する予定だからさ」
「え? 宣戦布告したらすぐに戦いになるかな?」
「え? 宣戦布告って先制攻撃って意味でしょう?」
「え?」
「え?」
夏樹と祐介はそろって首を傾げた。
「――勇者よ、ずいぶんにぎやかだと思ったら楽しそうに酒盛りしているな」
「あ、魔王さん」
「褐色ロリ魔王きたぁああああああああああああああああ! 祐介くん的には褐色系はボンキュボンが好きですが、ぺったんこまな板ボディもだいしゅきです!」
「……まな板……そこまで薄っぺらくないぞ!」
「おっと、地球を代表する紳士として淑女に失礼なことを言ってしまいました。僕は、佐渡祐介。大地の勇者であり、魔族大好きなヒューマンです! よろしくお願いします!」
椅子から立ち、地面に膝をつき、恭しく礼をする祐介に魔王は一歩下がってしまった。
「う、うむ。我が名は、ギーゼラ・シラー。魔王だ」
「失礼ながら……ご種族を伺ってもよろしいでしょうか?」
「構わん。我はダークエルフだ」
「ダークエルフきたぁあああああああああああああああああ! ダークエルフの魔王っていいですねぇぇえええええええええええええええええ! ふぅううううううううううううううううううう!」
絶叫する祐介に小梅たちの視線が集まるが「なんじゃ、いつもの発作じゃ」とすぐに気にされなくなる。
一方、目の前で思い切り歓喜の雄叫びをされたギーゼラは戸惑いながら夏樹に顔を向けた。
「……どうやら人間によって辛い目に遭わされたようだな」
「あー、祐介くんはこれが標準です」
「……そうか」
「なんか、すんません」
「いや、いい。少し愉快な感じが母に似ているので好ましい」
「お母さん?」
「そうだ」
魔王から母親の話を聞いたことはないので、不思議そうな顔をする夏樹に、ギーゼラは酒盛りをしているソーニャに視線を向けた。
「言わなかったのか、忘れていたのか知らぬが、ソーニャは我の母だ」
「え? ソーニャさんって魔王さんのお母さんなの!? それって、えっと、ラーラさんの」
「うむ。祖母だ」
衝撃の事実を聞かされ夏樹は驚いた。
魔族は長寿であるため、成長もゆるやかだが、ソーニャが娘だけではなく、孫までいるとは思えなかった。
「――はうっ」
驚いたのは夏樹だけではない。
祐介は驚きのあまりの倒れてしまった。
「ちょ、祐介くん!?」
夏樹が駆け寄ると、祐介は目をカッと見開いた。
「……娘さんだけではなく、お孫さんまでいるロリババなんて――――ぶっちゃけ、かなりアリです!」
「あ、はい」