作品タイトル不明
70「異世界に出発じゃね?」
「本日は、このゴッドが管理することになった異世界のためにたくさんの方が集まってくれたことを感謝しま……ちょっと多すぎません!?」
後光を背負うゴッドが、喫茶店の前で認識阻害をかけながら夏樹たちを数える。
「オーバースペックと言いますか、異世界が悲鳴あげそうなのですが」
「ゴッド、向こうにはアテーナーやアマイモンとかがいるから、万全の状態で挑まないと」
「……そこまで考えてくださいますか」
「うん。異世界を滅ぼせなかったことは、ちょっと心残りだったんだ」
「滅ぼすのは、魔族と人間だけにしてくださいね。星そのものを滅ぼさないでくださいよ?」
「へーきへーき! あ、そうだ。いろいろ買わせてもらいました。これ、領収書とお釣りです」
夏樹は、ゴッドに先日の買い出しの領収書とお釣りを手渡す。
小梅たちがお酒を遠慮なく買っていたが、意外と残ったのだ。
「……お酒が想像以上に多いですね。いえ、小梅ちゃんに買っていいよと言ったので、かまいませんが。まさかビールだけでもこれほど各種買うとは思いませんでした。最近、流行っていますよね、クラフト系」
「俺はお酒わからないです」
「おっと、失礼しました。ゴッド的には夏にあえて冷房の効いていない部屋でキンキンの缶ビールをグラスに注ぐことなく、腰に手を当てて飲むのが好きです。数年後に、どうぞお試しください」
「は、はい?」
ゴッドという存在に、緊張している一同。
例外は夏樹と小梅だけだ。
ちなみに、サタンをはじめ神や魔は見送りにきていない。
夏樹たちが帰ってくると信じているし、仰々しく送り出すようなことではないと考えているようだ。
あとは、ゴッドと会いたくない、という理由もあるだろう。
特に、息子のサタンは嫌がっている感じだった。
「さて、今から異世界へ転移させます。異世界転移ものあるあるに力が付与されたりすることはないので、ご容赦を」
特別がっかりする者はいない。
いきなり力をもらっても持て余すだけだ。
「では、転移を。時間と場所は、夏樹くんが魔王を倒し、魔神を殺してから一週間ほどが経った魔王城です」
「魔王驚くんじゃないかなぁ」
「俺様だったら自分の国を壊滅状態にして、自分と黒幕ぶっ殺した勇者が突然こんにちはしてきよったら絶叫もんなんじゃが?」
「はははは、魔王の心情など考慮する必要はありません。さて、準備ができたので、送りましょう。――では、良き旅路を」
夏樹たちの身体が眩い光に包まれる。
その時だった。
「おーい! 待ってくれぃ! 水無月家のサウナと温泉が最高すぎて、遅刻しっちゃったぜい!」
どすん、どすん、と足音を鳴らして人間の身体に象の顔を持つ神ガネーシャが現れた。
「ちょっと、ガネーシャさん。急に割り込んだら」
「平気だってば、んじゃ、異世界旅行にいきますかい!」
ガネーシャは慌てて夏樹たちにくっつくと、彼も光に包まれる。
ハプニングはあったが、問題なく出発できるだろう。
「――あ」
何か不穏な声が聞こえたが、気にする前に夏樹たちは異世界に転移したのだった。