作品タイトル不明
67「出発の朝なんじゃね?」②
「夏樹さん、僕は異世界制覇するんで夜露死苦っす!」
「あ、はい。よろしくっす」
(中の人は元ヤンか……怖いなぁ)
義政少年とも挨拶を交わし、続いて水無月都と澪に挨拶をした。
「おはようございます、都さん、澪さん」
「おはようございます、夏樹くん」
「おはよ」
ふたりは普段から身につけている制服を身につけていた。
澪とはたまに会っても会話をすることが少ないので、こうやって言葉を交わすのは新鮮だ。
不思議なことに、最悪な出会い方をした都のほうがクラスメイトであることもあって交流が多いのだ。
「澪さんも異世界に行ってくれるんですか?」
「うん。修行したし、夏樹くんへ恩返しもしたいし」
「ありがとうございます」
「うん。頼ってね」
澪は朗らかに笑う。
かつては境遇ゆえに思い詰めた雰囲気だったが、今はそれもない。
彼女の人生はこれから長いので、良い未来を掴んでほしいと思った。
「都さんもありがとうね、澪さんまできてくれるとはびっくりだけど、ありがたいよ」
「もちろんです。お姉ちゃんと私が違う世界にいるとかありえませんからね! そんなことになったらお姉ちゃん不足で死にますから」
「あ、はい。なんかすみません」
都もだいぶ変わった。
かつては姉に冷たい態度だったが、今はすっかりお姉ちゃん大好きっ子になっている。
いや、もともとそうだったようだが、境遇ゆえに素直になれなかったのだ。
その反動でこれである。
「それにしても……濃い面子ですね」
「ははは、都さんも十分濃いから安心して」
「え?」
「え?」
信じられない、という顔をする都に突っ込むのはやめて、夏樹は安倍東雲と安倍円に視線を向ける。
「しののんは学生服が無駄に似合っているんだけど、円ちゃんはなんでスカート!? 昨日、履いたら目覚めちゃったの!?」
「目覚めとらんから! このアホ兄貴がこれしか用意してないって言うんから」
「自分の弟は世界一かわいいんやで!」
「昨晩もいいましたが――アリです」
夏樹は東雲と固い握手を交わした。
「なっちゃんのぼけぇ!」
顔を真っ赤にする円は可愛らしかった。
「さて、問題はお前たちだよ! 鬼っ子ども!」
「な、なんで俺らが問題児みたいになってるんだよ!」
「あたいらが美人すぎるからって、やっかみやがって! あたいはダーリンのものなんだから、変な目で見るなよ!」
「べあべあ!」
星熊童子と虎童子は、ルーズソックスを履いたギャル風の制服姿だ。
彼女たちはいい。
問題は、
「なんでベア童子さんは、限界までぱっつんぱっつんになったセーラー服を無理してきてるのぉ?」
「べあべあ!」
「いや、だってみんなで制服で異世界行こうぜって俺が言ったけどさ、人型で着なよぉ! セーラー服さんが悲鳴あげてるじゃん! 動いたら破れちゃうんじゃね!?」
「べあべーあ!」
「いやいやいや、ストレッチ効いてるとか言われてもさ! ストレッチさんだってそこまで万能じゃないから!」
熊童子は、熊の体躯に無理やりセーラー服を身につけていた。
人間の倍以上ある体格にセーラー服が、破れてしまうんじゃないかと心配になる程ぱっつんぱっつんだ。
なぜその熊状態でセーラー服を装備しようとしたのか謎だ。
「ま、いいか、異世界だし」
「……お前も結構雑だな」
散々突っ込んだ割には「ま、いいか」で流してしまう夏樹に、星熊童子が顔を引き攣らせていた。
「よし! じゃあ、ゴッドに異世界に送ってもらおうか!」
夏樹がそう言った時だった。
「おーい!」
ひとりの少年が大きく手を振り、こちらに走ってくる。
「――蓮くん?」
駆け寄ってくる少年は、小林蓮だった。
かつて夏樹と戦った相手であり、強い霊力から規格外の身体能力を発揮する強さを持つ。
人間で夏樹を追い詰めた数少ない人物でもある。
そんな蓮は、小梅の幼馴染みである天使のアルフォンス・ミカエルのもとで料理人見習いとして働いている。
夏樹はそんな蓮を巻き込みたくなかったので、異世界のことは話していない。
「マモンさんから、夏樹くんたちが異世界に行くって聞いたんだ」
「……マモン、言っちゃったんだ?」
「うん。正直、ついていきたいけど……」
「ううん、蓮くんはせっかくアルフォンスさんのところで働いているんだから、関わることはないよ。向こうの世界、碌でもないよ?」
「ははは、アルフォンスさんとマモンさんからもそう言われたから、僕のできることをしたいなって思って」
「うん?」
蓮は大きな包みを夏樹に渡した。
「これ、お弁当作ったんだ。向こうの世界の食生活がどうかわからないけど、アルフォンスさんとマモンさんと一緒に頑張って作ったから、食べて大暴れしてよ」
「――蓮くん。ありがとう! ありがたくいただくよ! このお弁当食べて、異世界滅ぼしてくるね!」
「……え? 異世界滅ぼしに行くの?」
夏樹が満面の笑みでお礼を言うと、蓮がびっくりした顔をした。
「いやいや、何度も言ってますけど、異世界は滅ぼさないでください!」
喫茶店の中から後光を放ったゴッドが顔を出して、ツッコミをいれてきた。