軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

64「美脚には無限の可能性があるんじゃね?」

家に戻った夏樹たちはそれぞれの時間を過ごしていた。

春子は明るく振るまい、いつも通りだ。しかし、夏樹からすると少し無理をしているようにも見える。

サタンとリヴァ子は、そんな春子と調子を合わせている。

酒でも飲んで気分転換をすればいいとばかりに、酒盛りをしている。

そこに帰ってきた銀子が加わり、鬼たちとみんなでどんちゃん騒ぎとなった。

暗くなるよりも明るい方がいいという思いなのだろう。

夏樹は杏などどうでもいいが、春子は一度は母になったこともあるせいか気にしているようだ。

「友よ、大変だったな」

「あ、ジャックとナンシーさん、おかえり。手伝ってくれてありがとう」

「構わないさ、友と家族のためならできることをするのが当たり前さ」

船から降りて帰宅したジャックとナンシーに夏樹は礼を述べた。

ふたりが宇宙的な結界を張ってくれたおかげで、聖剣さんが力を使っても周囲に被害はなかった。

月読先生の結界に二重にしたおかげで、中学校で戦うことができたのだ。

「お母さんたちが飲み始めたから、ジャックとナンシーさんも飲んでよ。お疲れ様ってことで」

「御相伴に預かろう」

「ふふ、いただきますね」

ジャックとナンシーもお酒は好きなようで、春子たちと毎晩楽しい時間を過ごしている。

こういう時に、未成年で酒の良さがわからない夏樹は少し寂しい。

気づけば東雲も参戦しており、円が苦笑している。

いつもの光景がそこにあった。

(まったく。新たな神々も、由良さんちの日常を壊そうとして……おしおきだべ。というか、アテーナーって見る目ないよねぇ。もうちょっとちゃんとした勇者選べばいいのに)

「なんじゃ、夏樹ぃ。辛気臭い顔をしとるのぉ!」

「小梅ちゃ――酒臭っ!」

「いやー、疲れた後の一杯は沁みるのう!」

「明日は忙しいんだから、あんまり飲みすぎちゃ……いつものことだもんね!」

毎晩お酒を飲んでいる小梅たちに言っても変わらないと苦笑する。

楽しく飲んでいる分なら、文句を言うつもりもない。

楽しそうなみんなを見ているのは好きだし、賑やかな声も好ましいのだ。

「あれ? なんか雰囲気が違うと思ったら、なーんで小梅ちゃんはセーラー服を着てるの?」

「春子ママの現役時代のものじゃ!」

「――小梅ちゃん、私は今でも現役よ?」

「そ、そうじゃった! 俺様ったらお茶目さん! 春子ママの学生時代のセーラー服をお借りしたんじゃ!」

「……スカート長っ! お母さんスケバンだったのか」

「夏樹、流行よ」

「うっす!」

小梅が身につけているセーラー服は、スカートがくるぶしまで長く、上着もおへそが見えそうなほど短い。

一昔前に不良漫画で見たようなスタイルだ。

日本人とはかけ離れた容姿をしている小梅だが、不思議と似合っている。

――しかし、夏樹にはどうしても許せないことがあった。

「小梅ちゃん……お母さんの現役時代のセーラー服が似合っているのは認めるけど、せっかくの美脚を長いスカートで隠すなんて冒涜だよ! ジーパンと違って足のラインも出てないじゃないか! 河童大神様もお怒りだよ!」

「じゃからそんな神様はおらんのじゃが!?」

「みんなの心にいるんだよ!」

「少なくとも俺様の心にはおらんのう」

綺麗な小梅の足はスカートで隠れてしまっていた。

夏樹にとって、例えるなら太陽が隠れてしまった大事件だ。

今まで勇者として異世界で理不尽な目に遭ってきたが、これほど理不尽なことに遭遇したことがなかった。

「昔読んだ漫画の影響で、日本の学校の制服に興味ありありじゃったんよ。スカートの丈の長さがだいぶ違うんが、些細な問題じゃろうて」

「大きすぎる問題だよ!」

「しっかし、夏樹もまだまだじゃな。美脚マイスターの称号を持っておったとしても、所詮は思春期中学生よのう! 目で見えるものしか語れぬとは!」

「――なにを」

「え? 美脚マイスターってなんっすか!? 河童勇者様以上に意味わかんねー称号が出てきたんですけど!?」

ビールを飲んでいた銀子が驚いた顔をしているが、小梅は気にせず夏樹に続けた。

「見るんじゃ!」

その言葉と共に、小梅が立ち上がり鋭い蹴りを放つ。

「――っ!?」

するとどうだろう。

放たれた蹴りの勢いで、スカートがふわりと舞い美脚が現れたのだ。

「これが美脚の真髄じゃ」

「――っ、その発想はなかった! 深い、深いよ! マーベラスだよ! ――嗚呼、主よ」

夏樹は小梅から放たれた美脚の新たな表現に、膝をつき感涙した。

「いやいや、めちゃくちゃ浅いっすよ。こんなんで拝まれた主が気の毒すぎるっす!」

銀子のツッコミが響くが、夏樹の耳には届いていない。

夏樹は、新たな美脚の一端に触れたことで感動していてそれどころではなかった。

「待てぃ! セーラー服ならば、うちの可愛い円にも似合うんよ!」

「――おい、待て、クソ兄貴」

酔っ払っているのか素面なのか、急に東雲が参戦してくる。

彼は目にも留まらぬ速さで、円を着替えさせた。

幸いというべきか、母春子は新たなビール缶を取るために冷蔵庫の前にいたので、東雲の行動を見ていない。

「ちょ!? なんちゅうことをしてくれとんねん!? な、なんでボクがスカートなんて……しかもセーラー服って、うわぁ」

羞恥に顔を赤くしてスカートを抑える円に、夏樹は真顔になった。

「――アリです!」

夏樹に同意するように、一同が「うん、うん」と頷いた。

そんな賑やかな空気の中。

「は、春子しゃんのセーラー服……なんという聖遺物……」

「きんもー」

春子のセーラー服に興奮を隠しきれないサタンに、リヴァイアサンがゴミでも見るような目を向けていた。