軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

63「修行なんじゃね?」②

農業系動画配信者さまたんこと魔族サマエルは、天照大神が作り出した空間にいた。

草木が多い茂る大地に、大の字になって倒れる水無月澪と水無月都を見下ろしながら、苦笑いしていた。

「ふっ、かずたんに会いにこようと考えていたが、まさかこのような形になるとは思わなかった」

「まもんまもん」

ことの経緯は、なんてことはない。

動画編集を終えて一杯飲もうとしたサマエルが、素盞嗚尊が向島市で力を高めたのが分かったので、興味を抱いた。すると、同じ場所に一登の気配があったので、何事かと思い飛んだのだ。

由良夏樹が異世界に向かうことや、新たな神々に目をつけられたことは聞いているが、一登まで異世界行きとは知らなかった。

以前から、一登が強くなりたいと思っていたことはメッセージで聞いていたが、サマエルは戦いなどしないほうが利口だと諭してきた。

だが、一登は力を望んだ。戦う覚悟をするような何かがあったのだ。

ならば力になろうと、同行者である水無月姉妹を鍛えることにした。

「まさかさまたんがお手伝いに来てくるとは思わなかったですよ。都さんと澪さんはお世話になっているんで、いくら修行とはいえ手を出すのはためらいがあったんです」

「……迷いがあれば正しく導けないからな。私もこちらに来る理由となってよかった」

「まもんまもん」

「ですが、いいのですか?」

「なんだ?」

「まもん?」

「一登きゅんを鍛えてあげたかったのでは?」

天照大神の言葉に、サマエルは肩を竦める。

気持ち的には、自らの手で一登を鍛えてあげたいという気持ちは強い。

同時に、強くなる必要もないと思っているのも変わらない。

また、天照大神と同じように、必要とはいえ一登を痛めつけることに迷いがある。そんな心では鍛えられるものも鍛えられない。

素盞嗚尊のやり方は、少々過激ではあるが、間違ってはいない。

死を経験し、恐怖し、生き足掻こうとすれば、必然と力は伴う。

力が手に入らなければ、死ぬだけだ。

実体験という経験ほど人を成長させるものはない。

「ふっ」

「まもんっ」

「私ではかずたんをあのように鍛えることはできない。だが、こうして見守ることならできる。あとで膝枕くらいしてあげよう」

「まもんまもん」

「それはいいですねぇ」

「ところで……」

「まもん……」

サマエルは天照大神の姿を上から下まで眺め、なんとも言えないような顔をした。

「なぜそんなにエグい格好をしている?」

「……まも、ん」

サマエルが指摘するのは、天照大神の格好だ。

オレンジ色のチアガールの衣装を身につけ、ボンボンを持っている。

しかし、せっかくの衣装もふくよかな身体には少々きつそうだ。

「エグいってなんですか!? この魅力的なボディを活かした応援方法だと思って頑張ってるのに! フレーフレー! か・ず・と・きゅ・んっ!」

「おえっ」

「まもっ」

「失礼すぎます!」

「見てみろ、かずたんもリバースしているじゃないか」

「あれは自らの死を自覚したことで反射的に吐いているだけであって、自分の姿を見たから吐いたわけじゃないですぅ! むしろ、自分の姿を見たら前屈みに……おっと、天照大神ちゃんったらお下品なことを言ってしまうところでした」

「いや、はっきり言っただろう」

「まもんまもん!」

「どちらかというと、萎える気がするがな」

「まもん!」

一登の趣味嗜好を尋ねたことはないので、天照大神のチアガール姿が「あり」か「なし」かサマエルにはわからない。

彼女の格好が刺さる人間もいるだろう。

「ところで」

「なんだ?」

「まもん?」

「さっきからずぅうううううううううっと気になっていたんですけど、なーんでマモンさんはアクションカメラを装備してさも当たり前みたいな顔でここにいるんですかねぇ! あと、まもんまもんしか喋ってないですけど、そんなキャラでしたっけ!?」

「そういえば、初対面だったな」

「まもんまもん!」

「いえ、初対面じゃないです。七つの大罪の強欲を司るマモンさんは一応青森に収容中なんですから、目立たないでくださいよ」

サマエルは心底不思議そうな顔をした。

「……なーんで、そんな意味わかんないみたいな顔をするんですかねぇ。こっちが意味わかんないんですが」

「天照大神は勘違いをしている。七つの大罪の強欲を司る魔族マモンは青森で死んだ」

「まもん!」

「はい?」

「こいつは、ある意味新たな神々よりもしゅごい神となったまもんまもんを司るマモンさんだ! ほら、マモン、ご挨拶しろ」

「まもんまもん!」

「言っている意味が全然わかんない! まもんまもんを司るって、まもんまもんってなんですか!?」

天照大神の絶叫が空間に木霊した。