作品タイトル不明
60「一登の決意と修行の始まりなんじゃね?」①
杏が見つかったこと、そしてアテーナーと共に新たな神々の企みに加わったことを知った三原一登は、夏樹たちに返事をすると、その足で水無月家に向かった。
これに驚き、同行したのは七森千手だ。
一登は霊能関係に足を突っ込んでいるが、力的には一般人だ。
潜在能力が高いことは知っているが、今の彼が何かに襲われたら為す術もないだろう。
そんなことになれば、天照大神がどんな行動を取るのか想像できないし、したくもない。
現在の時間は十時。
人の家を訪ねるのは非常識な時間だ。
しかし、一登が天照大神と水無月都に相談事があるとメールを打つと、「気にせず来ていい」と快諾された。
そして、水無月都と水無月澪に出迎えられた。
一登と千手は夜分に訪れたことを謝罪すると、詳しい話は天照大神の前でということとなり、中に通された。
神域に通された四人は、スウェットパンツに「酒万歳!」と描かれたTシャツを着たラフな格好をした天照大神の前に腰をおろした。
「……照子ちゃん、いや、天照大神様、水無月先輩、こんな夜分に突然押しかけてごめんなさい」
「申し訳ありません」
まず、一登と千手は、夜分の訪問を謝罪した。
「いえいえ、自分たちはさっきまで軽い運動をしていたんでいいんですが、かずたんと千手さんという組み合わせは珍しいですね」
「はい。実はお願いがあるんです」
「自分が言うことじゃないっすけど、綾川杏さんのことですかね」
「――はい」
天照大神は、すでに杏の行動を把握していたようだ。
「かずたんには申し訳ありませんが、自分はアテーナーと戦うことはできないんです。戦って負けるとか、勝つとかということではなく、自分は新たな神々や、その仲間になった神や魔族にはノータッチでいることにしています」
天照大神は、太陽神だ。
日本では、上位の神である。
そんな天照大神が、ギリシアの神とぶつかることは良しとしない。
正確に言うならば、天照大神は他の神話とぶつかろうとまるで気にしないが、伊邪那岐命と伊邪那美命に口を酸っぱくして手を出すなと言われていた。
「違うんです。俺は、天照大神様にアテーナー様と戦ってほしいとか、杏のことをどうにかしてほしいわけじゃないんです」
「ほえ? ……というか、照子ちゃんって呼んでください。かずたんに天照大神様なんて他人行儀に呼ばれると、贅肉増えちゃう!」
悲しそうな顔をする天照大神に、水無月姉妹が「他人じゃないですか」「うん、他人他人」と容赦無く突っ込みを入れている。
そんな姉妹の言葉をスルーしている天照大神を見て、きっと日常の光景なんだろうと千手は頬を引き攣らせた。
「照子ちゃん」
「はい!」
「俺を――」
「はい! 喜んでー!」
一登の言葉が始まる前に、天照大神が快諾してしまう。
これには真面目な顔をしていた一登も目を丸くしてしまう。
「……天照大神様、なんでしたら雲海様をお呼びしても構いませんが」
「きっと、溜まっているドラマを見ているから起きているはずかな」
都と澪が雲海を呼ぼうとすると、天照大神が大慌てした。
「ちょ、待ってください! かずたんに対する思いが溢れ出てしまっただけです! ちゃんとお話し聞きますから、おばあちゃんは呼んじゃらめぇ!」
「次はありませんからね」
「はい!」
都に釘を刺され、天照大神は姿勢を正す。
「では、かずたん。続きをどうぞ!」
「う、うん。お願いっていうのは――俺のことを鍛えてほしいんです!」
「ほえ?」
決意に満ちた一登の言葉に、天照大神が変な声を出す。
千手はこうなることをわかっていたので驚かなかったが、水無月姉妹も天照大神と同じく驚いている。
「――良い覚悟だ。この件、俺に任せな!」
ここにはいないはずの、男性の声が響いた。
天照大神の神域を割いて、甚平姿の男が現れた。
「やあ! すさすさだよ!」