作品タイトル不明
58「説明をどうすればいいんじゃね?」②
夏樹は、銀子、一登や千手、東雲、円という「霊能関係者」とサタンやリヴァイアサンの「魔族」。そしてジャックとナンシーという「宇宙人」に連絡をした。
夏樹は、綾川杏と接触したが、戦いの果てにアテーナーによって連れてかれてしまったこと。
また杏は、自らを勇者とし、聖剣という名の魔剣を持っていること。
確実に敵対しており、アテーナーをはじめ、ガープ、アマイモンと異世界へ向かったと思われる。
以上のことを簡単に説明した。
「さて、お母さんたちにどう説明するかなぁ」
「……春子ママにはすまんのじゃが、見つからんかったで押し通すしかないじゃろう」
「だよねぇ」
母と誠司に嘘をつくことは心苦しいが、本当のことを伝えることなどできそうもない。
嘘をつくというよりも、必要以上のことを言わない選択肢を取ることに決めた。
「綾川杏と会ったことは言おう。まったく見つからなかったと言うと誠司さんが朝まで探しそうだ」
「そうじゃのう。ならば、見つけたがしばらく帰りたくないと女友達と一緒におったくらいにしておけば、犯罪に巻き込まれたわけではないと安心できるじゃろう」
「……実際は犯罪どころか神や魔に巻き込まれているんだけどねぇ」
「ま、一般人には知らん世界じゃから、しょうがないのう。俺様的には、夏樹の聖剣がおどれの身体を使ってあのブスを殺してしまった方がいいわけが困ると思ったんじゃが」
「だよね!」
聖剣さんに肉体の制御を任せて戦ってもらったが、杏を殺していたら大変だったはずだ。
夏樹も、杏が周囲の人間を傷つけると言ったので敵認定して殺そうとしたが、一時の感情に任せてしまうと後で揉めに揉めるところだった。
「夏樹……」
「うん?」
「あの小娘は戻ってこれると思うんか?」
小梅はざっくりな言葉で問いかけたが、夏樹には言いたいことはわかった。
「難しいんじゃないかな。もともと自分勝手な子だったような気がするし、話を聞いた限りでも自分が一番可愛いタイプみたいなんだよね。そんな子が、勇者だ聖剣だと力を得て、神と一緒に行動して……増長しちゃって……どうなんだろうねぇ」
三原優斗のように、杏もこちらが何かする前に勝手に自爆してしまったのであれば、死後なんとか理由付けをできただろう。
だが、家族すら持て余していた三原優斗に対し、綾川杏は父親に見放されていない。まだこれから、変われると思っているはずだ。その証拠に彼は杏と向き合おうとした。
杏を殺せば、誠司はきっと引きずるだろう。母も同じだ。そして、もう割り切っていると言っていたが、初恋相手が杏である一登だってきっと傷つくはずだ。
「あー、めんど。しがらみがなかったら簡単に殺すのに」
「あの小娘が一番執着しとる夏樹が、一番なんとも思っとらんというのもなかなか皮肉じゃのう」
「きっと俺って、異世界でどこかおかしくなっちゃったんだと思うよ……お母さん、一登、誠司さんが悲しまなければ、何も考えずにあの子を殺せるんだもん。異世界にちょっと長くいすぎたっていうか、戦いを続けすぎたのかもしれない」
普段は笑ってなんでも乗り越えているが、今は憂鬱だ。
もっと何も考えずに、戦いたい。
夏樹はそう思った。