作品タイトル不明
57「説明をどうすればいいんじゃね?」①
綾川杏、ガープ、学校の神、そしてアテーナーが消えた中学校のグラウンドで、肉体の主導権を取り戻した夏樹は、自らの身体の動きを確かめていた。
「……聖剣さん無茶しすぎ。身体痛いんですけど」
(仕方がないでしょ。あのブスはブス神のブスの加護を持っていたから手傷を負わせるにはそれなりの力でやらないといけなかったのよ)
「……びっくりするぐらいブスって言うね!?」
(え? だってブスじゃない?)
「あらあら、まあまあ! なんて迷いを知らないお声! なっちゃんもびっくり!」
夏樹も口が悪い方だが、聖剣さんほどではない。
オリュンポス十二柱のビッグネームであるアテーナーにブスという勇気はない。
「おーう! 終わったようじゃのう!」
「あ、小梅ちゃん! ちーす!」
「ちーっすじゃ! にしてもよかったんか? 俺様は空中というか、見つからんようにお星様が輝く空の上におったんじゃが、その気になれば突撃できたんじゃと思うんじゃが」
夏樹は小梅に手出し無用を頼んでいた。
彼女の力を疑ってなどいないし、むしろ頼りにしている。
だからこそ、向島市ではなく、異世界で全力を出して欲しかった。
下手に顔合わせして対策を練られるよりも、初見で全力でぶつかってもらった方がいい。
「異世界でガチバトルするときにまで力温存しておいて欲しいんだ。それに、向島市が壊れたりしたら嫌だからさ」
「そうじゃのう。あのブス娘はさておき、ガープやアテーナーと、学校の神とかと戦うことになると、俺様もかつてないほど本気ださんといかんのう。――というか、学校の神ってなんなんじゃ!?」
「さあ? 知らないし、知りたくもないよ! 絶対怖い神様に違いない! 今までに会ったどんな神様よりも恐ろしかったよ!」
夏樹の脳裏には、坊主頭にされて教科書を読み耽る自分の姿が浮かんだ。
ぞわり、とする。
「……学校の神に怖がる要素がないんじゃが。まあ、サボり魔からすると怖いんじゃろうなぁ」
「言っておくけどね! 俺がサボりたくてサボっているわけじゃないんだからね! イベントさんが連日やってくるから、相手してあげてるんだから! べ、別にイベントさんのためとかじゃないんだからねっ、変な勘違いしないでよねっ!」
「だーれにツンデレしとるんじゃ!?」
てしん、と夏樹の頭を小梅が引っ叩いた。
「それはそうと、こういうことを言うんは気が引けるんじゃが……ガープの奴、俺様の知るガープよりも強くなっとるんじゃが」
「なるほど。ガープが、ガァアアアアアアアアアプくらいにはなったってことか」
「そうじゃな。アマイモンももともとかーなーりー強い魔族じゃったし、その両者と戦うとすると……アテーナーより面倒かもしれんのう」
「うわぁ、めんどー」
アマイモンの力は正直底が知れない。
サタンやリヴァイアサンに会った時のように、まるで深淵のような未知なる力を持っている。
ガープもアマイモンほどではないが、七つの大罪の魔族であるマモン以上の力があった。
今まで素盞嗚尊や、雷神トール、茨木童子という規格外な相手と戦ってきたが、彼らと同等か、それ以上の力を持つ敵が出てきたことに驚きしかない。
アテーナーもアマイモン級の力を持っていることをなんとなくわかっていた。
「……いやぁ、なっちゃんピンチかもねぇ。異世界を蹂躙するだけならいざ知らず、ガープ、アマイモン、アテーナー……あとぜっくんか。他にもいそうだし、めんどー!」
こういう時に力が十全使えないことが苛立たしい。
肉体的に成長することはすぐにできないのだが、もし異世界で培った力がすべて使えていたら、戦っては疲弊して回復し切らないうちに戦うなどということはないだろう。
「俺様に任せとくんじゃ!」
「小梅ちゃん?」
「アテーナーは俺様が相手をしてやるんじゃ。あのクソ女神は数百年前、俺様にマウント取ったことがあったんでのう。いつかボコしてやろうと思っていたんじゃが、さすがにギリシア神話に喧嘩売ったら面倒ごとになると自制しておったんじゃよ。しっかし、まさかアテーナーが新たな神に与するとか、俺様に大義名分を与えてくれるとは……くけけけけけけけけ!」
「小梅ちゃん! ヒロインがしていい笑い方じゃないよ! 邪悪だよ!」
「おっと、俺様としたことが! とにかく、アテーナーは俺様に任せておくんじゃ!」
「でも」
「なーに、俺様の本気をついに見せる時が来たんじゃよ。小梅様に任せておくんじゃ!」
「――とぅくん!」
美少女を超えてイケメンのような顔をする小梅に、夏樹の中に眠る乙女心がとぅくんとときめいた。
「そんなクソ茶番はどうでもいいんだけど、それで、あんたはあのブスを探しに外に出ているはずなんだけど。逃しちゃったことを親にどう言うの?」
「――あ」
「どうするんじゃ!?」