作品タイトル不明
55「月読先生と学校の神じゃね?」①
学校の神は、学校に通う子供たちの希望や夢というプラスの感情。そして未来に対する不安、いじめへの恨みなどのマイナスの感情から生まれた神である。
また、日本の学校の想いから生まれた神だ。
だが、神としての力はさほど強いものではない。
そこで、学校の神は日本各地の学校を周り、学校に蓄積される「想い」を吸収した。
長い時間をかけて、力を得た学校の神は、各地を転々としながら、子供たちを見守った。
時には学校をサボる生徒を学校に行くように説得し、いじめをする生徒を懲らしめ、挫けてしまった生徒を支えた。
親身になって生徒と触れ合い、幸せだった。
――しかし、いつだって幸せな時間は続かない。
人ではない学校の神は、長くひとつの場所にいると、「誰だ?」と疑問に持たれてしまう。
きっかけは些細なことだが、人ではないと知られ、追われる。
その地の人に気づかれなくとも、霊能力者がどこからかやってきて排除しようとする。
――私はただ生徒と触れ合いたいだけなのに。
些細な願いが叶わず、言葉を重ねても届かない。
結果、学校の神は絶望した。
長い時間をかけて日本中の学校と生徒の想いを得た学校の神は、生徒と触れ合うことには必要のない「強さ」を持っていた。
霊能力者を撃退したことで、さらに強い霊能力者が来る。
生徒を巻き込まないように、生徒の家族を巻き込まないように、学校の神は孤独に生きることにした。
毎日当てもなく歩き、彷徨う。
すれ違う子供たちの元気な声を聞くことがわずかな支えだった。
そんな時、新たな神々と出会った。
自らが新たな神々であることも知った。
新たな神々の言う新たな神話には興味はなかったが、生徒と触れ合う場所が欲しくて与した。
――名もなき新たな神の半生だった。
■
「……さすが神殺しの剣だ。反射であの娘を庇ってしまったが、想像以上のダメージを受けたな」
「それはお気の毒です」
「――っ」
学校の神は、アテーナーと馬が合わず普段の行動は別にしている。
絶望の神は鬱陶しいが、同じ新しい神々として話ができる。
ガープとアマイモンも馴れ合いはしていないが、顔を合わせば一緒に食事に行くくらいは関係は良好だ。
他にも絶望の神に与する魔族や神もいるが、それぞれ個性が強いので馴れ合いはないが、協力関係としてそれなりにお互いを認めている。
だが、アテーナーだけが、自分が一番と思い込んでいるので相性がすこぶる悪かった。
ゆえに、単独行動をしていたのだが、それがまずかった。
「良い夜ですね」
「……月読命」
「はい。月読命です。ようやく新たな神々の新しい個体と会えましたね。絶望の神の末路はもう予想できるので興味がなく、愛の女神は人間に害を与えるつもりは……まあ彼女の範疇の中ではないようなので良しとしておきましょう。他にも目をつけている神はいたのですが、私はどうしてもあなたと会いたかった」
「私に? よほど月読命は私たち新たな神々を殺したいようだ」
「無論。私を影の薄い神などとほざいた絶望の神は許しませんし、それを笑った神々も絶対に殺します」
「清々しいほど私怨だ」
「ええ、私怨ですとも。逆に言えば、興味のなかった新たな神々は、私のような面倒な神をたった一言の失言で敵に回したのです。実に愚かだ」
「違いない。お前も大概だとは思うが」
月読命は、グレーのスーツに眼鏡をかけた温和な男性だ。
白髪が目立つが、見事に人となっている。
「……私の前に姿を現したということは、殺すつもりだろう」
月読命が新たな神々を敵視していることは有名だが、確実に神殺しができる状況下でなければ彼が現れないことも知っている。
絶望の神が月読命に会っても、彼は確実に殺す手段を用意していなかったから戦いにならなかった。
ならば、こうして自ら学校の神の前に現れたということは。
――月読命は薄い笑みを浮かべた。