作品タイトル不明
51「想像を超えた神なんじゃね?」②
(な、なんだってぇえええええええええええええええええええ!?)
聖剣さんに肉体の主導権を渡している夏樹は、心の中で大絶叫した。
まさか目の前の、「ザ・委員長」みたいな少女が、学校を司る新たな神々の一柱だとは思わなかった。
神であること、新たな神々であることは察していたが、まさか学校を司っているとは予想もしていなかった。
「……私の正体などどうでもいい。由良夏樹の精神を切り替えろ。私は、由良夏樹に用がある」
「嫌よ。なんで私があんたみたいな神の言うことを聞かなきゃいけないのよ」
「……私は由良夏樹を更生させると決めた。まずは服装からだ。だらしない格好はせず、髪は七三分け。数日私に預ければ、尊敬してやまない人物は二宮金次郎と福沢諭吉ですと反射で言えるよう教育してやる」
「それ、調教じゃない?」
「不埒なことを言うな。全国の生徒はそうあるべきだ。無論、スマホも没収」
「……あんた令和生まれじゃないでしょう。ちょっと古くない?」
「まさか異世界の聖剣に生まれた時代がどうこう言われると思わなかった」
「つーか、指導が必要なのは夏樹よりもそこのブスでしょう!」
「……この娘は学校にきちんと通っている。少々、精神面で不安はあるようだが、私の管轄外だ」
「神っていうのはどいつもこいつも! 適当じゃない!」
(聖剣さん頑張って! あの自称義妹はどうでもいいから、とにかくこの神様ぶっ殺して! 優等生にされちゃう!)
(それはそれで不都合あるの?)
(ないけど! ないですけど! 俺が真面目になったら……俺じゃなくならない!?)
(そうね。真面目な優等生は異世界で嬉々として命を奪わないわね)
(別に嬉々としていたわけじゃないけどね!)
(いいわ。異世界の夏樹と違う、今の愉快な夏樹のほうが、その、わ、私は気に入ってるから。べ、別にあんたのために戦ってあげるわけじゃないんだからね!)
(ツンデレあざーっす!)
心の中でやりとりをして、夏樹は聖剣さんに任せることをした。
夏樹と違い、聖剣さんの方が聖剣を使いこなせる。
当たり前だ。自分が自分を使うのだ、使いこなせないわけがない。
しかし、やはり肉体は夏樹のものなので、すべての力を使えるわけではない。
(聖剣さんなら、同時は無理でも片方ずつなら倒せる、はずなんだけど)
学校を司る神も、ガープもすべての力を見たわけではなく、未知数だ。
若干の不安が夏樹の中にあった。
「待って、この女は杏が殺すんだから」
黙っていればいいのに、傷を回復してもらった杏が立ち上がる。
「おい、やめておけって。いくら異世界の剣を持っていて、アテーナーからも力を与えられたからって、覚えたてが勝てる相手じゃないって理解しろよ。由良夏樹はガープさんに任せておけって」
「待って、この女は杏が殺すんだから」
「あ、はい。これは、戦わせるまで延々とループするやつですね。わかります。はい、どうぞー!」
なぜか杏に強く出ることができないガープは、引っ込んでしまう。
夏樹は内心、使えない、と思ってしまう。
「待っててね、お兄ちゃん。すぐに悪霊から解き放ってあげるから! そして、杏と一緒に素敵な日々を送ろうね」
(聖剣さん、俺はいい加減、この女が怖くなってきたよ!)
様々な感情を煮詰めたような目をした杏が、瞬きもせず夏樹を見つめる。
その目に、さすがの夏樹も怯えた。
「やれるもんならやってみなさいよ。私は、あんたみたいなブスに手心なんて加えないから、三枚に下ろしてあげる」
「……杏のことブスって言わないでよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ひぇっ」
ガープが情けない声を上げると同時に、再び聖剣さんと杏の戦いが始まった。
学校を司る神は、自分のすべきことを邪魔されないのであれば構わないとばかりに、杏に戦いを譲るようだ。
「さっき、痛い目にあったのに懲りないブスね。次はちゃんと殺してあげる」
地面を蹴った聖剣さんが、杏の背後に周り聖剣を薙ぐ。
首を狙った殺意のある一振りだった。
誰もが杏の首が宙を舞うことを予想した。
――だが、その予想は大きく外れた。
聖剣と魔剣がぶつかり、火花が散る。
「……杏だって勇者なんだから、やられっぱなしなわけないじゃん」
霊力ではなく、神力を発した杏が魔剣を握り笑った。