作品タイトル不明
50「想像を超えた神なんじゃね?」①
刀身は女性の胸を貫通し、杏の右肩を刺した。
聖剣さんは、夏樹に変わって杏を殺すつもりだったので胸を狙ったのだが、先に刺された女性が身体を捻り杏への致命傷を避けたのだ。
「あら、お見事」
「……あなたのような剣に褒められることを光栄に思う」
剣が引き抜かれると、女性の胸から血は流れ、着ている服も赤く染めていくが、死には至らないらしい。
平然とまではいかぬとも、わずかに顔を顰めた程度だ。
正体は不明だが、神力も持っている以上、神なのだろう。
いくら聖剣が力を封じられている状況とはいえ、神であっても殺せる力を持つのだが、女性はなかなか上位に位置する神なのだろうと察することができた。
しかし、杏は違う。
「痛いっ、痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃいいいいいいいいいいいいいいい!」
いくら神に力を与えられて勇者になろうとも、剣に貫かれれば痛い。
魔剣を持とうとも、痛みに耐性がなければ、のたうち回ることしかできない。
「……容赦ねえな、ほれ、これで治しなよ」
ことの成り行きを見守っていた、否、夏樹の力を値踏みしていたガープが、杏を気遣いズボンからチューブを取り出す。
しかし、杏はガープの好意を手で払い落とした。
「接着剤でなんとかなるわけないじゃん! 魔法でもなんでもいいから、治してよ!」
「すまんすまん、つい」
「つい!?」
「叫ぶと血が出るぞ、ほら、回復してやるから静かにしとけよ」
ガープは杏の治療に取り掛かる。
聖剣さんとしては、杏を殺しておきたいのだが、女性が許さないようで立ち塞がっている。
一見、隙だらけであるが、耐久性はすでに確認済みだ。
そろそろ聖剣さんが夏樹の身体を使う時間も終わってしまう。
聖剣さんが夏樹の身体を使うことのできる条件は、契約もあるが、双方が心から信頼し合ってなければ不可能だ。
それでも限界はある。
今も、夏樹の魔力は消費され、聖剣さんも力を使い続けている。
全力を出せない夏樹よりも、聖剣の力を引き出すことができるが、それだって限度がある。
「――面倒臭いわねぇ。ていうか、あんた何? 新たな神々ってことなんだろうけど、何の神様よ?」
神力と魔力の差があるが、対峙しているだけでも女性がガープと同等かそれ以上の力を持っていることはわかる。
正直、ガープと同時にかかってこられたら、面倒だ。
「私が誰か、だと? 気になるのなら教えてやろう」
女性の身体が、神々しく光る。
眩い光に包まれた彼女の肉体は、幼くなり杏と変わらないか、少し年上になった。
前髪が眉の辺りで揃った長い黒髪を三つ編みにし、黒縁眼鏡をかけて、深い紺色のセーラー服を着ている。
ローファーを履き、白い靴下は三つ折りにされていた。
「え? なにそれ?」
戸惑う聖剣さんに、少女は眼鏡を光らせて告げた。
「私は学校を司る神。名は好きに呼べばいい。私は、学校をサボってばかりいる生徒を仕置きするという崇高な使命を持つ新たな神だ!」
「はぁあああああああああああああああああああああああああああ!?」
■
「――なん、だと」
「え? ガープさん知らなかったの!?」
「知るわけないだろう! 学校を司る神って何!? というか行動理由が学校をサボる生徒をお仕置きって、体罰は駄目って知らねえのかぁああああああああああああああああ!」
「そういう問題じゃないでしょう!? 違うよ、ガープさん! もう、なんで杏が突っ込まなきゃならないのよ!」