作品タイトル不明
36「ガネたんも来るんじゃね?」
絶望の神ぜっくんとアテーナーが消え、夏樹は怒りを完全に発散できず苛立っていた。
「この怒りをどこにぶつければいいんだ? 水無月家に乗り込んで天照大神様の酒樽を全て破壊しても許されるんじゃないか?」
「いやいやいや、さすがに自分も酒樽はもってねーです!」
夏樹の物騒な呟きに反応し、天照大神が現れる。
彼女は運動でもしていたのだろう。
上下ジャージで、タオルを首にかけている。
「いやぁ、まさかアテナさんまで新たな神々につくとか意味わからないですね」
「どうも、天照太神様」
「どうもです。いやー、助けに来たかったんすけど、アテナさんの結界っていうか、盾アイギスに阻まれちゃって。助けられず申し訳ないです。あれ? 今、変な呼び方しませんでしたか?」
「気のせいです、気のせい、気のせい」
「……あれぇ? まあ、いいです。まず、謝罪を。基本的に私は天照大神としてではなく、土地神として仕事をしています。私の管理する土地に、神や魔が無断に入ってきたとしてもそれ自体は悪いことじゃないんです」
土地神の一番の仕事は、土地の管理だ。
汚れを払い、災害が起きないように努める。
それでも限度はあるが、できる限りのことに自らのリソースを割く。
いくら神でも自然には勝てないのだ。
「絶望の神は以前にも月読が接触していましたけど、まさかアテナさんまで与するとは……神も暇なんですかねぇ」
「……暇そうな天照大神様に言われちゃったよ」
「いやいや、自分は暇じゃないですから。仮にも太陽司っていますからね、仕事は多いんすよ。……大半はママがやってくれていますけど」
「うわぁ」
「……話を戻しますけど、自分は基本的に新たな神々にはノータッチです。相手にするだけ無駄だと思っているんで」
天照大神は、新たな神々に対してドライな感想を抱いていた。
「月読先生はあいつらをぶっ殺そうって勢いなのに」
「月読は新たな神々にスカウトされた時に、存在の薄い神って言われたのでブチ切れているだけです」
「それはしゃーない」
「あと、アテナさんに関してですが、私がぶっ殺しちゃうのはまずいんすよ。派閥とかいろいろありますから」
「神も面倒臭いですねぇ」
「本当ですよ。だから、人間が神殺しするのが一番です。というわけで、任せました」
「ちょ――いや、別にいいか。あいつらは俺のお皿を割ったから自分から殺してくださいって言うほど苦しめる予定だし」
「……わかっていたつもりですけど、夏樹くん怖いですねぇ」
「そんな、褒めないでくださいよ」
「褒めてねーです!」
照れる夏樹に、天照大神がツッコミを入れると、真面目な顔をした。
「神や魔族は割と自由にやっていますが、アテナさんのような存在が新たな神々に与したのは問題ですね」
「そうなんだ?」
「神話に不満を持つ者がいるのもしゃーないんですけどね。中には、主神になりたいと企む神もいますし、現代でも神同士で小競り合いすることもあります」
「勝手にやってろって感じー」
「ですよねー。ただ、最近は新たな神々の動きが活性化し、賛同する神や魔族も増えてきました。今度、寄り合いがあるのでそこで本格的な話し合いをしてみます」
「……天照大神さん、寄り合いとか出られるんだ」
「ふっ、夏樹くんも甘いっすね。今はネットがあるので問題ないっす!」
「さすが引きこもりの神様!」
「どやぁ! ――っ、そろそろ三分経つので、戻りますね。あ、ガネーシャさんは水無月家でお預かりしますのでご心配なく。さすがに完全な人化ができない神を一般家庭にお送りすることもできないんで」
「助かります!」
「いえいえ! じゃあ、明日の異世界行きに合わせてガネーシャさんを送るんで、仲良くやってください! あと、くれぐれも一登きゅんに怪我やトラウマになるようなことはさせないでくださいね!」
「連れてくなとは言わないんだ」
「一登きゅんが行くことを決めたのであれば、――自分は黙って帰りを待つだけです」
まるで理解のある妻のような言葉を言うと、天照大神は手を振り消えていった。
「おや?」
夏樹は天照大神の残した言葉に首を傾げる。
「ガネたんのことなんて言ってた? もしかして、ガネたんも異世界行くの!?」