軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33「絶望の神に絶望させられたんじゃね?」①

結局、大量の水をスーパーとドラッグストアを数軒回って購入した。

他にも、米、レトルト食品、缶詰、ライスクッカー、土鍋、鍋、ガスコンロとガスボンベ、チョコレートをはじめとした甘味や携帯食品も忘れずに購入した。

ゴッドは結構な額を渡してくれていたので、お金は余ったのだが、問題はやはりお酒だった。

そこで小梅がゴッドに電話をかけて「ねえねえ、おじいちゃん。小梅、お酒買いたいなぁ」とおねだりすると、ゴッドは「もちろん買ってください! 他の皆さんのお酒も一緒で構いませんよ! あ、領収書だけはお願いしますね!」とすんなり了解が出たので、大人たちは自重せずに残ったお金で買える範囲でお酒を買い込んだ。

「……なんか俺も買わなきゃって思ったから栄養ドリンク買っちゃった!」

「栄養ドリンクって意外と高いんやねぇ。手頃なもんもあるんけど、するやつはかなりのお値段や」

円は糖分が多めに入った飲料は苦手なようで、炭酸水を一箱買うだけだった。

夏樹は魔力を消費すると糖分を摂取したくなるので、甘い炭酸飲料を箱で買う。

すべてをアイテムボックスに入れると、買い物は完了だ。

「レシートめっちゃいっぱいだなぁ」

「ゴッド泣くんちゃうか?」

「経費としてこのレシートを誰に提出するのかめちゃくちゃ気になるけど、知ったらいろいろ後戻りできなさそうで怖い!」

「せやね!」

長い買い物を終え、帰路に着こうとして夏樹は思い出した。

「せともの屋さんにまだ行ってないじゃないか!」

「……なっちゃん?」

「円ちゃん、悪いけど、お酒抱えて喜んでるダメな大人たちと一緒に俺の家に行ってて!」

「ボクもついていこうか?」

「ありがとう。でも、大事なお皿だからね。ひとりで集中して吟味したいんだ」

「あ、うん。いってらっしゃい」

「じゃあ、あとはよろしく!」

少し呆れ顔の円に手を振って、お酒に頬擦りする大人たちを置いて夏樹はせともの屋さんに走った。

三十分が経ち、夏樹はせともの屋さんから小ぶりなお皿を持って出てきた。

「こ、こんなフィットするお皿と出会えるなんて……奇跡だ。この素晴らしき出会いに感謝を!」

皿を掲げ膝をつく姿は、まるで一枚の絵画のようだった。

「さーて、少し値が張ったけど、記念すべき最初の一枚だからね。今日は一緒にお風呂入って、同じベッドで寝ようねぇ」

まるで恋人でも抱きしめるようにお皿を腕で包み込み、家路を急ぐ。

足取りは軽く、今にもスキップしそうだ。

――そんな夏樹は空間ごと切り離されて、結界内に閉じ込められた。

「あれ?」

油断していたわけではない。

ガープとアマイモンと邂逅したばかりなのだ。周囲には気を遣っていた。

素敵なお皿を購入したことで、気は緩んだかもしれないが、気を抜いたつもりはない。

「ぜーっぜっぜっぜっぜっぜっぜっぜっ、ごほっ、げほっ、ごほっ、ごほっ!?」

個性的な高笑いと共に、誰かが豪快に咽せた。

「……また来やがったな。今度はどこのマモンだ!?」

「はぁ、はぁっ、ごほん。――否! 否否否否否否否否否否否否っ! 私はマモンではない! ――絶望を司る神……ぜっくんっ、だ!」

「テンションうぜぇ」

燕尾服を身につけ、シルクハットを被った男性が夏樹の前に現れ仰々しく礼をする。

「もしかしなくても、新たな神々ってやつでオーケー?」

「おぅけぃ! おーけー! ふぅうううううううううううううううう!」

「うぜえなぁ」

無駄にテンションの高い絶望の神ぜっくんに、夏樹は心底鬱陶しそうな顔をした。

「悪いんだけどさ、今は忙しいの。どうせ宣戦布告とかでしょう? 後にしてくれます?」

「まあ、待ちたまえっ! 由良夏樹君! 君がうっきうきな時だからこそ、水を差すように登場したの、さっ! 絶望の神ゆえに!」

「うぜえ神に転職しろ!」

「ひどい、絶望しそう……」

「マジでなんなんだよ、あんた」

ぜっくんは、にたりと笑うと夏樹の問いに攻撃で返した。

「ぜっくんビーム!」

技名はふざけているが、神力の宿った光の筋が幾重にも生まれ、放たれる。

「しまっ」

夏樹は反射で応じてしまった。

まだ眠っている聖剣さんの代わりに、虚空から魔剣を引き抜き襲いくる閃光を魔力の斬撃で相殺してしまったのだ。

ぜっくんが絶望の神に相応しい邪悪の笑みを浮かべた。

――がしゃんっ。

剣を振るったことで、バランスを崩し、夏樹が大事に抱えていたお皿が地面に落ちて割れた。

「――あ」