軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31「勇者パーティーに仲間が増えたんじゃね?」

由良夏樹は異世界帰りの勇者である。

地球帰還後は、土地神みずちをはじめ、雷神トールや、古き鬼である茨木童子とも死闘を繰り広げてきた。

そんな夏樹でも、「すさすさ仮面」なる存在を知らなかった。

「……まだ俺の知らないファンタジーがあるんだね」

「なっちゃんもわからんのやね」

「うん。だけど、俺の危機を知って円ちゃんたちに伝えてくれるなんて、きっと良い人だと思うよ」

「……せやとええね」

夏希と円は謎のすさすさ仮面に関して、さらりと流してしまう。

不思議なことに、円の隣では東雲がお酢を口に入れたような顔をしていた。

「しののん、どうしたの?」

「あー、いやー、なんでもないんよ。それよりも、夏樹くんはほんまに危機的状況にあるんでええんかな?」

東雲の疑問に、夏樹は首肯した。

「俺が異世界に召喚されたってことは話したよね」

「覚えとるよ」

「京都で一緒にいた佐渡祐介くんも異世界帰りなんだけど」

祐介の名を出すと虎童子が「うわぁ、あいつかぁ」と嫌そうな声を出したが、聞こえなかったことにする。

「祐介くんがまた異世界に召喚されちゃってね。助けに行くついでに、クソみたいな異世界を滅ぼす任務をゴッドから承ったんだ」

「――はい?」

東雲が大きく目を見開く。

彼だけではなく、円も唖然としている。

「ちょ、ちょい、待ち。……すさすさ仮面でお腹いっぱいなんやけど、聞いておかないとあかんような気がするから聞いておくんやけど、ゴッドってあのゴッドでええんかな?」

「そうそう。あのゴッド! あ、よかったら、会う?」

「いやいやいや、ええです。ええですから。いくらなんでもゴッドに会うなんてしたら、自分の胃に穴が空いてまうよ!」

「そう? 後光が眩しいけど、良い人だよ? あ、円ちゃんはどうする?」

「ぼ、ボクも遠慮しとくんよ」

「そっか。会いたくなったらいつでも言ってね」

談笑していた夏樹だったが、スマホを見て慌てる。

「あ、もうこんな時間だ! ごめんね、今から異世界に行くための買い出しにスーパーとドラッグストアとせともの屋さんに行かないといけないんだよ!」

「待ってや、なっちゃん! ボクらもここに来た以上、なっちゃんの力になりたいんや!」

「え? ま?」

「もちろんやで!」

「……ありがとう、円ちゃん。ううっ、俺は良い親友を持ったなぁ。よし! じゃあ、今夜はウチに泊まってよ! そして、明日、みんなで異世界だ!」

「なっちゃんのためなら、異世界なんてボクが滅したる!」

「さすが円ちゃん、頼りになるぅ!」

「せやろう!」

ドヤ顔をする円を見て、東雲は「きっと自分も行くんやろうなぁ。まあ、初代様と道満様も異世界に行ったことあるようやし、修行やと思うことにしよ」と覚悟を決めた。

しかし、納得しなかった者もいる。

「ちょっと待て! まさか俺らも、異世界に行くのか!? 俺は悪役令嬢に転生したいんだけど!」

「スターベアさん……まさか、異世界ものをご存知!?」

「ご存知だとも!? 悪役令嬢に憧れてるぜ!」

「……でも、ごめんね。今回は転生じゃなくて、転移なんだよ」

「そっかぁ、転移かぁ」

「それに悪役令嬢なんていないよ。少なくとも人間側は悪役令嬢に倒されそうなクズ令嬢ばっかりだよ」

「マジかよぉ。テンション下がるわぁ」

「いやいやいやいや、姉貴! なにふざけたこと言ってんだよ! 悪役がどうこうの前に、異世界行くのは確定かよ!」

悪役令嬢を希望した星熊童子が、夢が叶わぬと知り残念がると、虎童子がそうではないとツッコミを入れる。

「あたいはごめんだぞ! なんで異世界なんて、よくわかんねえところにいかなきゃならねえんだよ。しかも、あの変態野郎を助けにとか、ふざけんな!」

「――千手さんは強制参加だよ?」

「馬鹿野郎! 見知らぬ世界で孤独に苦しんでいる人間がいるのなら、見捨てられるわけがねえだろ! 異世界の奴らなんてあたいに任せおけ!」

「さすがタイガーさん! 頼りになるぅ!」

「そ、それでだな、ダーリンに虎童子さんは良い鬼だって言っておいてくれるか?」

「言っちゃう、言っちゃう!」

「この虎童子様が異世界を恐怖で支配してやんよ!」

これで虎童子が仲間になった。

異世界を潰すには数が多い方がいい。

夏樹は、にやり、と笑う。

「べ、べぁ」

「ベアさんは何言っているかわからないけど……よかったら、これをどうぞ」

夏樹がアイテムボックスから取り出したのはマヌカハニーだった。

しかも、高い抗菌作用を期待される「UNF25+」の良いやつだ。

「べあべあべあ!」

「会話ができなくてもわかるよ。その瞳に熱意を感じる!」

「べぁあああああああああああああああああああああ!」

マヌカハニーを受け取った熊童子は、瓶を頭上に掲げて喜びの咆哮を上げた。

夏樹はちらり、と地面に座り込んでいる金童子を見た。

「え? 俺も異世界に行く流れなの?」

「ううん。お仕事あるなら、そっちを頑張って」

「ありがとう! 頑張ります!」

一生懸命働いている人の邪魔をするほど夏樹は無粋ではない。

「よし! じゃあ、とりあえずみんなでスーパーに行こう!」