作品タイトル不明
23「ビッグネームの洗礼じゃね?」③
「まさか、夏樹くんだけではなく、三原一登くん、水無月都さんまでゴッドに会いにきてくれて嬉しいです。リリスさん、三人に一番いいお茶を」
夏樹たちは、相変わらず後光が眩しいゴッドに誘われるまま、喫茶店の中に入り、リリスに挨拶をしてから奥の席に腰を下ろした。
ゴッドが占領しているテーブルには、ノートパソコンとタブレットが置いてある。
(まさかとは思うけど、喫茶店でお仕事中とか? いやー、まさかゴッドがそんな人間みたいなことをして、ないよね?)
「おっと、パソコンが邪魔でしたね。申し訳ありません。ここ数日、徹夜なんです。ほら、隈までできてしまっているんですよ」
「……後光が眩しくて見えねーっす」
「ああっ、そうでした。煌めいていて申し訳ありません」
きらん、とおそらく口元と思われる場所だけ光が強くなった。
(ゴッドうぜぇええええええええええええええええええええええええええ!)
相手が相手なので口には出さないが、夏樹は間違いなく自分の頬が引き攣っているのだろうと自覚する。
そんな夏樹の心情など察することなくゴッドは好きに話し出す。
「いやー、夏樹くんが召喚された異世界ですが、なかなか困ったことになっていましてねぇ。管理していた魔神の代わりにゴッドが就いたことで世界の崩壊こそ止まりましたが、このまま魔族と人間の戦いが続けば、いずれ禁忌に手を出し、世界は滅びるでしょう」
「なんか大変っすねぇ。滅びたいから馬鹿なことしているんですから、放っておけばいいんじゃないですか?」
「人間や魔族が滅びる分には問題ありません。しかし、星が滅びることは看過できないのです」
一登と都は、ゴッドが人間と魔族が滅びていいとばかりの態度に、絶句している。
夏樹はすでに二度会っているし、小梅やサタンからゴッドに関していろいろ聞いているので驚かない。
「ゴッドがごめんなさいね。冷たいお茶よ」
「ありがとうございます、リリスさん」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとうございます、リリス様!」
リリスが、アイスティーを夏樹たちの前の置き、微笑んでくれた。
小梅に似た美人だが、パンツルックのかっこいい系お姉様なリリスに夏樹だけではなく、一登も都も緊張してしまう。
「あの、リリスさん」
「なに?」
「……私の前に置かれたグラス……空っぽなんですが」
「グラスを出してあげただけでも感謝してほしいわ」
「……はい」
「せめてツケを払ってから注文してちょうだい」
「……すみません。お給料が入ったら支払いますので。せめて、お水を。ゴッド的な立場もあるので」
「はぁ」
(ゴッド……給料もらうんだ。なんか世知辛いな)
(……ゴッドに給料を払う存在って……やめよう。考えない方がいいね)
(リリス様……素敵。こんな女性になりたいなぁ)
にこやかな笑顔こそ崩さないが、リリスのゴッドに対する言葉は厳しい。
夏樹と一登は、ゴッドよりも上位の存在がどんな者なのか考えていたが、都は考えを放棄したのかリリスのかっこよさにうっとりしている。
「ごほん。では、気を取り直しまして」
水をグラスに入れてもらったゴッドが咳払いをして話を続けた。
「実を言うと、夏樹くんをお呼びしようと思っていたのです」
「そうなんですか?」
「ええ、今晩の夢にこっそり登場する準備をしていたのですが」
「昨日も出てきたじゃん! 普通に連絡先交換したんだから、夢に出てこないでくれます!?」
「……そういえばそうでしたね。つい天啓的な感じで、失礼しました」
「夢に出てくるのって天啓だったんだ」
知らぬ間に天啓を授かっていたことにびっくりする。
内容はしょうもないことだったが。
「えー、実は、佐渡祐介くんのことです」
「そうそう! それだよ! ゴッドったら、昨日の夢の中で祐介くんになにか起きるかも的なことを言い残して消えて! おかげで今日、一日授業に身が入らなかったんだから!」
「……夏樹くん……あなたはそうやってゴッド様のせいにして。授業中に遊んでいた結果がクーゲルシュライバーだったじゃないですか」
「やめて、都さん! その話はしないで! 心の傷が開いちゃう!」
「ははーん、もしやクーゲルシュライバーという名の技名を叫びましたね!」
「――っ!」
「いや、――っ! じゃないから」
都と一登に丁寧にツッコミを入れられた夏樹に、わかります、とばかりにゴッドが頷いた。
「私も、日本語にハマり出していた頃の話です。四文字熟語が無駄にかっこよく感じてしまい、技名にした結果……要らぬ恥をかきました」
「ゴッド……俺、今ならゴッドと分かり合えると思う」
「夏樹くん」
「ゴッド」
異世界帰りの勇者と、全知全能のはずのゴッドはがっちり手を握りあった。