軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22「ビッグネームの洗礼じゃね?」②

「待ってください、ちょっと待ってください。落ち着きましょう。話し合いましょう」

「……都さん、何言ってんの?」

都は、喫茶店『最初の妻』の近くにある電柱にしがみつき、中に入りたくないと抵抗していた。

夏樹はそんな都に「やれやれ」と大袈裟に肩をすくめて彼女のスクールバックを引っ張る。

「さあ、ビッグネームが待ってるよ! かつて俺がそうだったように、都さんもビッグネームに慄くがいい!」

「やーめーてーくーだーさーいー!」

ぐいぐいバッグを引っ張る夏樹に、都が顔を赤くして抵抗する。

「……えっと、でも、都さんは照子ちゃんと一緒に暮らしているんだから、今更じゃないですか?」

「ビールを司る神と、誰でも知っているような大魔族リリス様とゴッド様を一緒にしないでください!」

「ひでぇ!」

「あの、照子ちゃんは一応、太陽神だったはずなんですけど」

「――っ、そうでした!」

「いやいや、――っ、じゃないから! 都さんがボケたら俺たちどうすればいいのよ!」

太陽神天照大神が降臨した時はあれだけ緊張していた都が、たった数日で天照大神をビールの神扱いするとは思ってもいなかった。

小梅といい銀子といい母といい、なぜ大人は苦いビールが好きなのか夏樹には理解できない。

「というか、一登くんはなぜ平然としているんですか!」

「俺もゴッドとかリリスさんとか驚きだけど、照子ちゃん、月読先生、素盞嗚尊さん、七つの大罪のマモンさんとか、魔王サタンさんとか、さまたんとか、あと、ポセイドンのポセイさんとか……感覚が麻痺しちゃったかも?」

「……ポセイドンって初耳なんですけど!?」

「あ、ゼウスさんもいるみたいだよ」

「ぜ――向島市ってどうなってるんですか!?」

「それは俺が一番知りたいよ!」

「ひっそりと土地を守ってた水無月家が知らない間に、魔境と化しているんですが!」

「魔境とかいうなよぉ!」

「……なんといいますか、神々がその気になれば人間では気配を探知することなんてできないんですけどね。だからって……向島市怖い!」

「わーかーるー」

都の叫びに同意する夏樹。

そんな夏樹だが、都のスクールバックを離そうとはしない。

なんとしても引き摺り込もうとする執念がそこにあった。

「あのさ、夏樹くん、都さん」

「どうしたの? それよりも、都さんを早く電柱から引き離して、俺たち側に引き摺り込もうぜ! ひゃっはー!」

「やーめーてーくーだーさーいー!」

「うん、それはいいんだけど」

「よくないですぅ!」

「喫茶店の扉から、めちゃくちゃ光が放たれているんだけど」

「え?」

「え?」

一登の言葉に、夏樹と都が動きを止めた。

そして、ゆっくりゆっくり喫茶店の入り口に顔を向けた。

すると、

「こんにちは。みんなのゴッドです」

「ま、眩しい! 金色の光が!」

都が顔を手で覆う。

夏樹も片目を瞑った。

「煌めいていて申し訳ありません」

「あのー! ゴッド! ちょっと、光量が! なんとかできないですか!?」

「申し訳ありません、夏樹くん。――仕様です」

「仕様かぁ。って、どんな仕様だよぉ!」

「そう思って百均でサングラス買っておきました。どうぞ」

「いや、眩しすぎてサングラスの存在がわからない!」

なぜか以前よりも後光が眩しいゴッドから、悪戦苦闘してなんとかサングラスを受け取ると、夏樹、一登、都が装備する。

しかし、やはり肝心なゴッドの御尊顔は見えなかった。

「……というか、サングラスしていても眩しい」

「ちょっと目が痛い。夏樹くん、回復魔法かけてくれない?」

「……あわわわわわ、まさか日本でゴッドに会うなんて……私の人生どうなっちゃうの!?」

落ち着きを取り戻した夏樹と一登に対し、都はまだ混乱が治らないようだ。

こっそり都が逃げないように、夏樹と一登が都の両腕を掴むと、喫茶店の中に引きずっていった。