軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

19「なんで俺に言いに来たのか疑問じゃね?」

夏樹がすべきことは、まずこの場からの離脱であった。

ガープと戦うのが怖いとか、戦って負ける恐れがあるということではない。

――戦いの余波で一登と都を傷つけたくないのだ。

常闇の剣が、ガープの魔力剣とぶつかる。

「てめぇ、手加減しやがったな」

「通学路で本気出すとか、馬鹿なんじゃないの? ほら、頭出せよ。問題ないかかち割って見てやるから!」

「ガキが! てめえの年齢で医者になれるわけねえだろ!」

「そういう返しが来るとは思ってなかったからびっくりだよ!」

夏樹は魔剣を持たない左手で、ガープの片腕を掴んだ。

そのまま魔力を流し込み、彼の魔力剣を霧散させる。

「小狡いことを!」

「知るか! こんなところで本気で喧嘩できるか!」

勢いでガープを斬り殺そうとするが、口から魔力の砲撃を吐かれてしまう。

夏樹は避けることはせず、あえて受けた。

「――夏樹くん!」

「夏樹くん!」

一登と都が夏樹を案じて叫ぶ。

全力で防御に回ったおかげでガープの魔力砲は夏樹の肌をわずかに焼くだけだった。

「硬えな! だが、てめえの弱点は理解した。そこで何もできずにいる雑魚だな!」

「――ふたりに手を出したら、お前を絶対に殺す。お前の主人とかいうアマイモンも、親しい友人も、いれば家族も、全員八つ裂きにして苦しめて殺してやる」

「いいなぁ! 魔族よりも魔族みたいでおっかねえ! 安心しろ、俺は雑魚には用はねえ!」

ガープが拳を放つと、夏樹も応じた。

鈍い音がして、両者の指の骨が砕けた。

「良いパンチだ!」

「うるせえよ!」

言葉と共に魔剣を振るうが、切先がガープの顎を掠めただけだ。

「……面倒臭え。もっと戦いやすい場所でやろうぜ、そうすれば一瞬で殺してやるから」

「がはははははは! 場所のせいにするなよ! 人間っていうのはどいつもこいつも、弱いことを言い訳しやがる! 場所? 守るべき相手? そんなもん知るか! 気を遣わなきゃ戦えない奴が悪いんだよ!」

ガープの言うことはもっともだ。

だが、夏樹はこの街が、友人が大事だった。

異世界であれば、どれだけ地形を変えようと、たとえ人の住めない土地にしようと、住民を巻き込もうと気にしなかったが、ここは日本だ。そうはいかない。

「――上等だ。なら、一瞬で終わらせてやる」

夏樹が魔剣をしまうと、放電を始める。

黒い雷が意思を持つように夏樹に纏わりつく。

「二度とそんな口を聞けないように、念入りに潰してやる」

街を破壊せず、一登たちに害を与えないように、一瞬だけ今できる最大の力を使うことに決めた。

剣だと周囲に被害が及ぶので、拳だ。

茨木童子との戦いで、力の器は広がったが、疲弊しているため万全ではない。

だからといって出し惜しみできる相手ではないことも理解している。

ガープには余裕があった。

ならば、余裕を持ったまま退場願おう。

「やってみろ、人間。お前の力を見せてみろ」

余裕を崩さないガープに夏樹が攻撃を仕掛けようとする。

次の刹那、

「――ここまでにしておけ」

無感情の圧のある声が響いた。

「アマイモン様!」

声の主は、ガープの背後にいた。

十歳ほどの幼さを残す少年だった。

紺色のショート丈のズボンを履き、ブレザーを身につけている姿は、制服指定のある学校に通う小学生だ。

しかし、少年から発せられる威圧感は、ガープ以上だ。

なによりも魔力量が大きすぎる。

(やばいな、サタンさんレベルなんですけど)

警戒する夏樹を他所に、少年――アマイモンは淡々と告げた。

「ガープ。我々の目的は、今ここで戦うことではない」

「――はっ」

「少年、由良夏樹だったな。我は宣言する」

その場に膝をつき深々と頭を下げたガープから、アマイモンは夏樹に視線を向けた。

「――我、アマイモンとガープは新たな神々につくと決めた」

「あ、はい」

「かつてサタンとサマエルに敗北し、従っていたが。もう何世紀も経つ。そろそろ飽きた」

「まあ、そうかもね」

「ゆえに、我は愉快そうな方につくことに決めた」

「えっと、あの、質問いいですか?」

「何なりと問うといい」

「――なんで俺に宣言しに来たの!?」

夏樹の魂の叫びだった。

アマイモンが新たな神々に与するのは良い。

月読命などが対応するはずだ。

だが、なぜそれをわざわざ自分に言いに来るのか夏樹には微塵も理解できなかった。

「てめぇ! アマイモン様に舐めたことを! せっかく来てくださったんだから、ありがとうございますだろうが! あ、アマイモン様、タイが曲がっていらっしゃいますよ」

ガープが夏樹の態度に怒りながらも、背を向けて甲斐甲斐しくアマイモンのタイを直し始めた。

夏樹はその隙を見逃さなかった。

「知るか、ボケぇ! ――ここでくたばれ! 大河童宇宙的最強必殺技! スーパーギャラクシーまもんまもんライトニングデンジャラスハイパーデンジャラスウルトラクーゲルシュライバーぁああああああああああああああああああああ!」

雄叫びと共に、すべての魔力と雷を込めた蹴りがガープの背後から股間に突き刺さる。

「――んのふぉっ!?」

股間に爪先が突き刺さった刹那、荒れ狂う雷がガープの股間から脳天に突き抜けた。