作品タイトル不明
17「不穏な雰囲気じゃね?」①
放課後の帰り道。
夏樹は一登と都と共に学校を出て、帰路についていた。
「はぁ……学校って退屈。クラスメイトは珍獣を見る目で見てくるし、バスケ部に友人がいる奴は敵意を向けてくるし。挙げ句の果てに、自称幼馴染みの制御をしなかったことを責める奴までいたんですけど。しらねーよ。俺より肉体関係のあったバスケ部の奴らの方が仲良しじゃん。自己責任じゃん。なんで俺のせいにするの? なっちゃん、号泣するよ?」
クラスメイトで唯一フレンドリーに話しかけてくれたのは、吉岡くんだけだった。
特別、クラスメイトと仲良くしたいわけではない夏樹でも腫れ物のように扱われるのは嫌だ。
視線も鬱陶しいし、ひそひそ話す声だって夏樹の聴力なら聞こえてしまう。
碌なものではない。
「まあまあ」
頬っぺを膨らます夏樹を、苦笑気味に一登が宥めた。
そういう一登も、問題児の兄のせいで夏樹以上に周囲から距離を置かれているらしい。
それでも、兄の問題性を理解する友人もいるため、孤独ではない。
もともと人当たりの良い一登は、友人が多いのだ。
現在は、どちらかというと、家族を失った一登にどう声をかけていいのかわからないと言った感じだろう。
「松島明日香は知らぬ間に転校が決まって、学校にはもう来ませんので……文句を言う相手が欲しかったんでしょうね。夏樹くんにとってはいい迷惑でしょうが」
「……気持ちはわからなくもないけどさ。自業自得としかいえないっしょ」
不純異性交遊を散々していたのだ。
本人たちもリスクがあることくらいわかっていたはずだ。
いくら思春期だからといっても、許されることではない。
一時の快楽のせいで、停学になったようだが、まだマシなほうだ。
中学校だから停学や、親への報告程度で済んだが、高校であれば退学になる可能性だってある。
まだ反省できる時に見つかってよかったと思ってもらいたい。
「学校のことはさておくとして、俺は祐介くんのことが気になるからゴッドのところへ行ってくるよ」
「……しかし、ガネーシャ様はどうするのですか?」
「都さんに任せた!」
「無理です!」
都は心底嫌そうだった。
天照大神と共に暮らす都であるが、ガネーシャまで受け入れるのはキャパオーバーらしい。
「……一登」
「僕も無理だって。神様とどう接すればいいかわからないからね」
「だよねぇ」
夏樹だってわからない。
「仕方がない……とりあえずゴッドのところに行ってから、小梅ちゃんたちを呼んでガネたんと合流して……どうすればいいんだろう!? ガネたんのお顔はさすがに連れて街を歩けないよね?」
「ゆるキャラとしてなんとかなら……ないよねぇ」
「無理ですね。あんなリアルなゆるキャラなんていませんから」
「ですよねぇ!」
デフォルメされた可愛い象さんの顔ならまだしも、リアルな象さんの顔が体格の良い肉体の上に乗っかっているのだ。
とてもゆるキャラと説明できないし、しても誰も信じてくれないだろう。
「とりあえず、ゴッドと会ってから考えるよ」
「――その必要はねえ」
重い圧と共に声が響いた。
一登と都が、声の圧によってその場に膝をつく。
「一登! 都さん!」
ふたりを庇うように、声の主との間に夏樹は立った。
「……誰だ、あんた」
敵意を込めた夏樹の視線に臆することなく、いつの間にか人気のない道路に立っていた男が返事をした。
「俺の名はガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアプ!」
――強い魔力を持つ魔族が、夏樹たちの前に突如として現れたのだった。