作品タイトル不明
13「都さんオコじゃね?」
「か、一登までいたんだ。あー、やっぱり見えちゃったかぁ! なんか驚かせちゃったようでごめんねー! あ、でもね、害のある象さんじゃないだよ。むしろ、ご利益のある象さんでね」
「――由良くん、座りなさい」
「はい」
都の低い声に、夏樹は素直にその場に正座した。
なぜか一登もつられて正座してしまう。
ガネーシャも「ぱおーん」と鳴いていたのだが、静かになった。
それだけの圧が都にはあったのだ。
「由良くん……この象さんはどちらさまでしょうか?」
「インド神話から遊びに来られたガネーシャ神ことガネたんです」
紹介をしたのだが、ガネーシャはまるで置物になったのかと疑いたくなるほど、微動だにしなかった。
「ありがたい神様ではないですか! そんな方を……中学校の屋上に放置してぱおーんさせておくのはいかがなものかと!」
「だって! ガネたんが学校ついてくるって言うんだもん!」
「誰かに預かってもらえなかったの、夏樹くん?」
「千手さんは逃げちゃうし、家にはお母さんいるし、祐介くんは連絡取れないし! 元いた場所っていったらうちの玄関だし!」
「……インドに連れて帰ってください」
「やだよ! インド編始まっちゃうよ!? いくらイベントさんなしでは生きられない体になっても、そこまで過激なイベントはいらないよ! 絶対、インド神話さんと関わったら世界滅ぶから!」
「そんな簡単にイベントは起きないでしょう!」
「いーや、起きるね! 俺の神や魔、妖怪とのコンタクト率やばいからね! 地球が異世界よりもファンタジーなんて思ってもいなかったから!」
夏樹は泣き笑いとなる。
異世界と比べてどちらがマシかと尋ねられたら考える必要なく、地球がいい。
だが、ビッグネームとの戦い、死にかけること数回。
――もうお腹いっぱいだ。
「というかね、いいのよ! イベントがあってもいいの! 神様や魔族と必要があれば戦いますとも! でもね、イベントが密なの! まだ異世界から帰還して十八日だよ! なーんで、こんな毎日忙しいのよ! イベントさんは俺をどうしたいの!?」
「あー、都さん……夏樹くんはいろいろ限界だからそろそろ」
「いいえ、一登くんが騙されてはいけません。由良くんは、あなたが庇った瞬間、ちょっとにっこりしました」
「ちくしょう! なんでバレた!」
「――由良くん」
「申し訳ございません! あと、夏樹くんって呼んでくれたと思ったのに怒っているせいか由良くん呼びなのがじわじわ怖い!」
夏樹は謝罪して、反省してると主張した。
都も説教をしたいわけではない。
大きく息を吐くと、組んでいた腕を解く。
「はぁ。ところで、ガネーシャ様をどうするのですか?」
「え? このままじゃだめ?」
「駄目に決まっています! 一登くんほどでなくとも資質のある人間ならば、認識できるでしょう」
「……えっと、じゃあ、今だってまずいんじゃないんですか?」
一登が恐る恐る尋ねると、少しだけドヤ顔をした都が応えた。
「――隠蔽術をかけてあります。短い時間なら問題ありませんよ」
「さすが都さん!」
「いよっ、水無月家の麒麟児!」
「まあそれほどでも――あります!」
夏樹は内心にやり、と笑う。
(やはり都さんは煽てられるのに弱い! いや、隠蔽術はすごいんだけどさ。俺だと、目撃者を出さないように学校ごと破壊しかできないし!)
「えっと、ガネーシャ様……都さんも怒っていないですし、そろそろお話を」
一登がガネーシャに声をかけると、象さんがぽんっ、と音を立てて人型になった。
「よう、俺っちはガネーシャ! インド神話からこんにちは! ガネたんって呼んでくれい!」
自分たちの脳裏に描いた通りのガネーシャの姿に、都と一登は「ははぁ!」と感動し、平伏した。