軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12「異世界やばいんじゃね?」

大地の勇者佐渡祐介は、かつて異世界に召喚されたことがある。

海の勇者であり、魔王を倒した英雄由良夏樹の後継者として呼ばれたはずが、「先代よりも弱いから」という理由だけで、虐げられ、挙げ句の果てに種馬扱いとなった。

夏樹が魔王軍を半壊させたのに、人間側は協調性のなさ、互いに出し抜こうと企むこと、魔王のような絶対的存在がいないことで追い詰められていた時だった。

結果、祐介は捨て駒として扱われて死んだ。

そんな彼を哀れに思ったゴッドによって地球に帰還され復活もしたのだが、そのトラウマは未だ消えていない。

「おかしいと思っていたんだよ! ゴッドが異世界が滅びたら困るから時間を巻き戻すようなことを言っていたから、僕の召喚もなかったことになると思っていたのに、僕には大地の勇者としての力がそのまま残っている! つまり、また召喚されるのかなー、あはは、なんて考えないことにしていたのに、ちくしょう! 時代は違うけどまた召喚されちゃったよ! しかも、夏樹くんたちとは別で! 嘘だろ、こんにゃろー!」

時代と場所、そして召喚者も違うが、佐渡祐介は再び異世界に召喚されてしまった。

まだ人間が優位なこともあり、扱いこそ酷くなかったが、トラウマを克服していないどころか、三週間も経っていない間にまた地獄のような異世界に呼ばれてしまった祐介は叫んだ。

叫んで、叫んで、叫んで、近くの部屋に逃げ込んで籠城している。

食事を運んでくるが、手をつけたくもない。

幸い、携帯食は持っているし、大地の勇者の特性で大地から魔力を得て肉体を回復させることができるので飲まず食わずでもいられる。

「……こっちの世界と向こうだと時間の差があるのか、召喚によってズレが生じるのかわからないけど、夏樹くんたちがくる気配がない! 僕は囚われのお姫様状態じゃないか!」

この場に夏樹がいたら「余裕あるんじゃね?」と言われそうな言動だが、トラウマしかない世界でひとりぼっちになってしまった裕介に余裕など微塵もない。

「……このまま魔王軍へ行けば……あー、でも僕は魔族さんに知り合いもいないし。夏樹くんの名前を出して、恨まれてバトル展開になる未来しか見えない! どうしよう!?」

どんどんどん、と扉が叩かれる。

向こうも祐介を利用したいので優しく声をかけているが、いつまでその上っ面が保たれるのかもわからない。

「――勇者様、わたくしです。ベアトリス・ブレスコットです」

「ぴっ」

「混乱されるのはわかります。ですが、勇者様のお力が必要なのです!」

「…………いやぁ」

「先代勇者様が命を賭して魔王と戦ってくださいました。わたくしも、相思相愛だった勇者様を失い辛いのです」

「嘘つけぇ」

「先代勇者様もおっしゃっていました。自分のことは忘れて、新たな人生を送ってほしいと」

「夏樹くんがそんなこと言うわけねえだろ!」

「しかし、わたくしには先代勇者様を忘れることはできません。ですが、悲しんでいる時間もないです! 先代勇者様が魔王を倒した今こそ、人間が魔族に勝つチャンスなのです! すでに聖剣もない今、新たな勇者であるあなたこそが、人間の希望!」

「やべぇ、いくらこっちの声が聞こえないからって、一方的に都合のいいこと言い過ぎぃ。誰が信じるか、そんなこと!」

「他の勇者様は、わたくしたちに協力してくださるようです」

「――は?」

「そして、別世界から降臨された神々が我らに力をお貸しくださるのです!」

「――へ?」

「今こそ、憎き魔族を倒し、永久に労働力として使い潰す好機! ぜひ勇者様のお力を!」

演説が終わり去っていくのを足音で確認すると、祐介は思いっきり息を吐き出した。

「……勇者が僕と夏樹くんの他にいて、神様までいる? これって、前の状況よりも――やばくね?」