作品タイトル不明
11「学校でもぱおーんじゃね?」
「月読先生、これ京都のお土産でーす。先生方の分もあるんで、みんなで食べてください」
「……もう少し小さな声で……いえ、いいです。お気遣いありがとうございます。昨晩は、素盞嗚尊と仲良く遊んでくださったようで、重ねてお礼を言わせてください」
「いえいえ、そんな俺とすさすさは親友ですから!」
きらんっ、と歯を光らせて笑みを浮かべる夏樹に、月読が怪訝そうな顔をする。
「……もう京都に行って帰って来ちゃったんですから取り繕う必要はないんですよ?」
「え?」
「ですから、素盞嗚尊と親友のふりをしなくても」
「やだなぁ、先生。俺はほら、すさすさって言葉には辛口でしたけど、すさすさ自身のことは嫌いじゃないっすよ。そりゃ、喧嘩もしましたけど、不良漫画であるじゃないですか、拳を交わせばマブダチみたいな!」
「……君がいいのなら、ええ、私から特に言うことはないのですが」
「うっす!」
「はぁ。弟のことをよろしくお願いします。あれはあれで、悪い神ではないんです。ただ、短慮といいますか、感情的で思いつきで行動する悪癖があるというだけで」
「大丈夫です。俺の力の件も心配してくれましたし、悪い人じゃないのもわかっていますから」
出会いは決していいものではなかったし、殺し合いもした。
それでも、素盞嗚尊はからっとした性格だからだろうか、良き友人として付き合っていける確信がある。
夏樹の言葉に、安心したような顔をする月読が、頭を下げた。
「弟のこと、よろしくお願いします」
「はい!」
笑顔を浮かべ合うふたり。
しかし、空気が変わった。
朗らかな空気から、ぴりっと張り詰めたものになる。
「さて、教師としても、月読命としてもお尋ねしたいことがあります」
「は、はい?」
「――なぜ象が屋上でぱおーんしているんでしょうか?」
「……わかっちゃいましたか?」
気まずそうな顔をして、職員室から屋上を見る。
屋上では象さんが「ぱおーん」と鳴いて、水浴びしている。
「一応、ご本人曰く、認識阻害は問題ないってことでしたけど?」
「私はこれでも神ですからね。見えますとも」
「あ、あの象さんはインド神話のガネーシャさんことガネたんです」
「ガネたんは知りませんが、彼がガネーシャ神であることは理解しています。そうではなく、なぜ学校に連れて来たんですか、と聞いているんです」
「だって、千手さんが受け取り拒否したから!」
「よくわかりませんが、七森千手が預かってくれないのであれば、お家で預かって貰えばいいじゃないですか」
「まだお母さんが出勤前だったんです! 月読先生みたいに人の姿じゃなくて、象さんの頭の神様じゃさすがにバレちゃいますって。擬態しても象さんってそれはそれでまずいですもん!」
「だからって、中学校に連れてこないでください。あなたは中学校をなんだと思っているんですか。動物園じゃないですからね」
「ガネたんを動物扱いしないで!」
「いや、動物じゃないですか。めちゃくちゃぱおーんしてますよ」
実は、生徒がまだ来ていない時間に学校入りした夏樹は、ガネーシャに乗って来ていた。
「象さんに乗ったの初めて!」とテンションが上がったのは言うまでもない。
「見えないから問題ないですって」
「……水無月都さんが屋上に全力ダッシュしているんですけど、そこは大丈夫ですか?」
「やべっ! 都さんは霊能力者だからバレちゃう! 怒られる!」
「ぜひ怒られてくださいね」
「いやぁあああああああああああああああああああ!」
夏樹は月読にお辞儀をすると、ダッシュで屋上に向かう。
途中、新婚ホヤホヤの権藤先生に「廊下を走るな由良ぁ!」と怒られていたが、止まらなかった。
――そして、屋上にて。
「……由良夏樹君。この象さんを説明してください」
「……夏樹くん、さすがに象さんを学校に連れてくるのはファンタジーを通り越していると思うよ」
水無月都と三原一登が唖然とした様子で「ぱおーん」と鳴くガネーシャさんを見上げていた。