作品タイトル不明
9「さすがにぱおーんはなくね?」①
「ごちそうさまでした!」
手を合わせてから、茶碗を流しに運ぶ。
洗い流しはサタンがやってくれるのでお礼を言って任せることにした。
「さてと……朝ごはんも食べたし二度寝! ――なんてなっちゃんはいい子だからしないし!」
母の鋭い眼光に射抜かれた夏樹は、背筋を正して敬礼すると、スクールバッグを持った。
(――さすがにイベントばっかりだったから一日のんびりするのもいいか。あ、でも、祐介くんと連絡が取れないことが気になる。ゴッドが夢に出てきて変なこと言ったし)
祐介のご家族の連絡先は知らないので、向こうから連絡が来るのを待つしかない。
まさか銀子の言うように、祐介がいきなり異世界に召喚されてしまうような展開は無いと信じたい。
そもそも、異世界人をどうこうするのはいいとして、祐介だけ先んじて向こうに行くのはおかしい。
「いってきまーす!」
まだ時間が早いので祐介の家に寄ってみようと決めた。
朝から訪ねるのは非常識だが、家の前で彼の魔力を確認するだけでいい。
夏樹が魔力を放出したせいで簡単に正体がバレたことから、祐介には結界を張るように言ってある。そのため、由良家から祐介の魔力を正確に探知できなかった。
「おう、行ってくるじゃぞ!」
「イベントに巻き込まれないでくださいっすよ!」
「友よ、良い一日を!」
「先生にちゃんとサボったこと謝るのよ!」
家族に声をかけられながら、玄関を開けた夏樹は足を止めてしまった。
「えるろまぬん?」
夏樹は唖然として、玄関の外の光景に変な声を出した。
「ぱおーん」
――玄関の外に象がいた。
夏樹はそっと玄関を閉めた。
「ないない! ないないないないないないないないない!」
いくらなんでもありえないと、夏樹は早鐘のように鼓動する胸を抑え、恐る恐る再び玄関の扉を開ける。
「………………だよね? いないよね? 象さんとかファンタジー通り越して、普通にやばいもんね。動画撮られてSNSに拡散されちゃう案件だし、下手すりゃ警察来るよ?」
首だけ外に出して左右を確認する。
象さんはいなかった。
「……疲れてるのかなぁ。サボりじゃなくて、普通に休息が必要なのかもしれないかも?」
夏樹は、玄関を出て中学校に向けて歩き出そうとして、足を止めた。
「背後に気配が……というか、影が俺を覆ってるんだけど。これ、なんかおっきいのが後ろにいるよね!?」
勢いよく背後を振り返ると――やっぱり象さんがいた。
「ぱおーん!」
「いやいやいやいやいや、ないないないない!」
「ぱおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!」
「いやぁあああああああああああああああああああああああ! なんか、煌びやかな装飾を装備した象さんが声高々にして走ってくるぅうううううううううううううううううう!」
全力ダッシュで逃げ出す夏樹と、ずしん、ずしん、と地面を揺らして追いかけてくる象さん。
平日の朝から、意味がわからない追いかけっこが始まった。