作品タイトル不明
8「朝食は大事じゃね?」
「うわぁ、なんか酷い夢っていうか、すごい夢っていうか、ゴッドが夢の中に出てくるとかぁ! 月詠先生もそうだけど、みんな俺の夢にほいほい来すぎぃ! 思春期な夢を見ていたらどうするんだよ!」
たんっ、と牛乳を飲み干したコップを強めにテーブルの上に置いた。
すでに夏樹は朝食を終え、学生服を着ている。
残念ながら振り替え休日はないので、疲労が溜まる肉体を引きずって中学校に行かなければならない。
「あと祐介くんと連絡取れないのが怖すぎ! 絶対なんか起きたって! ゴッドもちゃんと最後まで言ってよ! 日曜日、月曜日、火曜日って京都イベントだったのに、水曜日もイベントとか、もうイベントさんなしじゃ生きられない身体になっちゃうぅ!」
「なーにを言っとるんじゃ、おどれは?」
夏樹の体操服を寝巻きにした小梅が、怪訝な顔をして台所に現れる。
「あ、おはよう、小梅ちゃん」
「おはようじゃ」
「小梅ちゃん、今朝はだし巻き卵だからねー」
「朝からクソ親父がフリフリのエプロン装備して鼻歌まじりに料理している姿とか……二度寝したくなるんじゃが」
鼻歌どころか、腰まで振っているサタンを見ないことにして、夏樹と小梅は話をする。
「あのさ、昨晩夢の中にゴッドが出てきてさ」
「なんじゃ、その悪夢」
「うん、それは置いておくとして、なんか祐介くんのことごめんねって謝られちゃって」
「はぁ?」
「しかも、何度連絡しても祐介くんと連絡が取れないんだよ」
「……なんかあったんか? 魔族かなんかに襲われるとか奴の不運ならありそうなんじゃが」
「いやぁ、人外さんとコンタクトしたら絶対喜んで写真の一枚でも送ってくるって」
「そうじゃなぁ。――となると、電波が繋がらんところにおるんじゃないんか?」
「それってどこ?」
「さあ?」
小梅は冷蔵庫を開けると、牛乳パックを取り出し腰に手を当てて一気飲みをした。
残り少なかったこともありすぐに飲み干してしまう。
「もうっ、小梅ちゃんったらだらしないわねぇ。男の子の前なんだからもう少し恥じらいを持ってちょうだい!」
「……おどれはもっと魔王サタンとしてのプライドを持たんかい。なんで口調まで変わっとんじゃ!」
「――主婦モードよ!」
「そんなん知らんわい!」
すっかり魔王サタンも由良家に居着いてしまったと夏樹は苦笑する。
「あ、おはようございまっす。みんな今日は早いっすね。あ、夏樹くんが制服着てる! まさか、学校行くとかっすか?」
「そりゃ行くとも」
「――まじ、っすか」
「そんな驚かれると泣くよ! 優等生なっちゃん号泣だよ!」
「おどれのどこが優等生じゃい。学校行くよりも神や魔や妖怪とエンジョイしている時間のほうが長いじゃろうて」
「別にエンジョイってほどエンジョイじゃなくない!? 一昨日とか死にかけたからね!」
ジョギングから帰ってきた銀子も会話に加わったので、改めて夏樹は祐介と連絡を取れないことを相談した。
銀子はしばらく腕を組んで唸ると、ひとつ心当たりがあったようで口にした。
「もしかして、異世界に召喚されちゃったりして! なんて、冗談っすよ! ――なんで夏樹くんはそれだ、みたいな顔しているんすか。マジっすか? 自分も宇宙から異世界とか意味わかんない経験しましたけど、祐介くんまた異世界っすか!?」
「あ、ありえる。いやさ、ゴッドが昨日夢に出てきたから、そろそろ異世界イベントだと思っていたんだけど……」
「祐介がひと足先に……まったく我慢ができない子じゃのう」
「いや、召喚だったら強制なような気がするっすけど」
どうしよう、と夏樹が悩んでいると、朝食を作り終えたサタンが食卓に皿を並べ始めた。
「はいはい、異世界はいいからお配膳手伝って、手伝って。ご飯はしっかり食べなさい。イベントするならちゃんとお腹いっぱいにしておかないとね」
「……クソ親父は、その似非おかんモードをはよう解かんかい!」
炊き立ての白米、お出汁と味噌の香りがするお麩のお味噌汁。
だし巻き卵と、納豆、薬味にネギが添えられ、味付けのりもちゃんと用意してくれている。
「……そうだね、もう異世界行っちゃってるなら、ご飯食べてからでいいよね。さすがに俺も異世界に単身で行くことはできないし」
「それでええんか」
「それでいいんすか?」
若干呆れ気味の小梅と銀子だが、焦ってもいいことはないだろうと夏樹は判断し、朝食を取ることにした。
サタンが朝食を綺麗に並べたのだ。きっと、母がすぐ起きてくるのだろう。
「あら、おはよう、みんな。まあまあサタンさんの作るごはんってとっても美味しそうね」
「はははは、春子さん――そんな、もちろんです」
「いや、謙遜せんのかーい!」
小梅に突っ込まれたサタンは気にせず、炊飯器からみんなのご飯をよそう。
そこへリヴァイアサンとジャックとナンシーも現れ、家族全員が揃った。
「いただきます!」