作品タイトル不明
5「降臨じゃね?」①
すうすう、と寝息を立てる夏樹は夢を見ていた。
それぞれが煌めく星々の海に、立っている。
夏樹を囲む全てが輝く星々だ。
「――由良……」
声がした気がした。
「――由良、夏樹くん」
まさか、と思う。
胸が高鳴る。
期待と、少しの不安が夏樹の胸の中に宿った。
背後からは、眩い光が差している。
夏樹は確信した。
「――河童大神様!?」
「――ど、どちら様ですか、そんな神いましたっけ!? 違います、みんなのゴッドです!」
振り返ると、後光を背負ったゴッドがいた。
相変わらず、人型であることは影でわかるのだが、顔は認識できない。
「――ちっ」
だが、それよりも、河童大神が降臨されたと勘違いした夏樹は、舌打ちをする。
「ああっ、明らかにがっかりした顔で、思いっきり舌打ちされてしまったんですが!?」
「……なんですか、ゴッド」
「うわぁ、やる気のない声ですね。もっと喜んでいただけると思っていたのですが……ゴッド悲しい」
「そういうの良いんで。というか、夢の中に現れないでくださいよ! 勝手なことされると困るんですけどぉ! プライバシーの侵害ですよ!」
「それは申し訳ない。ですが、お話がありまして」
「現実世界で会えるし、連絡先だって知ってるじゃないですか」
「夏樹くんは多忙のようなので、夢の中にというゴッド的気遣いです」
「気遣うならちゃんと寝かせてくださいよぉ。疲れが取れないよぉ」
「大丈夫です、ゴッドパワーで癒しておきます」
「心の疲れが取れないんですけど!」
「それはそれとして」
「それはそれとして!?」
夏樹の訴えをゴッドは流してしまった。
どれだけ抗議を重ねても、すでに夢の中にゴッドは降臨してしまったので、夏樹は大きくため息をついて諦めることにする。
「それでどうしたんですか?」
「まずは、茨木童子との戦いお疲れ様でした」
「あ、はい。どうも」
なぜ茨木童子の件を労われるのかわからない。
「実を言うと、新たな神々の一柱が茨木童子に少し細工をしていたようです」
「新たな神々って、あー、愛ちゃんだっけ?」
「そうです。愛の女神こと愛ちゃんです。そして、茨木童子に細工をしたのは絶望の神……本人はぜっくんと名乗っています」
「……新たな神話作りたいって神がそんな名前でいいの? それで神話に名前が乗っちゃったらどうするの?」
「さあ。彼らのことはゴッドにもわかりかねます」
「全知全能じゃないの?」
「全知全能でもわからないんです」
ゴッドにわからないのであれば、自分にもわからない、と夏樹は割り切って話を進めることにした。
神の名前がどうなろうと知ったことではないのだ。
「海の勇者の力に関しても、使い方を誤れば……辛い思いをするのは夏樹くんですので、使い方は間違えぬように。すでにポセイドンや素盞嗚尊からも言われているでしょうから、ゴッドは軽く触れるだけにしておきます」
「はい」
「さて、本題について話をしましょう。まず、夏樹くんを召喚した異世界で動きがありました。ベアトリス・ブレスコット王女が勇者召喚を企んでいます」
「……え? 誰です、それ?」
「――え?」
本当にわからないという顔をする夏樹に、ゴッドは言葉を失った。