軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4「夜の公園ってテンション上がらね?」

夕食を終えて、シャワーを済ませた夏樹は、短パンとパーカーにサンダルの格好で近くの公園にいた。

スマホには、千手と祐介からも連絡があり、それぞれ一息ついているようだ。

向島に戻ってきた夏樹は、ふたりにご飯を食べようと誘ったが、二人ははっきりと断った。

曰く、「酒呑童子、茨木童子、玉藻前、とどめに安倍晴明と蘆屋道満でお腹いっぱい! 由良さん家行ってサタンとかリヴァイアサンとか対応できる自信がない! あ、主にはお土産を渡しに明日伺うから!」と千手が叫び、祐介も「……千手さんが鬼さんとフラグ建てたから今日は泣いて眠りたい」と両者とも疲れているようだった。

現在、千手からは、「虎童子からめちゃくちゃ連絡くるんだけど」とメッセージが送られている。

(虎童子、スマホ持ってるんだ。契約とかどうやったんだろう?)

平安時代から生きる鬼がスマホをぽちぽちしている姿を想像し、ちょっと苦笑した。

夏樹はブランコに腰を下ろす。

「視線、感じてるよ。きてくれたんだね?」

夏樹の言葉に、ジャングルジムの陰からひとりの男性が現れた。

「――すさすさ!」

日本が誇る英雄にして神――素盞嗚尊だった。

「ちーす、すさすさ!」

甚平姿の素盞嗚尊がにこにこ笑顔で手を振って走ってくる。

「なっちゃん、おまたせー!」

「ううん! 俺も今きたところー!」

夏樹も手を振り、素盞嗚尊を出迎えた。

実は、素盞嗚尊に連絡をして待ち合わせしていたのだ。

「あ、これ、京都のお土産です!」

「あざーっす! 八つ橋かぁ! 久しぶりだなぁ! おっと、七味と漬物まで……奥さん喜ぶわぁ」

「なんか神様に普通のお土産でごめんね」

「なに言ってんだよ、なっちゃん! 親友なんだから、そんな気遣いはいいって!」

素盞嗚尊は、もらった土産を空間にしまうと夏樹の隣のブランコに座る。

「すさすさ――銀子さんとジャックたちと一緒に、宇宙海賊と戦ってくれたんだって? ありがとう。俺との約束を守ってくれて、感謝してるよ」

「よせやい! ま、向島っていうか、地球の危機だった気がするけど、些細な問題だい! ……ママと奥さんにめちゃくちゃ怒られたけど」

「それも含めて、ごめんね。ありがとう」

「親友のためなら、どうってことないさ!」

二人はなにを思ったのか、ブランコをおもいっきり漕ぎ始めた。

「そういえばさー、なっちゃんは酒呑童子ぶっ殺したの?」

「いやー、それがさ! 酒呑童子は普通のおっさんやってて、元凶は茨木童子みたいな?」

「まじかー! 茨木童子かー! そういえば、なんか噂になったことがあるようなないような?」

ぎーこぎーこ、ブランコが軋む音が公園に木霊する。

「でもさぁ、なっちゃん」

「んー?」

「海の勇者の力はやべーって。もう使わないほうがいいぜー!」

「さすが素盞嗚尊! 気づいちゃった?」

「そりゃなぁ! 俺、一応、海神だからさ!」

「そっかー、ポセイさんにも言われたんだよなぁ」

「――とう!」

素盞嗚尊がブランコから飛ぶ。

三回転して、綺麗に着地した。

「――十点!」

「あざーっす!」

夏樹も負けじと跳躍する。

「しゅた!」

「なっちゃんも十点!」

「いえーい!」

華麗に着地するとハイタッチ。

「嗚呼。こんな学園生活送りたかった」

「逆に聞くけど、すさすさの若い頃って学校あったの」

「あったさ! 大自然が学校さ!」

「しゅごい!」

そして、始まる追いかけっこ。

素盞嗚尊が逃げて、夏樹が追いかける。

「なっちゃん、海っていうのは誰かが扱えるものじゃない」

「うん」

「しかも、地球の海ではない、どこかの海なんて……俺はおっかないね」

「わかってる」

「海の勇者が海の加護を得ていても、絶対じゃないのさ。海は海だ。生命の始まりであり、俺たちの故郷。穏やかな時も荒ぶる時も、それは数ある内の一面でしかない。優しく微笑んでくれる時ならまだいいが、そうでない時ももちろんある」

「うん」

「ま、きっとなっちゃんは必要があれば使うんだろうけどね!」

「使っちゃうかなー! ターッチ! 今度はすさすさが鬼ね!」

「いえーい!」

汗を輝かせながら、公園を走り回る夏樹と素盞嗚尊。

夏樹にはわかっていた。

素盞嗚尊が難しい雰囲気で助言しなかったのは、彼なりの気遣いであることを。

そして、素盞嗚尊にもわかっているのだろう。

夏樹が、使用を躊躇わないことを。

「ま、なんかあったら俺に言ってくれよ! 海に関しては先輩だからさ!」

「うん、ありがとね、すさすさ!」

「よせやい、親友だろう!」

足を止めた夏樹と素盞嗚尊は、人差し指と人差し指を当てて友情を確認するのだった。