作品タイトル不明
73「茨木童子強くね?」①
茨木童子の爪が夏樹を襲う。
聖剣を振るい迎撃をするが、腕は中指から肘まで斬られるが勢いは無くならず、捌かれた腕が蛇のようにうねり夏樹の腹を貫いた。
「――が、は」
吐血する夏樹だが、そのまま聖剣を振るう。
茨木童子の首を七割ほど斬るが、落とすことができずに刀身が止まった。
まずい、と思い茨木童子の腹を蹴り、聖剣を抜く。
腹部を抑え数歩、下がった。
「――くっそ痛いし。ヒール」
茨木童子の爪は腹部を軽く抉っただけだ。
大した傷ではない。
だが、彼女の爪には夏樹の肉片と血があった。
茨木童子は何の躊躇いもなく夏樹の肉と血を口に入れ、咀嚼して飲み込むと恍惚とした表情を浮かべる。
「これよ……これよね。やはり完全なる血統の味は違うわ。似たような血統を集めて食べたけど、この味には勝てない。なによりも、――私にこれだけの力を与えてくれないもの!」
「これ見よがしに指チュパしてんじゃねえよ! 祐介くんが変な性癖に目覚めたら責任取ってくれんのかよ!」
「腹を抉られたのに元気な子ね。――食べ甲斐があるわ」
「百グラム五万円です」
「……わかった。待っていなさい、お金持ってくるから」
「待って待って、嘘嘘! 異世界ジョーク! つーか、その前にお前っ、この野郎! なにがしののんとの赤ちゃんがいるだ! 嘘つきやがって!」
「嘘じゃないわよ!」
「――え?」
気を失っている円以外の全ての者が東雲を見た。
「待ちい、違う、誤解や! 僕はなんもしとらん! しとらんから! ホストの先輩に実際に手を出したらあかんって教わったもん!」
「先輩の話はどうでもいいから! 手を出していないなら、……まあ、メンヘラの言葉をいちいち真に受けても仕方がないか」
腹部は癒えたが、買ったばかりのパーカーとTシャツは穴が空いてしまった。
酒呑童子に弁償させようと固く誓う。
「……嘘つきだと思われるのも嫌だから、教えてあげる」
「いえ、別にいいです」
「私のお腹にはね、赤ちゃんがいるの」
「いいって言ってんだろ!」
「私がずっと貯めていた霊力を注ぎ込んで、強い子が育っているわ」
(――腹に霊力を貯めていたじゃなくて、霊力を与えて育てていたのか)
「だけど、このままではちゃんと生まれない。ちゃんとパパの子種が必要だものね」
にいっ、と笑う茨木童子が東雲を潤んだ瞳で見つめる。
ぞっとしたのか、東雲が身震いした。
「でも、しののんの赤ちゃんを産むにも、結婚するにも、邪魔な奴らが多いわね。はぁ。せっかく、最小限の被害で京都を手中に収めてあげようとしたのに、もう飽きちゃったわ」
ぞくり。
夏樹の全身が総毛立った。
「私の可愛いあかちゃん。ママからパパを引き離そうとする悪い奴らを倒すために、力を貸してね」
「全員、身を守れぇええええええええええええええええええええええ!」
夏樹が叫んだと同時に、茨木童子から凄まじい霊力の衝撃波が放たれた。