軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

72「勇者舐めてんじゃね?」②

「いい加減にしろっ! おのれ、河童め! 貴様の対策を私がなにもしていないと思っているのか!」

「なに!?」

懐から瓢箪を出す、茨木童子。

「なんで?」

夏樹は首を傾げた。

小梅と祐介も「はて?」と疑問符を浮かべている。

「俺が突っ込むことじゃねえが、伝承とかでは河童は瓢箪が苦手だって言われるんだよ! 河童好きならそのくらい調べろ!」

「くっ、言われたら力が」

離れたところから虎童子を抱き抱えた千手がツッコミ叫ぶ。

すると、夏樹が胸を押さえて苦しげな顔をした。

「んなわけあるか! おどれは生粋の、純度百パーセントの人間じゃろう!」

「はっ、そうだった! あぶねぇ、危うく茨木童子の巧妙な罠にハマるところだった。だけど、俺はギャラクシー河童勇者Z! 頼もしい仲間がいる限り、悪には挫けない!」

「……そんな馬鹿な! 河童は瓢箪が苦手のはずなのに!」

「馬鹿野郎! 河童さんとギャラクシー河童勇者を一緒にするな! 河童さんに申し訳ないと思わないのか! 怒りの河童斬り!」

聖剣を振るい、瓢箪を持つ腕を肩から斬り落とす。

痛みに顔をしかめる茨木童子だが、両腕はすぐに再生してしまう。

「……厄介な再生能力だな」

「それはどうも。お前こそ、苛立たしいほどの殺傷能力ね。私じゃなければ、とっくに死んでいたわね」

(聖剣さん、聖剣さん、ハロー。ギャラクシー河童勇者Zです。もしもーし)

(あたしの知り合いに宇宙の河童なんていないわ)

(……聖剣さんの相棒由良夏樹君どす)

(なによ?)

(あのさ、想像していたよりも、弱くね? このまま手数で押せね?)

(ばーか! どこに目をつけてんのよ! 茨木童子の腹を見てみなさい!)

(んん?)

聖剣さんに言われて、茨木童子を腹部を見る。

すると、彼女の下腹部には爆発しそうな霊力が溜まっている。

(なぜ力を解放しないのかわかんないけど、使われる前に殺しなさい。使われたら、厄介よ)

(なるほど、つまり便秘か)

(……あんたがそれでいいなら、それでいいんだけど! いくら敵でも口にしたらダメだから! デリカシーなさすぎるからね!)

(うっす)

夏樹は帯電する聖剣を茨木童子に向ける。

「あんたと戦うのももう飽きた。すっきりさせてやるから、かかってきやがれ!」

「……いいわ。しののんとの初夜のために、お前を八つ裂きにして血を啜り肉を食らい、骨を家具にしてあげるわ!」

「やれるもんならやってみやがれ!」

夏樹と茨木童子は同時に地面を蹴った。

聖剣と茨木童子の爪がぶつかり、魔力と霊力の火花が散る。

数々のモンスター、魔族を斬り殺してきた聖剣とぶつかり合いながら、爪や指が飛ぶだけで済んでいるだけで、茨木童子が今まで戦った相手の誰よりも面倒臭いことを理解した。

聖剣だけで倒すことに固執せず、魔剣をアイテムボックスから引き抜き茨木童子の腕を、肩を、首を斬る。

再生すると分かっているせいか、防御さえしない。

(だけど、腹は守ってるな)

聖剣さんの指摘通り、腹に霊力を溜めている。

その理由は不明だが、攻撃を受けたくないようだ。

おそらく、彼女にとっては守り抜きたい何かなのだろう。

ならば狙うに決まっている。

聖剣に魔力をこれでもかと込め、夏樹自身も強化した。

一段階、強く早くなった夏樹に、茨木童子が対応していたテンポを狂わされてしまう。

隙にもならないほど、刹那の時間ではあるが、夏樹には十分すぎた。

聖剣が茨木童子の防御を縫って下腹部に吸い込まれていく。

あとは、体内に魔力と雷を全力で流し、肉体に蓄積した霊力とぶつけて内側から弾け飛ばせばいい。

慢心はしない。

油断も、勝利の確信もない。

ただ、機械のようにすべきことをするだけ。

しかし。

「やめて! お腹にはしののんとの子供がいるの!」

異世界から帰還して二週間が立っていた。

機械的に命を奪うだけの夏樹に、心と情が少しではあるが戻っていたのだ。

そのせいで、戯言だと切ってすてるはずの茨木童子の発言に聖剣を持つ手が止まった。

「ありがとう。優しいのね」

茨木童子は心底夏樹を馬鹿にするように笑うと、爪を繰り出し、襲った。