作品タイトル不明
間話「向島モンエージェントじゃね?」⑤
「すさすさすさすさすさすさすさすさすさすさ! 俺が宇宙で戦艦相手にバトルってたら、美味しい敵をまもんまもん野郎が奪ったとか、笑えないぜぇ!」
「……この神……おいおい、をすさすさで代用してるっすよ。まるで最初から使っていたとばかりの図々しさっすね! さすが素盞嗚尊っす!」
「まもんまもんまもんまもんまもんまもんまもんまもん! 素盞嗚尊、貴様の仕事が遅かっただけだ。俺は強欲な魔族だが、仕事の早い魔族でもある! 貴様とは違うのだ!」
「す、すげえっす! マモンさんはマモンさんで、笑止笑止を、まもんまもんで美しく表現しているっす! やはり長年使っていると重みが違うっすねぇ!」
銀子たちのいる戦艦に、天叢雲剣を片手に現れた素盞嗚尊はマモンと睨み合っていた。
その様子から察するに、仲が良いとは言えないようだ。
「俺は忘れてねえからな。交換留学で、魔界の小学校に通った時、お前とクソサマエルにおやつのみかんを食われたことを!」
「俺こそ忘れるものか、まもんまもん! 貴様がサボったせいで、俺とサマエル様はせっかくの休日を兎小屋の掃除で終わったのだぞ!」
「しょぼ! 恨みがしょぼ! あと昔っから知り合い! もう幼馴染みレベルっすよね!?」
銀子は呼吸する間もなくツッコミを入れ続ける。
「それだけじゃねえ、交換留学初日のお昼……牛乳を飲んでた俺に変顔しやがったサマエルだけは許せねぇ!」
「貴様っ! 貴様の緊張をほぐそうとしたサマエル様のお心遣いがわからぬのか、まもんまもん! 牛乳を顔面に受けても、笑顔だったサマエル様の慈悲を受けながら、なんという恩知らずなまもんまもんだ!」
「何が恩知らずだ! お前らのせいで、アスタロトやベリアルに笑われたんだぞ!」
「それこそまもんまもなサマエル様のせいではないだろうに!」
「……小学校のときってちょっとやらかすとずっと変なあだ名で呼ばれるんすよねぇ。私なんて、スマホでエロ本読んでいただけなのに、エロ銀子って……酷すぎるっす!」
マモンと素盞嗚尊の会話から、小学生時代の古傷を抉られてしまった銀子がその場に膝をついた。
「……青山までツッコミ待ちになられても困るんだが? ジャック殿はいずこに! 俺ではこの場は抑えられんぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「やれやれですね。とりあえず、捕まった人たちを助けるところから始めようとしますか」
銀子が心にダメージを受けたことで、神と魔族の睨み合いを刺激しないように見守っていた征四郎がついにツッコミを入れた。
大人たちの不甲斐なさに、義政少年は「やれやれ」と肩をすくめると、囚われの身となっている宇宙人を解放し、部屋の隠し金庫にあった武器を見つけると自衛のために手渡していくのだった。
■
――その頃、ジャックさんは。
「まさかあなたが黒幕だったとは……幼い頃、あなたにはお世話になっただけに残念です」
「これはこれは、ジャック・ランドック・ジャスパー・ウィリアムソン・チェインバー・花巻様……我々商人は、大なり小なり宇宙海賊と繋がりがあるのです。商家の規模が大きくなり、もう海賊とは縁を切りたい――と思った時には抜け出せないのですよ」
「だからと言って、人身売買に手を貸すとは!」
「綺麗事は言いません。ですが、私と従業員の家族を守るためには仕方がなかったのです」
ジャックは、ドップニャーニャー海賊団の背後にいた商人を突き止め、銃を突きつけていた。
幼い頃から知る商人の援助があったからこそ、ほぼ壊滅状態であったドップニャーニャー海賊団が今回動いてしまった。
ジャックは、かつて世話になった友人に銃口を突きつけることになるとは、時間の流れを恨んだ。
「まあまあ、旦那。ここは俺に任せてもらえないかと」
「……よろしいのですか?」
「ええ、本職ですから。せっかく休みをもらったのに、消費する前からまた面倒なことになりそうな予感がしますが、警察官の宿命ってことで」
ジャックが持つ銃にそっと手を置いたのは、恰幅の良い警察官ボブ・モラレス・ウィン・ダーナー・スイトミー・牧村だった。
彼は数日前に、ドップニャーニャー海賊団を夏樹と共に壊滅させたひとりだが、そのこともあって今回も巻き込まれていたのだ。
ボブは懐から手錠を出すと、商人の腕に嵌めた。
「さあ、近くの星まで送ります。最近、少し権限をもらったので、ご家族に会えるように手配させていただきますね」
「――感謝するっ」
こうして表では素盞嗚尊たちが、裏ではジャックたちの活躍があり、ドップニャーニャー海賊団は完全に滅んだのだった。