作品タイトル不明
63「大地の勇者と熊童子じゃね?」②
「べ、べあ……べぁ……」
「はぁはぁ……怖くないよぉ。僕はね、ただ君たちと仲良くしたいだけなんだ。はぁはぁ。そう、一緒にお散歩したり、ご飯を食べたり、ハイキングもいいね。釣りにも行こう。君たちと一緒に過ごす日々はたのしいだろうなぁ。ふひひ」
「べぁ!?」
祐介の言動は動物をあやすのではなく、誘拐しようと企んでいるのではないかと疑いたくなるほどの不気味さがある。
「きんもー!」
「きもいな」
「きもすぎやろ」
小梅、千住、東雲がドン引きだ。
無論、熊童子と虎童子、星熊童子もドン引きしている。
我先に正気に戻ったのは、星熊童子だ。
「このキモ男! 可愛い妹から離れやがれ!」
「ありがとうございます!」
熊童子を弄る祐介の顔面に、星熊童子の足の裏が刺さる。
足を踏ん張って顔面で蹴りを受け止めた祐介は、やはり「れろん」と足の裏を舐めた。
「ひえぇええええええええええええええええ! こいつ、俺の足の裏舐めやがった! 気持ちわりぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「あ、これはマジで拒否っとるのう」
「普通に考えて、頬を染めるような展開じゃねえだろ」
「せやね」
「いやいやいやいや、お前ら、ちょっと、まちやがれ! そこのキモ男! 妹の身体を弄り、姉ちゃんの足の裏舐めるとか、あたいらが訴えて勝つ案件じゃねえか!」
地面を転がる星熊童子に変わり、虎童子が抗議した。
「いや、おどれらに人権なんぞないじゃろう。足舐められようと、身体弄られようと、食われようと変わらんじゃろ」
「――くっ、殺せ!」
「唐突にどうしたんじゃろうかな!?」
「くっころ、ありがとうございまーす!」
笑顔の祐介の腕に力が入る。
本格的に熊童子を絞め落とそうと動き始めた。
「べ、あ」
抵抗するが、爪も牙も巨体も祐介には通用しない。
悔しげに熊童子が唸る。
「ゆっくりお眠り。目を覚ましたら、僕の家で三食昼寝付きだよ」
祐介の微笑みに、熊童子が最後の雄叫びを上げた。
「べぁあああああああああああああああああああああああああああ!」
次の瞬間、霊力の衝撃と閃光が走り、熊童子を締めていた祐介が吹き飛ばされてしまう。
「おっと。暴れん坊さんだなぁ。今度はどんなことをして遊んでくれるのかなぁ」
器用に宙で一回転して地面に着地した祐介が、熊童子を待つ。
そして、鼻血を垂らした。
「なん、だと? 僕が、興奮している? 確かに熊さんのボディは素敵だったが、なぜ、今なんだ? ――っ、まさか、これ以上の何かがくるというのか? 勇者としての本能が、見えずともわかっていると言うのか!」
指を鼻血で濡らして動揺する祐介の前に、声が響いた。
「くまぁあああああああああああああああああああ!」
野生を帯びた雄々しい叫びではなく、どこか可愛らしい声だった。
「――っ、なん、だと」
光が収まると、そこには――もこもこの毛皮の手袋とブーツを身につけ、ミニスカートを履き、胸を覆うだけの布を巻いた黒髪ショートカットの美少女がいた。
――ぷしっ。
祐介は鼻血を噴き出すと、その場に前のめりに倒れるのだった。